シャープが「AQUOS sense8」発表、光学2倍相当のズーム対応で5万円台 大画面モデル「plus」がない理由とは(2/2 ページ)
シャープはミッドレンジスマートフォン「AQUOS sense8」を発表した。市場想定価格は5万円台後半(税込み)。今回、「sense7 plus」の後継に相当する新モデルの投入が見送られた理由とは何か。
大画面sense7 plusの後継モデルが見送られた理由
このように、senseシリーズ最新モデルとなるsense8は初代から着実な進化を遂げた一方で、2022年にソフトバンクが大手キャリアで唯一取り扱った「AQUOS sense7 plus」の後継に相当する進モデルは用意されない。
sense7 plusはどんなモデルだったのか。特徴を少しおさらいしたい。「AQUOS sense7」の派生モデルとなるAQUOS sense7 plusはsense7の6.1型よりも大きな6.4型フルHD+(1080×2340ピクセル)IGZO OLEDを搭載している。
滑らかな動画を視聴できるよう、ストリーミング動画のフレームを24fpsから120fpsに補間し、専用チップ(LSI)で著作権保護された動画コンテンツもフレーム補間できる。
サウンドに関しては大口径と大振幅スピーカーユニットを装備し、左右のスピーカーが干渉しないよう本体内部から独立させたBOX構造を採用。シャープいわく、「AQUOS sense6」比で低音域の音圧が2倍、帯域幅が1.4倍となっている。
いわゆるコンテンツ視聴を意識したような位置付けとして、市場に投入されたのがAQUOS sense7 plusだったわけだ。
通信事業本部 本部長 小林繁氏は「個人的にはAQUOS sense7 plusが好きだ」と話すが、なぜシャープはそれほどのモデルをブラッシュアップし、「AQUOS sense8 plus(仮)」として発表しないのか。
小林氏はその理由の直接的な言及を避けたが、「ソフトバンクはsense7 plusの商品性を受け入れてくださり、2022年、独占的な採用に至った」と当時の状況を振り替える。裏を返せば、他のキャリアは採用しなかった、ということだ。
モバイル業界なら当たり前のことだが、メーカーが製造した全てのモデルが国内全キャリアで、採用され続ける例はiPhoneくらいだろう。iPhoneも当初はソフトバンクが独占的に販売していたが、世代が進むに連れ、取り扱うキャリアが増えた。
話題をsenseシリーズに戻すと、AQUOS sense8 plusなるモデルがなぜ見送られたのかは、senseとplusが応えるニーズの違いにあると感じる。
sense8について、通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部課長 清水寛幸氏は「スマートフォンに詳しい人も詳しくない人も使えるど真ん中を狙っていく」と意気込む。変化が激しいスマホ業界で生き残っていくには、 「senseのコンセプトをさらに高めていく必要があった」(清水氏)と話す。
清水氏は「数年前まではスタンダードスマートフォンが「あまり使わない人」に受け入れられていたが、近年では「がっつり使いたい人からの支持もあり、スタンダードスマートフォンのカメラやパフォーマンスが大きく向上している」と需要の変化を言い表す。
ハイエンドほどの性能は求めず、普段使いをしたいが、だからといって荒削りなスペックでは物足りない、そんな人にとってのちょうどいいスタンダードモデルが「気軽にがっつり使いたい、というニーズを満たすべく生まれた、次なるスタンダードのsense8」(清水氏)だそうだ。清水氏は「気軽にカメラを使え、がっつりとした電池持ち」と表現する。
加えて、昨今、「商品の主要部品の価格が高騰している」ことから、同じシリーズといえどsense8と違うスペックのplusを用意することは、シャープにとって困難だったのではないかと考える。
小林氏も「製品の作り方を違う方向にシフトしていく必要がある」との考えを示しており、仮にplusの単なるアップグレード版を投入しただけでは、厳しい市場で特異性を示し続けるのは難しいはずだ。
とはいえ、通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長 中江優晃氏は「今回、シャープとしてplusをsense8と同時に発表する予定はないが、plusのような大画面の需要がないということではなく、今回はカメラの方にフォーカスしていく」との考えを示す。
AQUOS sense8が光学2倍相当のズームに対応した点は、正にシャープが2023年、ハイエンドのみならず、スタンダード(ミッドレンジモデル)でもカメラ性能に力を入れたことの現れといえるが、senseで撮影した写真/動画や、サブスクリプションサービスの動画コンテンツを楽しむには、sense8の6.1型ディスプレイだと小さいはずだ。
くどいようだが、昨今、シャープだけでなく他のメーカーも大画面化にシフトしていることから、シャープとして「あらゆる需要に応えるのなら」plusの新モデルを市場に投入する必要がありそうだ。
ちなみに、「シャープは2017年にsense初代モデルを発表以降、6年間で7モデルを投入している。senseシリーズの販売台数は累計で1000万台に達している」(小林氏)だけに、plusのアップデートにも期待したい。
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