3キャリアが「5G SA」開始も、真のメリットは享受できず 普及に向けた課題とは:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
KDDIは、4月12日にコンシューマー向けの「5G SA(Stand Alone)」を開始したことで、3キャリアのサービスが出そろった。ただ、現時点で真の5Gのメリットを十分享受できるとは言いがたい。エリアや端末、ユースケースなどで課題が多い。
KDDIは、4月12日にコンシューマー向けの「5G SA(Stand Alone)」を開始した。SA方式の5Gは、ドコモが2022年8月に導入。ソフトバンクも2021年10月に「SoftBank Air」の「Airターミナル5」を対応させており、3月にはiPhoneやiPadでも利用可能になった。KDDIはコンシューマー向けサービスの提供がドコモやソフトバンクより遅かったが、これで3社が出そろった格好だ。
5G自体は4キャリアとも2020年に導入しているが、いずれも4Gのコアネットワークを流用するNSA(Non Stand Alone)方式だった。無線部分の帯域が増え、4G以上に通信が高速化する一方で、4Gの設備に依存しているため、ネットワークスライシングのような5Gならではの機能は実現できない。こうした事情から、5G SAを“真の5G”と呼ぶ向きもある。一方で、3社がコンシューマー向けに始めた5G SAのサービス内容を見ていくと、普及に向けた課題が多い印象も受ける。
大手3キャリアで出そろったコンシューマー向けの5G SA、その仕様は?
現在主流の5G NSAは、「EPC(Evolved Packet Core)」と呼ばれる4G用の装置を使い、5Gの基地局と組み合わせている。アンカーバンドと呼ばれる4Gにつながった後、5Gが有効になるのはそのためだ。あくまで4Gの枠組みの中で、5Gの電波を一部だけ使っているともいえる。この方式は、コアネットワークを置き換える必要がなく、導入もスムーズにできるが、4Gの仕様に引きずられてしまうのがデメリットだ。
これに対し、5G SAでは「5GC(5G Core)」を使用し、無線を制御するコアネットワーク部分まで5Gの仕様を取り入れたものになる。5GCで制御する無線部分は5Gのみ。無線部分からコアネットワークまで、5G用に独立した仕組みといえる。これによって、ネットワークを仮想的に分けるネットワークスライシングをはじめとした、5G用に開発されたサービスを利用できるようになる。
また、5G SAは6GHz帯以下のSub-6と28GHz帯などのミリ波を掛け合わせる「NR-DC(New Radio Dual Connectivity)」にも対応する。これを利用した結果、ドコモは5G SAで下り最大4.9Gbps、上り最大1.1Gbpsを実現。ソフトバンクは下り最大3.7Gbps、上り最大658Mbpsで、13日にサービスを開始したKDDIは下り最大4.9Gbps、上り最大954Mbpsと、こちらも理論値の速度を向上させている。
ドコモは、Sub-6とミリ波をNR-DCで足し合わせることで、下り最大4.9Gbpsを実現した。利用する技術は名言されていないがKDDIやソフトバンクも似た仕様で、理論値の最大はNSAよりSAの方が上だ
3社とも、5G SAの利用には申し込みや一部SIMカードの交換が必要になる。コアネットワーク側も変更になるためで、そのままでは5G NSAにしかつながらないため、注意が必要だ。料金は、現時点では無料だ。ただし、ドコモは550円(税込み、以下同)の月額料金をメニューとして用意しており、終了日未定のキャンペーンとしてこれを無料にしている。ソフトバンクも将来、ドコモと同じ550円に設定する予定だ。これに対し、KDDIも有料化は予告しているが、具体的な金額は挙げられていない。
5G SAに切り替えたからといって、4Gや従来の5G NSAにつながらなくなるわけではない。エリア外では、EPCで制御するネットワークにつながり、5GCとも連携が図られている。ダウングレードになる恐れはなく、SIMカード交換以外の料金もかからないため、対象となる端末を利用するユーザーは5G SAに切り替えてみてもいいだろう。ただ、現時点で真の5Gのメリットを十分享受できるとは言いがたい。裏を返せば、料金が無料なのもそのためだ。
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