物価高でもGalaxyのハイエンドモデルが好調の理由 S23シリーズは“海外の成功事例”で攻める:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
サムスン電子は、4月6日に「Galaxy S23」シリーズを日本に導入することを発表した。例年通りの戦略を踏襲しているかのように見えるサムスンだが、オンライン限定カラーを用意するなど、販売戦略は変化も見られる。両モデルの特徴を解説するとともに、同社の販売戦略を解説する。
ついに1TB版が日本に上陸、海外の成功事例を生かした予約キャンペーンも
中でもインパクトが大きいのは、ストレージ容量が通常モデルより大きい512GBと1TB版のGalaxy S23 Ultraを販売することだ。海外では通常、Androidスマートフォンもストレージ容量にバリエーションが設けられており、ユーザーがある程度自由に選択することが可能だ。一方の日本では、こうした選択肢が存在するのはiPhoneやPixelなど、一部のモデルにとどまる。1機種あたりの販売数が少ないこともあり、ニーズが集中するストレージ容量に絞らざるを得ないのが現状だった。
これに対し、Galaxy S23 Ultraではドコモとauがファントムブラックをオンライン限定で販売。ドコモが512GB、auが512BGと1TBを用意する。オンラインに特化しており、カラーも1色のため、大容量版の販売数量は限定されそうだが、多数のゲームをインストールしたり、動画の撮影が多かったりするユーザーにはうれしい選択肢ができたといえる。処理能力が高く、動画撮影機能に優れているGalaxy S23 Ultraは、大容量のストレージとも相性がいい。
大容量版を訴求するため、予約特典も従来とは方向性を変えた。これまでのGalaxyは、「Galaxy Buds」や「Galaxy Watch」といった周辺機器を無料でプレゼントするのが一般的だったが、512GB版と1TB版は「Wストレージキャンペーン」を展開する。ストレージ容量が1つ下のモデルとの差額を還元するというのが、このキャンペーンの趣旨だ。ドコモの512GB版は、Amazonギフト券での2万円還元。auの場合、512GBで1万5000円、1TB版で1万7000円ぶんのAmazonギフト券を受け取ることができる。
2社とも、「いつでもカエドキプログラム」や「スマホトクするプログラム」の実質負担額を基準に差額を還元している。そのため、本体価格を元に算出したときより額は小さくなるが、負担が上がらず大容量のモデルを選択できるのはお得といえる。カラーに強いこだわりがなければ、あえて256GBモデルを選択する理由が薄くなる。キャリアのオンラインストアを上手に活用しながら、Galaxyのヘビーユーザーを取り込んでいく戦術といえる。
小林氏によると、「グローバルでは大容量版が好調」だといい、キャリアとの交渉を重ねた結果、オンライン限定での販売が実現したという。実はWストレージキャンペーンも、「海外でもともとやっていたもので、それをベンチマークにした」(同)。確かに筆者も2月のUNPACKEDの後、米T-Mobileのショップを訪れた際に、「フリーメモリーアップグレード」という予約特典を目にしている。
このような海外での成功事例を日本市場に落とし込めるのは、幅広い国や地域で展開しているサムスン電子の強みといえる。大容量版は「ニーズが高いと思う」(同)というだけに、これが成功すれば、Galaxy Zシリーズなど、他のフラグシップモデルにも広がる可能性はある。Galaxy S23 Ultraのオンライン限定販売の成否が、その試金石になりそうだ。
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