KDDIが総合研究所で研究プロジェクトを披露――日本の国際競争力を上げる技術は生まれるか:石川温のスマホ業界新聞
KDDIグループのR&D(研究開発)を担うKDDI総合研究所が、研究プロジェクトの一部を報道関係者に公開した。NTTやNTTドコモの研究所と合わせて国際規格に貢献する研究をする拠点なのだが、このような研究をするには通信事業などで一定の利益を確保していく必要がある。政府としても、このような研究所に対する支援をするべきだろう。
KDDIは10月14日、KDDI総合研究所が取り組んでいる研究プロジェクトを紹介するイベントを開催した。総合研究所は埼玉県ふじみ野市にあり、都内からクルマで1時間半近くかかったが、普段、なかなか知ることのできない研究内容ばかりで、勉強になった。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2022年10月15日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
10波に対応した小型平面マルチバンドアンテナといったようにすぐに実用化されそうなものから、過去から脈々と進化している映像圧縮技術、さらには月面でのモバイル通信や3Dホログラフィ、テラヘルツ帯を使った上り通信を大容量化する取り組みなど「実用化するにはまだまだ課題がありそう」「どこまでニーズがあるのか」といった技術まで、幅広い研究に触れることができた。
なかには「符号暗号の解読コンテストにおける世界記録達成」といった、ひたすら暗号を解読するという研究者たちもいたりして、KDDIの研究分野における幅の広さにも驚かされた。
この手の研究プロジェクトのお披露目はNTTドコモが横須賀リサーチパーク(遠すぎて都心で開催するようになったが)、NTTが武蔵野で行ったりと、すぐに記事にするのは難しいが、数年後に「あのときの技術か」と気づかされることもあるので、勉強もかねて機会があれば取材するようにしている。
NTTグループやKDDIの研究所が、世界標準規格に貢献するものも多い。これからも日本企業の国際競争力を上げるには、こうしたキャリアの研究所に頑張ってもらう必要がある。
キャリアが潤沢に研究開発費を投入するには、それなりに儲かり続けていなくてはならない。日本の政府も、通信技術における国際競争力を高めたいのであれば、キャリアに料金値下げなど迫るのではなく、もっと余裕のある経営をさせるべきではないか。
一方でKDDIの総合研究所は、昭和とは言わないが、平成初期を感じさせる建物だったりもした。やはり、若い研究者が働きたいと思える環境を整備するのも重要ではないか。
仕事柄、アメリカでグーグルやアップル、マイクロソフトなどのオフィスを見学してきたが、研究者じゃなくても、やはり「ここで働いてみたい」という雰囲気が出まくっている。
若くて有能な研究者が海外流出してしまうのは日本にとってもマイナスだ。
これほど円安が進んでくると、日本で研究してお金を稼ぐよりも、アメリカの企業で働いたほうが、より多くの生涯賃金を稼ぐことができる。
総務省などは日本の通信技術による国際競争力を上げようと旗を振っているが、まずは日本国内の研究者が日本で働きたいと思える環境を整備していくことが大事なのではないだろうか。
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