mineoの契約数が「大幅に増加」した理由 “eSIM+低速使い放題”で複数回線のニーズに応える:MVNOに聞く(1/3 ページ)
オプテージがMVNOサービスmineoでeSIMサービスの提供を開始した。災害時や通信障害時のリスク分散ができるよう、利便性の向上が1つの目的だという。通信速度を抑えてお昼以外は使い放題の「マイそく」は、想定以上の申し込みが集まっており、300kbpsのプランはeSIMとの相性も良い。
オプテージの運営するmineoは、8月にeSIMのサービスを導入した。eSIMを端末に書き込む「プロビジョニング」の卸提供が開始されたことを受け、MVNO各社も徐々に対応を進めているが、KDDIからネットワークを借りるMVNOとしては同社が初。10月にAプランでのeSIMサービスを開始する予定のIIJmioをリードした格好だ。今後は、ドコモ回線やソフトバンク回線でのeSIM提供も進めていく方針を示す。
ドコモ回線を借りるMVNOでも、eSIMのサービスは2022年4月に始まったばかり。8月の提供開始は先頭集団といえる速さだ。では、なぜmineoは他社に先駆けてeSIMのサービスを開始したのか。その背景には、同社が2月に導入した最大通信速度で価格が変動する「マイそく」という料金プランがあった。オプテージでmineoのサービスを率いる、モバイル事業戦略部長の福留康和氏に、eSIMを導入した理由やその反響をうかがった。
「リスク分散」と「複数SIMの利用」がeSIM提供の背景
―― eSIMでのサービスを開始した経緯や、理由を教えてください。
福留氏 大きくは3つあります。お客さまのライフスタイルに合った通信環境の実現ということで、災害時や通信障害時のリスク分散ができるよう、最短即日で利用が可能になる利便性の向上が1つ目の目的です。eKYCまで合わせて提供することで、本人確認も全てオンラインで完結するようになりました。
また、他社回線を含め、複数のSIMをご利用になる方が増えています。mineoの新規契約者のうち、4人に1人程度の割合の方が複数のSIMを利用しています。これはかなりの割合です。
そもそも、複数のSIMを挿せる端末が増えていますが、それに加えて物理SIMの2枚挿しではなく、物理SIMとeSIMのデュアルSIM端末も増えています。北米で限定ではありますが、最新のiPhone 14シリーズには物理SIMのスロットがありません。
―― 今はKDDIの回線だけですが、今後他社に広げていく計画はありますか。
福留氏 Dプランも来年(2023年)2月に開始する予定です。各キャリアのシステム開発時期に合わせ、最短で開発を進めてきました。Sプランについては提供時期が未定です。大変恐縮ながら、その理由は2社間での協議内容になるので、差し控えさせていただければと思います。
ドコモ回線のeSIMは、KDDI回線とは違った手続きが加わる可能性も
―― ドコモ回線のeSIMについては、既にサービスを始めているMVNOもあります。一方でEID(端末に割り振られているeSIM用のID)を登録する必要があるなど、手続きが煩雑なようにも見えますが、mineoもそうなってしまうのでしょうか。
福留氏 そちらについてはまだ調整中ですが、(KDDI回線にはない)追加の手続きが入る可能性があります。
―― 最短で当日中に利用可能になるというお話でしたが、最短で発行されるにはどういう条件をクリアする必要がありますか。
福留氏 受付自体は24時間オンライン上で実施していますが、人間による照査手続きが朝の9時以降のみになっています。その関係で、開通時間が遅くなることがあります。具体的には、SMS付きデータ通信SIMだったり、音声通話付きのSIMだったりは、人間による照査が必要になります。夜中にお申込みいただいた場合、翌朝9時以降に手続きが完了し次第開通します。一方で、データ通信のみのSIMは、プロファイルを自動発行するので夜中にも対応できます。
―― 終了時間が明示されていませんが、夕方ぐらいにやればギリギリセーフといった感じでしょうか。
福留氏 それはなんとも言えないところです(笑)。込み具合にもよりますので。午前中であればその日のうちにとはいえるのですが、昼以降だと何とも言えません。
複数SIMを切り替えるアプリはAndroid版のみ提供
―― サービスを開始してみて、eSIMの反響はいかがでしたか。
福留氏 そこまではまだ見られていません。ただ、反響という意味だと、まだ3週間ですが、Aプランを新規で申し込む方のうち、約3割がeSIMになっています。これはかなりの割合なのではないかと思います。お客さまも声を見ていても、「eSIMを待っていました」「選択肢が増えるのはいいこと」「2台持ちしているスマホを1台に集約できるので助かる」といった好意的な意見が多いですね。
―― Androidには、SIMを切り替えるアプリも提供します。
福留氏 複数SIMの切り替えをサポートする機能は、10月中旬の提供開始を予定しています。できるだけお客さまの手間を省略したかったので、ああいったアプリを提供することにしました。Android端末のみではありますが、手間は軽減できるようになります。
SIMの切り替え機能は、OS上で実装されているものです。アプリは、そのOSの設定画面に対してショートカットになります。端末ごとに遷移先が異なるため、うまく動かない可能性もあり、まずはβ版という形で提供します。iOSへの実装も検討はしたのですが、設定画面にリンクを飛ばすような行為も、App Storeの規約で禁止されています。
―― それはAPIが公開されていない、ということでしょうか。
福留氏 おっしゃる通りです。ただ、いずれはメーカー側でそういった機能を実装するのではないでしょうか。複数SIMを利用するのは、当たり前になりつつありますから。
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