FCNTが民事再生法を適用して早2ヶ月――端末事業を支えるスポンサーは現れるのか:石川温のスマホ業界新聞
富士通の携帯電話事業を継承したFCNTが民事再生手続きを申請してから2カ月が経過した。端末ユーザー向けのポータルサイト事業はスポンサーが見つかったものの、肝心の端末事業のスポンサーは見つかっていない。総務省として、この状況は良いと考えているのだろうか……?
FCNTが民事再生法の適用を申請してまもなく2ヶ月になろうとしている。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2022年7月22日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
らくらくシリーズやarrowsなどのブランドで、それなりにユーザーを抱えていた日本メーカーだっただけに、まるごと消滅するのは日本の通信市場にとって、かなりの痛手だ。
FCNTはキャリアに対して救済を求めたようだが、残念ながら実現しなかった。ただ、このままFCNTというか、らくらくシリーズなどのブランドがなくなってしまうのはとても惜しい。ひょっとすると、中国メーカーあたりがスポンサーとなり、FCNTの持つブランドや知財をかっさらうなんて事があり得るような気がしている。
中国メーカーとすれば、FCNTが持つ枠組みを手に入れられれば、日本のキャリアとの距離が一気に縮めることができる。
特にこれまで中国メーカーとの直接契約をしてこなかったキャリアは、FCNTという枠組みが間に入れば、新たな関係を結ぶことができるかも知れない。
キャリアにとっても、らくらくシリーズを維持できるのは喜ばしいはずだ。
エントリーモデルとしてヒットを飛ばした「arrows We」も、日本メーカーが作れば円安で経営がたち行かなくなるが、中国メーカーであれば、何の問題もなく製造を続けられるだろう。
中国メーカーにとっても、FCNTが手に入ることで、日本のキャリア相手のみならず、世界的なビジネスに繋げることも可能だ。
日本国内にある製造拠点を経由させれば「Made in Japan」として、世界にスマートフォンを販売することができる。こちらもFCNTのブランドを活用すれば、アメリカとのキャリアとも関係が持てるだろう。それこそ、製造はすべて中国で行い、最後の検品と箱詰めだけを日本で行えば「Japan Quality」を謳うことも不可能ではない。
パソコンの世界を見れば、東芝・ダイナブックはシャープとともにホンハイ傘下だし、かつてのIBM「Thinkpad」とNECPCはレノボ傘下となっている。スマートフォンにおいても、モトローラはレノボ傘下であるが、いまだに表向きは「アメリカのブランド」ということになっている。
FCNTの財産が中国メーカーに渡り、らくらくシリーズやArrowsシリーズ、キャリアの企画端末が生き残り続けるのは、日本のユーザーには喜ばしいことだろう。
しかし、そうなった場合、総務省の割引規制により、日本のメーカーが滅び、中国資本に渡ってしまったという言い方もできる。
総務省の割引規制がこの業界にもたらした影響を改めて検証が必要だろう。
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