ドコモに聞く新料金「irumo」の狙い 矛盾しているように見える仕様にはワケがあった(3/3 ページ)
ドコモが導入した新料金プランのうち、注目度が高かったのが、他社のサブブランドに対抗できる「irumo」だ。一方で、OCN モバイル ONEに料金体系が近かったこともあり、実質的な値上げとの評価も聞こえてくる。サービス開始から約1カ月がたち、どのような傾向が出ているのか。ドコモに聞いた。
irumoは想定を超えて好調、ドコモからのプラン変更が多い
―― 料金プランの導入から約1カ月がたちましたが、調子はいかがですか(※取材は8月上旬に実施)。
山本氏 定量的なことは申し上げられませんが、絶好調に近いですね。想定は超えていて、非常に多くの方に喜んでいただけています。
―― やはり、現状だと料金プラン変更が多いのでしょうか。
山本氏 はい。プラン変更が多いですね。やはり、ドコモは高いというご不満をお持ちの方はいました。そのドコモが今回料金プランとしてirumoをお出ししたことで、プラン変更したいという方が最初に来てくださいました。
―― 具体的には、ギガライトユーザーでしょうか。
山本氏 そうです。ギガライトの方が中心になって、irumoをお選びになっています。
―― 一方で、ギガライトからirumoに変えると、ARPUは減少してしまうと思います。ポートアウトされるのであれば、irumoで残ってほしいということでしょうか。
山本氏 解約されてしまうよりはいいのと、ギガライトの方にも「爆アゲセレクション」を含めてのeximoをお勧めしています。eximoも、低容量であればそこまで料金は高くなりませんからね。その中で、価格コンシャスな方には、「もっとお安くしたいというのであればirumoがありますが、一部機能(サポートなど)は制約がある」というご説明をしています。そのため、ギガライトの方が全員irumoにしているわけではなく、一定数はeximoをお選びになります。eximoの方には、最終的に、3ステップ目の無制限で使っていただきたいという思いがあります。
―― ちなみに、その制約の1つとしてメールサービスがオプションになっています。ドコモのプラン変更が多いというお話でしたが、メールを付ける人は多いのでしょうか。
山本氏 多いですね。メールアドレスをお持ちになっていてほとんど使わなかったとしても、連絡手段の1つにはなっていることがありますし、それなりに愛着もあるのではないでしょうか。プラン変更の方は、結構な割合でメールオプションをつけています。一方で、新規の方はそこまででもないですね。
―― ショップとオンラインでは、どちらで契約される方が多いですか。
山本氏 初速はオンラインですが、ドコモショップの現場がかなり頑張ってくれているので、リアルでたくさんの方にお申し込みいただいています。ボリュームゾーンはそちら(ドコモショップ)ですね。
―― やはり、サポートを求める方が多いと。
山本氏 そうですね。安さだけを追求する方は、すでにOCN モバイル ONEや他社に移ってしまっているのだと思います。逆に言えば、ドコモに残っているというのは、サポートを求めているからです。そういった方は、自らドコモショップに行き、「新しプランが出たようですが」と聞くのだと思います。
―― ドコモショップが減っていますが、その影響はありますか。
山本氏 特にありません。(ショップの統廃合は)きちんと商圏を見ながらマネジメントしているからで、お客さまにご迷惑をおかけするようなことはないと思っています。実際、かなりの方に来ていただけていて、irumo開始後は来店も増えました。
―― 逆に、エコノミーMVNOは今後、扱いが減っていくのでしょうか。盛大にハシゴを外されたようにも見えますが。
山本氏 そういった気持ちはありません。エコノミーMVNOには特徴的なプランが用意されています。われわれでは手が届かない、かゆいところに手が届くプランがあります。
―― トーンモバイルは確かに特徴的だと思いますが、LIBMOは音声通話ということで、irumoの0.5GBプランとバッティングしないのでしょうか。
山本氏 これからお客さまの声を聞きながら考えていきたいと思います。ただし、通話の部分には違いはありますし、LIBMOは東海地域で強いので、エリアマーケティングも含めながらやっていきたいと考えています。
―― その音声通話定額ですが、かけ放題オプションがしれっと値上げされています。留守番電話やキャッチホンが無料になるので、人によっては値下げにもなるのですが。
山本氏 音声をたくさん使う方と留守番電話やキャッチホンの親和性が非常に高く、セット率も高くなっています。であれば、1つにして1980円の中にニーズを詰め込んでお安く提供した方がいいのではと思い、ああいった形になりました。
取材を終えて:irumoは二極化するニーズに対応するプランだった
irumoは、二極化するユーザーの両極に対応しようとしている料金プランであることが分かった。その視点で見ていくと、メールアドレスやサポートをオプションとして切り出している料金設計は合理的といえる。シニア向けには見えないスタイリッシュなサイトだったり、若者には不要なサポートがついていたりと、一見矛盾しているように思えるのはそのためだ。実際、ショップでの反響が大きいといい、ドコモの狙いが当たっていたことが分かる。
ただ、OCN モバイル ONEの後継的な色合いがあるirumoだが、料金体系が近いのが本当によかったのかどうかは、未知数だ。本来であれば、irumoの競合になるのはUQ mobileやY!mobile(ワイモバイル)といったサブブランド。接続点での混雑がないという意味で通信品質がよかったり、リアルな拠点でのサポートが充実していたりするだけに、MVNOのように見えてしまうのはドコモにとっても得策ではないだろう。
そうは言っても、irumoはドコモユーザーをドコモに引き留める力が強い料金プランだ。ドコモ光を既に契約していれば、料金は他社のサブブランド以下になり、面倒な手続きもいらず、希望すればメールアドレスもそのまま使える。料金を理由に他社にポートアウトするユーザーは劇的に減る可能性もある。この“守備力が高い”料金プランに対し、他社がどのように仕掛けていくのかも注目したい。
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