App Store以外からもアプリのダウンロードを可能にすべき 政府が方針示す
政府は6月16日、デジタル市場競争会議にて、モバイル・エコシステムに関する競争評価の最終報告案を発表した。そこでApp Store以外からのアプリ入手を可能にすること義務付ける方向性を示した。その際、セキュリティを担保して不正アプリを防ぐ必要があるとしている。
政府は6月16日、第7回 デジタル市場競争会議にて、モバイル・エコシステムに関する競争評価の最終報告案を発表した。この会議では、iOSやAndroidのモバイル・エコシステムが競争環境に与える影響を評価するとともに、公平・公正な競争環境を実現するための方策を議論している。
モバイルOSはiOSとAndroidの寡占状態となっていることから、多様なイノベーションと消費者に選択の機会が確保されていることが望ましいが、その際に、セキュリティやプライバシーを確保することが極めて重要だとしている。
ここで焦点となっている議題の1つが、アプリストアだ。AndroidはGoogle Playストア外から入手したアプリをインストールできるが、iOSでは原則として、App Store以外からアプリをインストールすることはできない。Appleはアプリの売り上げから最大30%の手数料を開発者から徴収しており、7割のユーザーが「高い」「どちらかといえば高い」とのアンケート結果も出ている。Apple以外の事業者がiOSのアプリストア事業に参入できないと、手数料に競争圧力が働かなくなることが懸念される。
そこで政府は、App Store以外からアプリを配布可能にすることを義務付ける方向性を示した。これにより、ユーザーはより多様なアプリをインストール可能になり、開発者はより安価な手数料のストアにアプリを配布できる機会を得られる。
App Store以外のアプリ代替流通経路は、「Appleが審査するApp Storeを通じてダウンロードできるアプリストアからの配布」「iPhoneにインストールされるアプリストアからの配布」「ブラウザ経由でダウンロードできるアプリストアからの配布」「ブラウザからの直接ダウンロード」などを想定している。
外部アプリストアを導入する場合、アプリが悪用されることを防ぐために脆弱(ぜいじゃく)性を検証するとともに、個人情報を不正に利用するアプリの配布を防ぐ必要があるとしている。また、アプリストアが担うべき審査などについて、一定の指針を示すことも有用だとした。
例えば、英国科学・イノベーション・技術省(DSIT)が公表した「アプリストア等に対するコード・オブ・プラクティス」では、「アプリストア運営者は、アプリストアに掲載するアプリについて、セキュリティ及びプライバシーの要件を明確に定め公開する」「アプリストア運営者は、アプリが明らかに悪質であることを確認したら、できるだけ早く、遅くとも48時間以内に、アプリストアでそのアプリを利用できないようにする」などと定めている。
あわせて、政府はアプリ関連の決済手段や告知方法などについてのルールも示している。開発者による多様な料金プランやサービスの提供を妨げないよう、一定規模以上のアプリストアを運営する事業者に対し、自社の決済・課金システムの利用を義務付けることを禁止する。
また、AppleとGoogleは、アプリ外でデジタル商品の購入を促す説明をすることや、アプリ内にリンクを張ってストア外での取引に誘導することなどを制限している。これにより、ユーザーの決済手段が狭められ、利益が損なわれると評価。そこで一定規模以上のアプリストアを運営する事業者に対し、ユーザーに異なる購入条件があることなどの情報提供の容認(無償)を義務付ける。
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