ドコモに聞く「smartあんしん補償」の狙い なぜ「ケータイ補償」を刷新したのか:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
スマートフォンが高額化する中、今や補償サービスへの加入は必須といえる状況だ。そんな中、ドコモは9月に「ケータイ補償サービス」をリニューアルし、以降発売される端末に向け、「smartあんしん補償」を開始した。最短で当日にはリフレッシュ品が手に入るサービスの手厚さで人気を博していたケータイ補償サービスだが、なぜあえてここに手を加えたのか。
コロナ禍で変わった補償の在り方、対象機器を拡大した背景は?
では、なぜドコモはsmartあんしん補償で一部の料金を引き下げたのか。825円や550円プランは金額が変わっていないものの、ハイエンドモデルでの110円値下げや330円プランの新設は、収益性の低下に直結する。「ケータイ補償サービスは非常に好評だった」(和田氏)というだけに、形を変えずに提供し続ける選択肢もあったはずだ。和田氏は、「値下げは大変だった」としながら、その理由を次のように話す。
「収益で言えば、コスト構造は補償を受けたお客さまの数次第になる。それが減ってきていることもあり、一部を還元するという考え方でプライスを設定した」
実際に補償を受けるユーザーが減っているのは、コロナ禍が原因だという。「昨今のコロナ禍で外出機会が減り、端末を落としたり盗難・紛失したりすることが、以前より減ってしまった」(同)というわけだ。一方で、料金を単に安くするだけでは、補償を受けないユーザーの納得感を得られるのが難しい。ユーザー視点では、お金を払うだけになってしまうからだ。購入直後は補償サービスに入ったとしても、「時間がたつと相対的に価値が落ちてしまう」(山田氏)。
また、保険会社が独自にスマートフォンを補償する商品も徐々に増えている。「競合が出てきている中、価値を高めないとそっぽを向かれてしまう」ため、「月額料金を払い続けてもらうにはもっとバリューアップする必要があった」(和田氏)。その一環として導入されたのが、イエナカ機器補償やスマホ不正決済補償、携行品補償miniといった特典だ。イエナカ補償は、「ご自宅で過ごすことが増え、家の中で機器を壊してしまうことが増えた」(同)というのが導入の理由。ここに、「不正利用の決済補償や携行品の補償も加えて、“補償の幅”を広げた」(同)。
当初は、回線収入の増加を狙い、イエナカ機器補償に「ドコモ光などの回線を条件に加えようかという議論もあった」というが、「スマートフォンはドコモでも、家の光回線は違うという方はいる。幅を狭める条件は全て取っ払った」(同)。
一方で、ケータイ補償サービスはあくまで「保険」ではなく、「補償」という枠組みで展開していたサービスになる。保険になってしまうと、「(保険業法で)販売免許を持たないと売れなくなってしまう」(同)のがデメリットだ。そのため、ケータイ補償サービスの前身である「ケータイ補償お届けサービス」を開始した際には、「モバイル通信を使うためにはデバイスが必要で、そのアフターサービス」(同)と位置付けている。
これに対し、イエナカ機器補償とスマホ不正決済補償は、「付帯保険という形を取っている」(山田氏)。クレジットカードに付く旅行保険をイメージすれば、理解しやすいだろう。「回線も関係ない、買ったチャネルも関係ないとなると保険になってしまうが、イエナカ機器補償やスマホ不正決済補償は、スマートフォンとの関連が強い」(和田氏)ため、自動で付帯させることができた。ただし、携行品補償miniは例外で、補償の範囲が広いため「保険業法の関係で個別に申し込むようになっている」(同)。アフターサービスという枠組みを維持しつつ、付帯保険を付けることでお得感を出したというわけだ。
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