ドコモに聞く「パケ詰まり」の要因と対策 5Gエリア拡大の前にすべきこと:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
ここ数カ月、東京23区や大阪、名古屋といった都市部でドコモ回線の「パケ詰まり」が目立ってきた。電波がつながっていないわけではなく、つながった上でパケットが流れないというのがより正確な表現だろう。その要因と対策をドコモに聞いた。
短期的な対策はエリア設計変更と周波数分散、5G拡大も急務か
根本的な解決策が5Gエリアの増強だとすると、対応には年単位で時間がかかってしまう。そこで、ドコモは夏ごろまでにネットワークにチューニングを施し、パケ詰まりを解消していく構えだ。福重氏によると、「既に進めている場所もあるので、短期的な対策としてやり切りたい」という。夏になって一斉に解決するのではなく、現時点から、エリアごとに徐々に改善していくイメージだ。
対策の1つ目が、5G化している基地局のセル範囲を広げて、混雑している基地局から端末を移すというものだ。これは、5Gそのものを拡大するわけではなく、5Gと一体になっている4G側に収容する端末を増やすことを意味する。4Gは帯域幅が限定されているため、そちらの基地局側が混雑してしまうようにも思えるが、無線アクセスネットワーク部 エリア品質部門 担当部長の佐々木和紀氏によると、「5Gを使っていることで、下(4G)にも少し余裕がある」という。
対策1は、図のエリアの左側に収容する端末を増やし、逼迫している右に余裕を持たせるというものだ。左のエリアは5G構築済みのため、その下を支える4Gにも余裕がある。ここに移せば右のエリアのトラフィックを抑えられる
5G自体を拡大したり、5Gにつながるようなしきい値を変更したりするわけではないため、2021年ごろに発生していた5Gのセル端で起こる「パケ止まり」が再発する心配もないという。調整方法は「場所によって異なり、程度も違う」(福重氏)というが、主に5Gを設置した基地局側の「アンテナの角度や出力を調整」(同)してエリアを広げたり、逆にエリアを狭めたりしていく。これによって、混雑していた側の基地局に余裕が出る。
写真中央のやや右寄りにある箱が、基地局のアンテナ。少しだけ下を向いているのが分かる。この角度を浅くするとエリアが広がる。逆に、混雑しているエリアは、角度をさらにつけ、電波の届く範囲を狭める対策も取る。出力も上下させていくという
もう1つの対策が、帯域幅の少ない800MHz帯の利用を減らしていくというものだ。こちらは、基地局側のパラメーターを変更することで対策を施す。先に挙げたように、屋内では800MHz帯をつかみやすいだけでなく、別の周波数帯をつかんだ端末がキャリアアグリゲーションで800MHzを足し、帯域を消費してしまうことがある。「まずPセル(最初につながる周波数帯)としてどこに収容するのか。800MHz帯でなくてもいい場合は、そこにつなぐようにする」(同)。また、キャリアアグリゲーションで「複数のSセル候補があった場合、そこを使わないようにする」といった対策も施すようだ。
画像下がドコモ。この表示は1.7GHz帯のBand 3をつかみ、キャリアアグリゲーションして他の周波数帯を束ねていることを意味する。この際に、800MHz帯の帯域を取っていたため、チューニングでそれを軽減させていく
もっとも、パケ詰まりが起こるほどトラフィックの多いエリアでは、本来、5Gをより広く展開していく必要がある。佐々木氏が「手段として長期、短期がある」と語っていたように、発表された対策は後者に当たる。そのため、パケ詰まりが一気に解消されるというより、ある程度使える水準に持ち直すといった方がイメージとしては近いだろう。長期的な対策としては、やはり5Gのエリア拡大が重要になる。「本当に必要なところは検討に入っており、(5Gエリアを)構築中」(同)というだけに、今後のさらなる改善にも期待したい。
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