Pixelスマホの“7年アップデート保証”が与える影響 iPhone並みの長寿に?
Pixel 8と8 Proでは、7年間のアップデート保証を打ち出したことも大きな話題となっています。スマホを頻繁に買い替えない人にとって、1台を長く使えることは大きなメリットとなります。海外での各種法令への対応も背景にありそうです。
Googleが10月12日に発売した最新スマートフォンPixel 8とPixel 8 Pro。AIを利用した「音声消しゴムマジック」「ベストテイク」などの新機能が注目されていますが、7年間のアップデート保証を打ち出したことも大きな話題となっています。
Android端末のアップデート保証はメーカーによってかなり差があり、アップデート保証を明確にうたっていないメーカーも多いです。最近は少ないかもしれませんが、過去には発売後に一度もアップデートを行わずに終売ということもありました。とはいえ、大手メーカーはそれなりに長期間の保証を打ち出しており、Samsungは、Galaxy S21シリーズ以降、5年間のセキュリティアップデートと4世代のOSアップデートを提供しています。
シャープのAQUOS R8シリーズでは、OSアップデートを最大3回、セキュリティアップデートを最大5年提供するとしています。ただ、シャープの「最大」という書き方はかなり曖昧で、実際には1回あるいは0回であったとしても間違いにはなりません。できたら、「最低何回」とうたってほしいところです。
一方、Pixelに関しては、Pixel 6以降はOSアップデートが3年、セキュリティアップデートの提供期間は最低5年となっています(それ以前はどちらも最低3年)。
Appleは、iPhoneのアップデート保証期間を公式には明かしていません。最新OSが登場する場合に、それをサポートする機種が明かされ、そこから漏れたものはサポート対象外となる形です。最新のiOS 17では、2017年発売の「iPhone 8/8 Plus」と「iPhone X」がサポート対象外となりました。年数で言うと、iPhone 8/8 PlusとiPhone Xは6年間サポートされていたことになります。
また、サポートが終了しても、緊急性が高いセキュリティアップデートに関しては旧機種にも提供しています。直近では2022年にサポート終了したiPhone 6sやiPhone 7などに対してもセキュリティアップデートが公開されていました。
実際のところ、アップデートが7年保証されるとしても、7年間同じスマートフォンを使い続けるのかという問題はあります。10万円を超えるハイエンドモデルを購入したとしても、2〜3年もすれば性能的にはそのときのミドルクラスに並ばれてしまいます。ただ、全ての人がスマートフォンでゲームを含めたあれやこれやをしたいと思っているわけではなく、通話やSNS、メールができれば十分という人もいるでしょう。そういう人にとっては、1台を長く使えることは大きなメリットとなります。
なぜアップデート保証期間が「7年」なのか
ところで、Pixel 8/8 Proのアップデート保証は、なぜ6年でも8年でもなく7年なのでしょうか。
最近ではどのメーカーも盛んにサステナビリティをアピールしている他、スマートフォン価格の高騰もあって同じ端末をできるだけ長く使い続けようという動きが高まっています。欧米を中心に盛り上がっている修理する権利の法令化も、この一環といえるでしょう。そして、Pixel 8/8 Proのアップデート保証が7年になったのも、各種法令への対応ということが大きいように思います。
米国カリフォルニア州では、2024年7月から「修理する権利を認める法律(SB-244)」が施行されます。この州法では、100ドルを超える製品は保守パーツを7年間保存する義務があると定められており、これにはソフトウェアも含まれます。
また、EUでも、2025年6月に施行予定の「スマートフォン、スマートフォン以外の携帯電話、コードレス電話およびスレート タブレットのエコデザイン要件」によって、スマートフォンの保守パーツは7年間、ソフトウェアアップデートは販売終了から最低5年間提供するよう定められています。最近のPixelはおおむね1年で販売終了となるので、7年間提供するのであればこの要件は満たせます。
なお、こうした修理する権利は、これまでAppleやGoogleは一貫して反対の姿勢を示していましたが、カリフォルニア州のSB-244に関しては、Appleが一転して支持する姿勢を示したと報じられていました。
Appleが支持に回った理由は定かではありませんが、7年保証は全てを自社でコントロールしているAppleなら対応は難しくないものの、Android勢は追従できなくなるとの思惑もあったのかもしれません。
こうした法令が導入されると、AppleやGoogle、Samsungなどの大手は対応できそうですが、Androidの大多数を占めるエントリークラスを手掛ける中国メーカーは対応が難しいはずです。ただ、こうしたメーカーはそもそも欧米市場での展開を行っていないことも多いです。また、大手メーカーであっても、長期保証を行うための費用を端末に乗せていく必要があるはずです。
このため、長期保証をうたいグローバル展開する高価なハイエンドモデル、保証は短いものの安価なエントリーモデルという形で、市場のすみ分けが進んでいくのかもしれません。
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