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スマホ通話料金が30秒8円 G-Callが格安で電話サービスを提供できるワケMVNOに聞く(2/2 ページ)

継電話の仕組みを使い、古くから格安の音声通話サービスを提供していたのがジーエーピーの提供する「G-Call電話」だ。2022年には、通話料を30秒8円(非課税)と業界最安レベルに値下げした。同社は、IIJから回線を借りる形で、MVNOとしてもサービスを展開している。

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条件が他より有利でなければ選んでもらえない

―― 昨年(2022年)、30秒8円に値下げをしたと思いますが、その理由を教えてください。

前田氏 国際電話のときに、われわれはクレジットカードを持っているお客さんに限定してマーケティングをしていました。当時の利用者は、8割ぐらいが日本にいる外国人でしたが、それをやめ、お金持ちに特化しようということで、ダイナースやアメックスを通じて案内を出してきました。

 ただ、国際電話はSkypeなどが出てきて、タダのようになってしまった。そこで今度は通信ではなく、日本人の一番好きな食べ物ということで、お米の販売を始めました。国際電話もずっと使ってくれて、チャリンチャリンとお金が入ってくるサービスですが、同じようにできるのはお米だろうと。われわれは、何かを持っているわけではなく、何かを作っているわけでもない。良いサービスを提供しようということをずっとやってきました。

 30秒8円にしたのも、お客さんが選んでくれるからです。あえてわれわれを選ぶ方は、比べてから選んでいます。自分で申し込む方は、必ず比較しますからね。その条件が他より有利でなければ、選んでもらえません。もしくは、今の利用者からの紹介で選ばれます。「このサービスはいいよ」となってくれれば、お客さんになってくれるんです。これは、全てのサービスが同じです。

 お米もそうですね。お米は産地直送ということで、南魚沼のJAと提携して、3800円で始めました。お客さんからすれば、家まで運んでもらえて安くなる。うちはお米をたくさんの人に売りますが、JAはうちにしか請求しない。この仕組みは、ある意味電話と一緒です。基本的なスタンスはみんな一緒なんです。

江川氏 トラフィック自体が全体的に下がっていたこともあり、提供元もそれを増やしたいということで、いい条件をもらうことができました。

―― MVNO各社もプレフィックスを使ったサービスを提供していますが、G-Call電話を提供するというような話はなかったのでしょうか。

江川氏 今はないですね。皆さん、直接やられていると思います。ただ、当初、そういう話はありました。

MVNOも通話料金の安さで差別化、eSIMも提供予定

―― 2016年から、MVNOも始めています。2021年には料金も一新しました。こちらについては、どのような経緯で始めたのでしょうか。

鈴木氏 (MVNEの)IIJとは、ドングルタイプのデータ通信カードのころから一緒にサービスをやっていました。そういったところのお付き合いで、メールサービスやプロバイダーサービスの骨組みを管理してもらい、うちが再販するというつがなりがありました。そこから、IIJをMVNEとして、われわれがMVNOをやる話が決まりました。

G-Call
MVNOサービスはIIJmioの「ギガプラン」と同じ料金体系になっている

―― 売りは、G-Call電話とのセットで通話も安いということでしょうか。

鈴木氏 そうですね。

江川氏 ただ、実はG-Call SIMと言いながら、0063をつけないと30秒22円になってしまいます。登録自体は自動で行い、このかけ方で電話してくださいという案内をしています。

―― どういう方が契約しているのでしょうか。

江川氏 G-Callのサービスを使っている方に、一緒に通信費を払えればということで選んでいただけています。今、ちょうど紹介制度の第2弾をやっているところで、紹介した人、された人ともに500円(分のポイント)が入るキャンペーンをやっています。

G-Call
G-Call電話とG-Call SIMを紹介すると、紹介した方とされた方にそれぞれ500ポイントをプレゼントするキャンペーンを実施中

―― MVNEがIIJということで、eSIMを展開するご予定はありますか。

鈴木氏 はい。データ通信のみですが、予定はあります。音声は卸の仕組みとしてまだできていないので、まずはデータ通信からです。

―― MVNO各社も通話料を値下げしていますが、この影響はありましたか。

江川氏 うちも昨年(2022年)、30秒8円に値下げし、それまで下がっていた登録回線数が伸びています。他社が安くなったからガクッと下がったということはないですね。ただ、トラフィック自体は通話しなくなっていることもあり、カーブは変わっています。

前田氏 基本的に、われわれのようなサービスは選ぶ方は、(トラフィックが)上がりません。3000円、4000円になると、かけ放題になってしまうからです。そうすると、100万回線、200万回線と売らなければもうからない(笑)。そのため、G-Call電話はサービスの1つとしてラインアップしています。お米も買えるし、SIMも契約できるし、電話もできる。支払いのためのアカウントを持ってもらっているので、何もしないでサービスを増やせて、全て「マイG-Call」で管理できます。お客さんが楽になるのはそこですね。お米を買っている人がSIMを買うとなれば、われわれが楽なわけです。

江川氏 MVNOとの比較で言うと、G-Call電話はSIMの縛りがありません。どこの回線でも登録ができる。そこはだいぶ違うところですね。

コロナ禍になって回線数が増加、稼ぎ頭は「ふるさと納税」

―― 「10分かけ放題オプション」も770円で提供しています。

江川氏 そこはG-Callが独自で組んでいるところですね。それでグワッと使われると困ってしまうのですが……。ただ、結構使う人は使うんですよね(笑)。トータルで損をしなければいいという設計になっています。

―― やはり、完全かけ放題は難しいですかね。

江川氏 それは難しいですね。リスクが大きいので。10分かけ放題と完全かけ放題の両方をやってしまうと、本当に使う人しか入ってこなくなるリスクもあります。ある程度レンジがある中で申し込んでくれればいいのですが、本当にコアな人だけになると難しいですね。

―― ちなみに、ユーザー数はいまどのぐらいいるのでしょうか。

江川氏 今、固定と携帯を合わせると18万回線です。回線数はコロナ禍になって増えました。社用の通話として、法人が登録することが多くなりました。(リモートワークで)社用の電話のときだけ、0063をつけてくれというような使い方です。社用と私用を分けられるというアピール自体は、昔からしていました。

前田氏 前からやっていたことではありますが、コロナ禍になってまた増えたということですね。

江川氏 もう1つ、050のサービスをやっています。0063だと自分の番号で発信されてしまいますが、050の番号がもう1個あれば、そちらで発信できます。それを社用として使うというところもあります。

―― どのキャリアでも利用できますが、どこが多いというのはありますか。

江川氏 特にどこかが多いというのはないですね。

鈴木氏 大手キャリアの方もいますし、いわゆるサブブランドと呼ばれるところの方もいます。MVMOのユーザーもいますが、これはどこを使っているのかが分かりません。

―― 先ほど、いろいろなサービスをやられているというお話がありましたが、今の稼ぎ頭はどれになるのでしょうか。

前田氏 ふるさと納税! 1人あたり27万円ぐらい使ってくれます。先ほどお話ししたように、国際電話を始めたときもダイナースやアメックスで宣伝していましたが、そこでできたリレーションを生かしています。

取材を終えて:どのキャリアでも利用できるのがG-Call電話の魅力

 音声通話サービスや格安SIMサービスの話を聞きにいったはずだが、オチはまさかのふるさと納税だった(笑)。音声通話やデータ通信とはかなり距離があるように見える一方で、それぞれのサービスに通底するスタンスやビジネスモデルには共通点も多い。大口で仕入れて、エンドユーザーに安く提供し、喜んでもらうというのが基本にあるようだ。

 音声通話サービスとMVNOの組み合わせも、相性がいい。一方で、30秒8円で通話するには、発信時のプレフィックス付与かG-Callアプリが必要になる。MVNOサービスはMVNE経由での提供になるため、オートプレフィックスへの対応も難しそうだ。その意味で、サービスとしてはやや上級者向けといえる。ただ、江川氏が語っていたように、G-Call電話はどのキャリアでも利用できるのが魅力の1つ。通話料を節約したい人は、改めてサービスの利用を検討してもいいだろう。

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