ドコモに聞く「パケ詰まり」の要因と対策 5Gエリア拡大の前にすべきこと:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
ここ数カ月、東京23区や大阪、名古屋といった都市部でドコモ回線の「パケ詰まり」が目立ってきた。電波がつながっていないわけではなく、つながった上でパケットが流れないというのがより正確な表現だろう。その要因と対策をドコモに聞いた。
屋内ではプラチナバンドの逼迫や“5G不足”も要因に
もう1つの問題が、都市部の屋内だ。都市部では複数の周波数帯を重ね、それを束ねるキャリアアグリゲーションで容量を上げるのが一般的だ。ドコモの場合、都市部ではプラチナバンドと呼ばれる800MHz帯に加え、1.5GHz、1.7GHz、2GHz帯などをまとめて運用している。ただ、建物内では800MHz帯の電波が強くなるため、どうしてもそちらをつかむ端末が増えてしまう。一般的に、周波数は低ければ低いほど遠くに飛びやすく、障害物にも回り込みやすくなるからだ。一方で、低い周波数帯は帯域幅が狭く、混雑しやすい。
仮に800MHz帯をつかんだとしても、キャリアアグリゲーションでその他の周波数を束ね、トラフィックを分散させれば解決できそうだが、逆に他の周波数を最初につかんだ端末が「Sセル(キャリアアグリゲーションで後からつかむ周波数のこと)で800MHz帯をフル活用してしまうようなこともあった」(福重氏)という。ここにトラフィックの増加が重なると、パケ詰まりはさらに起こりやすくなる。周波数分散の最適化がなされていなかったことも、都市部で頻発している要因の1つといえる。
4Gは、キャリアアグリゲーションで周波数を束ね、段階的に速度や容量を向上させてきた。ただ、この図のように、帯域幅の狭い800MHz帯も含まれており、ここが逼迫の原因になっていることがあるという。なお、写真は18年11月のもので、現在はより多くの組み合わせが存在する
いずれパケ詰まりも4Gで起こっているため、3.7GHz帯や4.5GHz帯を使う5Gを入れれば解消できそうな話だ。実際、ドコモのネットワークも場所によっては非常に高速で安定している。駅では数文字のメッセージすら送信できない場合でも、電車が動き出した後に5Gをつかみ、一気にパケットが流れることがある。
パケ詰まりが起こるほど、容量が逼迫している場所には、5Gを導入するのが対策としては王道だ。ただ、基地局の設置は交渉事で、ドコモの思惑だけでは進めることができない。ドコモ側も「トラフィックの増加や街の変化の情報が入り次第、対策はしているが、計画通りにいっていない部分がある」(同)と認める。
簡単にまとめると、原因は次のような流れになる
- (1)トラフィックの増加
- (2)再開発などに伴い、エリア設計の崩れや基地局の撤去も発生
- (2')屋内ではプラチナバンドに接続が集中
- (3)収容する基地局の電波の帯域が全部または一部不足する
- (4)それをカバーするための5Gネットワークの不足
(1)はパケ詰まりの発生要因、(2)と(2')はその対策ができなかった理由で、結果として(3)が起こり、パケ詰まりが頻発するということだ。(2)と(2')は場所によってどちらか一方、または両方が発生していることがある。根本的な解決策としては、(4)が必要だが、エリア設計から用地の交渉、基地局設置には時間がかかるため、パケ詰まりが起こってからすぐに全てを解決するのは困難だ。日本の大都市圏は特に人口密度が高いため、こうした問題は起こりやすい。
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