IIJmioが“格安SIMのセット端末”を拡充する理由 スマホ以外も販売、回線契約なしでもOK:MVNOに聞く(2/4 ページ)
IIJmioでは端末の販売にも注力しており、回線数の伸びとともに規模を拡大している。当初はIIJmioのユーザーに限定して端末を提供していたIIJmioサプライサービスだが、2022年8月に提供条件を変更した。特筆すべきは、そのバリエーションの多彩さだ。
在庫をたくさん抱えないよう細かく発注している
―― 一方で、IIJmioの母数を考えると、バリエーションを増やすことで1機種あたりの販売台数が少なくなってしまいます。在庫を抱えるのはなかなか大変だと思いますが、いかがでしょうか。
永野氏 おっしゃるように、在庫を抱えてしまうと次の端末に行きづらくなってしまいます。端末はメーカーと直接のこともあれば、間にディストリビューターが入っていることもありますが、短期間で売り切れる在庫サイクルで細かく発注し、納入されてから売るというサイクルを繰り返しています。長くても1カ月以内に売り切れる台数で、これは全機種に共通しています。
辻氏 量販店で言えば、1店舗だけで在庫をコントロールしているのと同じなので、在庫をたくさん抱えてということはしていません。
―― そこまで少ないロットでも発注が可能ということですね。
辻氏 当初はそれなりに台数がないと作れない時代でしたが、現時点では少量でも回せるよう、メーカー側の体制も整っています。日々在庫のコントロールができるため、大きなリスクを負うことなく展開できています。
―― 端末となると通信サービスより単価が高いので、売り上げは立ちやすいと思いますが、利益的にはいかがでしょうか。言い換えると、もうかるのかということです。
辻氏 端的に申し上げると、端末を売る部分での利益には、大きく2つの考え方があります。1つは単純な物販です。これは、仕入れた価格と売価の差が利益になります。スマホは薄利な製品ですが、利益は出ます。もう1つは、回線サービスとセットで売るというものです。この場合、売った瞬間はマイナスになりますが、合わせて契約いただいたサービスをご利用いただくことで、少しずつ回収ができます。
この部分に関しては、電気通信事業法第27条3ができてから、かなりマーケットが変わってきました。以前は縛りがあり、利用期間を長く見ることができましたが、今は顧客流動性が激しくなっています。そういった変化を見ながらやってはいますが、こちらも辛うじてもうかっているといえると思います。
Snapdragon 8シリーズを積んだモデルは毎年販売している
―― 先ほど、ミドルレンジを中心にというお話がありましたが、スマートフォンに関しては、どのような基準で端末を選定しているのでしょうか。
永野氏 キャリアのサブブランドが入ってきたあたりから、ミドルレンジモデルが成熟し、参入するメーカーも多くなってきました。キャリアから乗り換える人も多いので、そこはそん色なく、キャリアが扱っているのと同じようなものを取り扱っています。ただ、それだけだと(回線とのセット販売で)お得になるという理由でしか選ばれません。他社が扱ってない端末や、よりコストパフォーマンスが高い安価な端末など、幅を持たせて扱うようにしています。
―― 比較的価格の高いハイエンドモデルも販売しているのは、IIJmioの特徴だと思います。ハイエンドモデルのマーケットが小さくなっている中、売れ行きはいかがでしょうか。
永野氏 キャリアの販売するハイエンドモデルが10万円、20万と高額になっている中、SIMフリーだと高くても10万円を超えるぐらいで購入でき、かつ一括で買い切れます。その時々の最先端を使い続けたい人もいるので、要望とひも付く形で販売数は伸びています。そのため、IIJでは、その時々のSnapdragon 8シリーズを積んだモデルは、毎年落とすことなく販売するようにしています。
―― MVNOでここまで明確にハイエンドモデルを取り扱う方針を固めているのは、珍しいですね。
永野氏 はい。これは強みの1つになっていると思います。
―― 今、サイトを拝見しましたが、「Zenfone 9」が早速完売していますね(※インタビューを行った11月下旬時点)。
永野氏 びっくりするぐらい売れました。
久保田氏 先ほどお話ししたように、そもそもの流通量は少ないということはありますが、一瞬で完売してしまいました。
―― ミドルレンジに飽きたというユーザーも増えているのでしょうか。
永野氏 MVNOのイメージもあって最初はローエンドを買った人も、機種変更でミドルレンジに移ることがあります。ハイエンドの方は最初からハイエンドということも多いですが、最近はミドルレンジの幅も広がっています。どちらかといえば、昔はミドルローのボリュームが大きかったのですが、最近はミドルレンジの一番上を買う人が増えています。
久保田氏 SIMフリーのハイエンドモデルは、そもそも扱っているMVNOが少ない。量販店には置かれていますが、われわれはMNPでの値引きを設定しています。つまり、ハイエンドで値引きがあるところがほぼほぼない。これもあって、必然的にIIJが選択肢になっている側面はあると思います。
辻氏 特に今年は、価格競争の変化が、僕らにとって有利に働いています。楽天の(0円廃止の)影響や、NTTグループの再編の影響で、うちに来ていただける方が増えています。
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