5Gが発展途上の中、ドコモが早くも「6G」を大々的にアピールする理由 キーパーソンに聞く:MWC Barcelona 2023(3/3 ページ)
世界最大のモバイル展示会「MWC Barcelona 2023」にドコモが4年ぶりに出展。6Gをテーマにした展示は、数はそれほど多くなかったものの、他では見られないもの。6G時代には空のエリア化、地上100%のカバー率は当たり前になるという。
ミリ派の活用で日本がイニシアチブを取る
―― 今回のMWCでは、ミリ波の活用が進みそうな気配を感じました。確かに扱いが難しい周波数ですが、AIの活用などで、電波の通り道をふさぐとスループットが急激に落ちたりつながらなくなったり、ということはなくなるという話でした。
中村氏 ミリ波を何とかしたいとは、われわれも思っています。帯域幅が広く、非常にポテンシャルが高い周波数帯ですから。陰になったらプツッと切れるとか、あまりにも過激的な言われ方をするきらいがあると思っています。屋内だったら、陰になっても電波は反射するので、ちゃんと使えるんですよ。だから工場内でも使えますし、ローカル5G的な閉域での使い方だったら、ミリ波は十分使えると思っています。
―― 総務省の会合でも、ミリ波の活用を検討しています。各キャリアさんのお話を聞くと、スタジアムなどでスポット的に使うという考え方ですね。
中村氏 そうですね。基本的にはそうだと思います。ミリ波で全国津々浦々、面的に埋めることは非現実的です。基本的にはトラフィックが高いところに、適切にミリ波の基地局を打っていって、トラフィックを収用していく。それが基本だと思います。
―― Qualcommは、ミリ波は「ホットスポットじゃなくてホットゾーンだ」ということをおっしゃっていて、もう少し広く使えるような印象を持ちました。
中村氏 そうですね。どんどんそうすべきだと私も思います。都市部でも屋外でも、通信トラフィックの混雑は広がっていますので
―― トラフィックが混雑したところをミリ波で改善していくと。
中村氏 そんな感じでミリ波を適切に使っていく。問題やはりコストと性能です。そこを何とかうま解決していきたいですね。
―― 「ミリ波がたくさん飛んでいる、すごく速い!」という感じになりますか。なるとしたらいつ頃でしょう。
中村氏 理想的には、そのくらいにしたいですね。ミリ波を追い求めるくらいになれば、本当にありがたいですが、逆に、ユーザーの方には気兼ねなく、使いたいところで快適に使えるようになることが大事だと思っています。今は人が多く混雑しているところだと通信速度は落ちます。そこでも速度が下がらず、気兼ねなく使えるように、しっかりとエリア設計していく。周波数を適材適所に使っていくということなんだと思います。結果的にミリ波が広がって、使われるようになると思います。
総務省とも連携しながら、ミリ波の訴求、普及を図っていきます。
―― 海外では、ミリ波はかなり使われている状況なのでしょうか。
中村氏 まだまだですね。
―― 日本が特にミリ波の展開が遅いということはないんですね。
中村氏 遅いということはないです。世界の中では、まだ日本の方が使っているくらいです。
―― ただ、日本もミリ波が使えるところは、あまりにも少ないと思います。
中村氏 そうですね。ヨーロッパや中国もミリ波に関心を持っているという話を聞きますので、世界的にもミリ波の割当てが進み、それによっていい、安いソリューションができれば、世界的にもっと広がっていくと思います。
―― 広がれば、さらに安いソリューションも出てくると。
中村氏 はい。そういう動きを作り上げていきたいですね。そして願わくは、ミリ波の普及促進において、日本がイニシアチブを取っていきたいと思っています。日本でも「第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF)」がありますが、そこにミリ波普及推進アドホックを作って、私が主査をやっています。そういう活動を通じて、日本で取りまとめたコンセプトや技術、それを日本でまずは広げ、それを世界に広げるという野望を持っています。
―― 期待しています、中国に負けないでくださいね(笑)。
中村氏 そうですね。
―― あ、いえ、ちょっと冗談のつもりだったんですが……でも、やはり他国の動きは気になるものですよね。
中村氏 それはそうです。競争相手でありつつ、協力相手として見ることも多々あると思います。特に世界的な普及は、やはり協力しなきゃいけない。あらゆる国と協力していくことだと思います。
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