MVNOとしては異例 NUROモバイルが40GBの「NEOプランW」を提供する狙い:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
これまでは比較的小容量で料金の安いプランが中心だったMVNOも、徐々に中容量、大容量にシフトしつつある。そんな中、NUROモバイルでは40GBの「NEOプランW」を提供する。小容量の料金プランを中心にそろえている「バリュープラス」には、NEOプランの通信品質を体感できるオプションを用意する。
お試しオプションの「NEOトライアル」でアップセルを促す
NEOプランはもともとドコモ回線限定だったが、NEOプランWの導入に合わせ、KDDI、ソフトバンクも合わせたトリプルキャリアに対応。バリュープラスと同様、もともと契約していたキャリアをそのまま選択できるようになった。回線がそのままであれば、MVNOに移ってもエリアが変わる心配がなくなり、端末もそのまま利用しやすい。ユーザーが、よりNEOプランを契約しやすい環境を整えたといえる。
ソニーネットワークコミュニケーションズにとってのメリットは、ARPUが上がることにありそうだ。単価が安く、収益性が悪いことがMVNOの悩みだったが、中容量プランになれば比較的売り上げの規模は大きくなる。NEOプランWも3980円と比較的高価格で、データ容量は40GBと大きいが、MNOであるドコモのahamoより料金も高い。こうした料金プランを選ぶユーザーをいかに増やしていけるかが、収益性を高めるカギになる。
その一環として、導入されるのがバリュープラスや旧料金プランに導入される「NEOトライアル」というオプションだ。料金は100MBあたり110円。これを支払うと、利用する帯域がバリュープラスなどで使っている一般向けのものから、NEOプラン用の専用帯域に切り替わる。MVNOで通信が混み合うお昼などの時間に申し込むことで、料金プランごと変更する必要なくNEOプランの実力を試せるのがこのオプションの特徴だ。
ソニーネットワークコミュニケーションズのMVNO事業室 サービス設計課の石井隆介氏は、その狙いを「高品質なNEOプランをご検討するきっかけになればと思い、チャージサービスの提供を開始する」と語る。ユーザーを上位プランに移行させるためのきっかけを作りたいといえる。例えば、バリュープラスで10GBの「VLプラン」(1320円)に入っているユーザーが、NEOプランLite(2090円)に移れば、収入を770円増やせる。通信の品質に気付いてもらうことが、ARPUの底上げにつながるというわけだ。
専用帯域を使ったNEOプランが高評価だったことを受け、それを数に転化していく取り組みがNEOトライアルといえる。MVNOユーザーが徐々に中容量、大容量にシフトしていく中、そのきっかけを与えるオプションを設けたのは、アップセルを狙うための仕掛けとして面白い。大手キャリアから借りる帯域の量や、それを使って通信するユーザーの数で速度や安定性が変わってくるMVNOの特徴を逆手に取った仕組みといえる。
一方で、40GB、3980円となると、MNOの無制限プランも視野に入ってくる。料金面では楽天モバイルのUN-LIMIT VIIが20GBを超えた場合の金額が3278円。データ容量の少ないMVNOの方が高いという逆転現象も起こっている。エリア面ではNUROモバイルが回線を借りるドコモ、KDDI、ソフトバンクの方が広いが、データ容量や金額の比較だとやや分が悪い。中容量化や大容量化が進む中、料金以外でMVNOの魅力を訴えていく必要も高まっているといえそうだ。
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