“打倒PayPay”でスタートした「d払い」アプリの刷新 賛否両論の決済音を導入したワケ:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
ドコモのコード決済サービス「d払い」が、大幅にリニューアルされた。赤を前面に打ち出していたデザインは、白やベージュが基調になり、dポイントカードも画面上部のスワイプだけで呼び出せるようになった。リニューアルに伴い、これまで決済時に画面の遷移しかなかったd払いに、決済音が加わった。
ついに導入した決済音、リニューアルの成否はいかに
決済音を導入したことも、大きな話題になった。競合となるほとんどのコード決済は、サウンドが鳴るのが一般的だ。ただ、決済音には賛否両論があり、無音を貫くのがd払いの美点と捉える人もいただろう。サービス名を大きな音で読み上げるため、「恥ずかしい」という声は少なくない。決済サービス側も、音量調整機能を搭載するなどして、こうした批判に応えている。では、d払いはなぜ決済音を導入したのか。ペイメントサービス企画担当主査の郭スミン氏はこう語る。
「d払いのサービスをローンチしたときには搭載しておらず、決済音には賛否両論あることは分かっていたので分析をしました。(搭載の)発端になったのは、お店のスタッフからの声です。コード決済は、画面で支払われたことを確認しなければなりません。音が鳴れば直感的に支払いが完了したことが分かり、オペレーションもはかどる。そういったご要望から、検討をスタートしました」
「お客さまにとってどうなのかも、綿密に調査しました。決済音が鳴ってほしいのか、ほしくないのか。音次第なところもありますが、一般論として、9割のユーザーが『音で知りたい』という回答でした。では検討しようというところから始めています」
一方で、郭氏が話すように、評価はどのような音が鳴るかによるところも大きい。決済音に関しては「後発なので、これまでの決済事業者の音を分析しつつ、われわれのオリジナリティーをどう入れていくのかに時間をかけた」という。ドコモには、非接触決済サービスのiDで決済音を導入した実績があり、力強さと高級感を備えた音色は評価が高い。郭氏も、「あれを超えるほどではないが、あれ並みの好感を持たれるような音を作らなければならない」と思ったという。
決済音の開発には、「TOUCH WOOD SH-08C」のCMである「森の木琴」を手掛け、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルで3冠に輝いた清川新也氏を起用。「d払いの『d』の筆跡をヒントに、それを想起できるようにしていった」(同)という。dの筆跡に基づき、音が2段階になったのは、「コードを出し、決済が完了するというストーリー性もある」(同)。
実は開発途中では、「d払いとサービス名を読み上げるものや、ポインコの声を使ったものなども制作したが、いずれも「アンケートでは微妙な結果だった」(同)。「マーケティング視点では名前を出した方がいいという意見もあったが、心地よさを大事にした」(同)という。
こうしたリニューアルの結果、アプリの利用動向が大きく変わってきているという。まず、dポイントカードをスワイプで出せるようになり、表示される回数が「50%ぐらい増えている状況」(阿部氏)だという。支払いボタンだけを赤くして目立たせた結果、タップ回数も「27%近く増えている」という。リニューアルの方向性もおおむね好評で、「18%ぐらいの方が以前より利用したくなったと話している。逆に以前より利用したくなくなったという方は3%ぐらいしかいない」(同)。
こうした数値が、d払いの取扱高にどう影響してくるのかは、「今後(データを)取っていく予定」(同)で、現時点では結果が出ていないものの、少なくとも、ユーザーの行動を変えることには成功しているようだ。とはいえ、5500万ユーザーを突破し、決済取扱高も第3四半期までで5.7兆円に達したPayPayの背中はまだまだ遠い。アプリのリニューアルによってここにどこまで迫っていけるのか。d払いの今後の動向に、注目したい。
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