中古スマホの“良品”はどのように生まれるのか にこスマの検査センターに潜入(1/2 ページ)
中古スマホのECサイト「にこスマ」を運営する伊藤忠商事グループのBelongが、自社の中古スマホ検査センターを一部の報道関係者に公開した。にこスマで取り扱う中古スマホは、SIMロックやネットワーク利用制限がなく、外観の状態が良好なもの。端末1台1台を独自の管理システムに登録し、機能チェックからデータ消去、写真撮影、購入者への配送まで、全ての工程がこの検査センターで行われている。
円安・ドル高の影響で7月1日に既存iPhoneの価格が2割程度上昇。最新のiPhone 14シリーズも、最も安いiPhone 14(128GB)ですら10万円超えだ。Android端末でもハイエンド機種が20万円を超えることが驚きではなくなってきた。
そこで注目されているのが中古スマホだ。MM総研が7月21日に発表した国内中古スマホ市場規模の推移・予測によると、2021年度の中古スマホの販売台数は前年度比14.6%増の212万台で過去最高。春に1円などで販売されたiPhoneが新品未使用品として中古市場に流れたことが活性化につながったようだが、複数端末利用の増加や法人利用の増加も市場拡大をけん引したと分析している。MM総研は、2022年度の市場規模を13.7%増の241万台と予測。その後も拡大基調は続くと見込んでいる。
中古スマホ市場が活性化し、注目される中、中古スマホのECサイト「にこスマ」を運営する伊藤忠商事グループのBelongが、自社の中古スマホ検査センターを一部の報道関係者に公開した。ITmedia Mobileも検査センターを取材することができたので、その様子をお伝えしたい。
入荷した端末を1台1台管理
にこスマで取り扱う中古スマホは、SIMロックやネットワーク利用制限がなく、外観の状態が良好なもの。iPhoneの場合はバッテリー容量が80%以上だ。こうした機能不良のない端末を「三つ星スマホ」と呼んで販売している。サイトにはIMEI(端末識別番号)や、端末をさまざまな角度から撮影した写真を掲載。キズなどもしっかり見せることで、ユーザーが納得して購入できるようにしている。「中古端末のアングラなイメージを払拭し、誰でも安心して購入できるようにしたかった」とBelongの井上大輔社長は語る。
にこスマの三つ星スマホを支えているのが神奈川県座間市にある、国内最大級という中古スマホ検査センターだ。約5000平米の広い敷地に法人、個人、さらに海外の拠点から回収、調達された端末が、多いときには1日に数千台集まってくる。端末1台1台を独自の管理システムに登録し、機能チェックからデータ消去、にこスマのサイトに掲載する写真の撮影、購入者への配送まで、全ての工程がこの検査センターで行われている。シーズンにより200人前後がこの検査センターで働いているという。
日や時期によって異なるが、毎日たくさんの端末が、調達先、あるいは既に端末を提供していた企業などから回収されて検査センターに届く。段ボール箱の中は細かく仕切られ、端末がぶつからないよう1台ずつ入れられている
届いた端末は1つ1つ、機種名やIMEI、管理のための番号などを登録してラベルを付けていく。中古スマホの難しいところは、1台ずつの管理が必要なことだという。「SKU(Stock keeping Unit)をまとめることができない。同じ機種でも別の管理をしなくてはならない」(Belong広報)ので、商品管理システムを独自に開発し、独自のデータベースを作って管理している。ちなみに、iPhoneには短期間しか販売されなかったストレージ容量のモデルもある。そういった市場では珍しい機種も入荷するので、詳細なデータベースが構築されているそうだ。
カスタマイズしたツールを使ってデータを完全消去
端末は充電し、その後中身をチェックする。検査はキャリアにも導入されている世界標準の検査ツールを使って、25項目以上チェックされている。検査が終わるとデータを消去する。データ消去ツールは、アメリカ製ソフトだとファーウェイ端末には対応しないなど、ツールによって苦手な端末もある。複数のツールを導入し、さらにメーカーと協力してローカライズしながら対応しているという。
にこスマでは機能不良の端末を販売していない。にこスマの基準には達していないが、例えば飲食店で注文を受けるだけのタブレットだったら、カメラが使えなくても構わない。そうした端末は法人向けにレンタル・販売される。「端末を状態別に分けて、最適なところに差配していくことが検査センターの役割」(大野氏)だ。
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