“オンライン来店”がドコモショップ大量閉店の受け皿に 「ドコモのオンライン窓口」提供の背景
NTTドコモが2月28日に「ドコモのオンライン窓口」は、ドコモショップをどう変えるのか。記者説明会で語られた内容をもとにレポートする。
NTTドコモは16日、接客サービス「ドコモのオンライン窓口」を発表した。ドコモショップの手続きをビデオ通話を通じて行う「オンライン来店」と、My docomoなどのオンライン手続きをビデオ通話やチャットで支援する「オンライン手続きサポート」の二本立てで、2月28日より順次提供する。
この記事ではドコモが接客のオンライン対応を進める背景について、記者説明会で語られた内容をレポートする。
ユーザーのオンライン志向に対応
ドコモがオンライン対応を進める背景には、ユーザーの志向の変化がある。携帯電話の契約は従来、ショップで時間をかけて行うのが一般的だったが、現在は主要な契約手続きの多くはMy docomoのようなWebサイトで完結でき、スマートフォン本体もオンラインショップで購入できる環境が整っている。ユーザーがオンラインでの手続きを好むようになった結果、来店客が減少傾向にある。2022年7月に行われたインタビューでは、ドコモの井伊基之社長が「来店客が前年度で3割減っている」と明らかにしている。
ドコモは従来のドコモショップの店舗の統廃合を進め、約3割に相当する700店舗を2025年度までに閉鎖する方針を示している。狙いはオンライン手続きの拡充で、店舗を集約してスタッフに余裕を作り、オンライン手続きの拡充を進めていくという方針だ。その第一歩として、2月28日に開始する「オンライン来店」を開始することになる。
「オンライン来店」は、ドコモショップで行う契約関連の手続きを、ビデオ通話を通じてオンラインで行うサービスだ。ユーザーにとっては店舗に出向く手間がかからず、店員による対応が受けられるという点でメリットがある。
キャリアショップの新たな収益源に
ドコモショップを運営する販売代理店にとっては、オンライン来店が新たな収益源となる可能性がある。携帯電話の販売代理店契約は一般的に、回線契約や端末販売、契約手続きに応じた実績をもとに手数料を支払う仕組みとなっている。「オンライン来店」もこの仕組みを踏襲しており、契約手続きなどへの対応やオプションサービスの獲得の実績に応じて、ドコモから店舗に手数料を支払う。
オンライン来店の導入により、店舗から遠いユーザーへの対応が可能となるため、特に過疎地域に立地する店舗では来店者数の減少を補える仕組みとなり得る。ただし、オンライン来店の提供開始当初は、機種変更や回線契約を伴う手続きに対応しないため、販売代理店が売上を得る機会は限られている。
オンライン来店は開始時点で、全国580店舗のドコモショップが導入する。導入するかどうかは販売代理店が判断するものとしており、全店舗で導入されるものではないようだ。ドコモ オンラインCX部長の岡慎太郎氏は「接客の機会が増えると賛同いただける代理店と、少し様子見したいという代理店がいる」と現況を述べている。
「ショップを選んで予約する」仕組みを維持した理由は?
オンライン来店ではビデオ通話で手続きを行うため、ユーザーは現在地や契約住所にかかわらず、全国のドコモショップを利用できる。「オンライン来店」の予約手続きは従来の来店予約と同様に、ドコモショップの店舗ページから日時を指定する形となっている。
ドコモショップで行える手続き自体は全国共通となっているため、遠方のドコモショップを選んでも手続きに支障はない。また、サービス開始時は、端末や周辺機器の販売は行わないため、販売価格などで差が出ることもない。
つまり、どのドコモショップを選んでも同じサービスが提供されるようになっており、ユーザーがあえて店舗を選択する意味は薄い。例えば、ユーザーが手続きを行いたい時間に空いている店舗をマッチングさせるような仕組みを作ることもできただろう。
一方で、オンライン来店システムは、そのような仕様とはなっていない。店舗を選択して予約する仕組みとしたのはなぜなのか。岡氏は「なじみの店舗で接客を受けたいという方も少なからずいるとみて、まずはショップ別で予約する方式としている。ショップ店員のリソースを活用する上でも、現状ではこの形が最適と判断した」と説明した。
現状の「オンライン来店」の仕組みには課題もある。「オンラインで途中まで行った手続きを、実店舗へ引き継ぐ必要が生じた場合に、ドコモショップ間で連携する仕組みが未整備」(NTTドコモ オンラインCX部 セールスプランニング担当部長の池田圭一郎氏)としており、その事情からもユーザーが普段来店するドコモショップを選ぶのが望ましい状況という。
また、署名を伴う手続きや、決済やモノの受け渡しが必要な手続きについても、システムや制度上の課題があり、オンライン来店に対応できていない。ドコモがオンライン来店の機能を段階的に拡張する方針で、「将来的には、実店舗と同等のサービスを提供するのが望ましいと考えている」(池田氏)としている。今後のシステムの更新により、予約なしで利用できるように改修することも計画しているという。
アバターを導入した接客も可能
ドコモのオンライン窓口で接客するスタッフは、ビデオ通話で顔を表示せずに、アバターを表示して接客することもできる。アバター接客の導入について、岡氏は「接客をする上での安心感も検討要素となった。ドコモショップのスタッフの方にご意見を伺う中で、オンラインで接客するなら、必ずしも顔出しではなく、アバターを使うスタイルも考えてほしいという要望もある」と説明する。
将来的には、ドコモショップの店員が在宅勤務で対応するような、多様な働き方の実現も検討していくという。サービス開始当初は、当初は販売代理店が運営するサポート拠点や、ドコモショップ店舗からの接客対応となっている。
関連記事
- ドコモショップの手続きを自宅で ビデオ通話で応対する「ドコモのオンライン窓口」2月末開始
NTTドコモは、携帯電話の手続きサポートする新サービス「ドコモのオンライン窓口」を発表した。ドコモショップの手続きをビデオ通話で行える「オンライン来店」と、オンライン利用時の疑問点を相談できる「オンライン手続きサポート」を順次提供する - 「ドコモショップ3割削減」の先にあるもの 井伊社長に聞く
ドコモショップを3割削減する方針を明らかにしているNTTドコモ。単に削減するだけでなく、リアル店舗にオンラインを融合させた「ハイブリッド店舗」の推進を目指しているという。その意図はどこにあるのか。また、ショップの役割は今後、どのように変わっていくのか。 - 携帯ショップ“大量閉店時代”をどう乗り越える? スタッフ育成とオンライン化の取り組み
携帯ショップが迎えた“冬の時代”をどう乗り越えるか。ワイヤレスジャパン 2022ではモバイル業界の3人の社長が戦略を語った。後編では田中電子の人材強化の姿勢と、ピアズのオンライン接客への取り組みを紹介する - 売れた? 売れなかった? ショップ店員に聞く2022年の「新型iPhone商戦」
2022年も「新型iPhone」としてiPhone 14シリーズが登場しました。新たに登場した「iPhone 14 Plus」の発売時期が少し遅かったこと以外を除くと、例年通りの「新型iPhone商戦」になるかと思いきや、そうでもない面もあったようです。携帯電話ショップで働くスタッフに話を聞いてみることにしましょう。 - 契約を取らないと居場所がなくなる 総務省が携帯販売の実態を公表
総務省は4月25日、競争ルールの検証に関するWG(第29回)と消費者保護ルールの在り方に関する検討会(第39回)の合同会合を開き、代理店などの販売実態を公表した。覆面調査の結果やキャリアショップ店員に対するアンケート調査の結果などが明らかとなった。強引に有料オプションを勧める行為なども目立つ。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.