生成AIの処理も可能になった「Snapdragon 8 Gen 3」 スマホの競争軸は新たなステージに:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
Qualcommが、新技術を披露するイベント「Snapdragon Summit 2023」にて、Snapdragon 8 Gen 3を発表した。CPU、GPU以上にNPUの性能が向上し、生成AIの処理も可能になった。写真拡張やイラスト生成、チャットbotに暗所動画といった応用例も紹介した。
Qualcommは、10月24日から26日(現地時間)にかけ、米ハワイ州マウイで「Snapdragon Summit 2023」を開催した。同イベントでは、PC向けプラットフォームとしてCPUを刷新した「Snapdragon X Elite」に加え、次期ハイエンドスマートフォンに搭載される「Snapdragon 8 Gen 3」を発表した。
MシリーズのApple Silicon対抗として注目を集めたSnapdragon X Eliteだが、スマホ向けのSnapdragon 8 Gen 3もAIの演算処理を担う「Hexagon NPU」を約2倍の性能に強化しており、着実な進化を遂げている。両プラットフォームとも、AI性能は最大の特徴。Metaの大規模言語モデル「Llama 2」に対応するなど、AIのエコシステムも拡大している。ここでは、そんなSnapdragonの特徴を踏まえ、2024年のハイエンドスマホの姿や新しい競争軸を占っていきたい。
CPU、GPU以上に大きく性能が上がったNPU、生成AIの処理も可能に
ハイエンドスマホ向けの新たなプロセッサとなるのが、Snapdragon 8 Gen 3だ。型番をジェネレーション表記に変更してから3世代目となり、現行のハイエンドモデルに搭載される「Snapdragon 8 Gen 2」から、パフォーマンスや省電力性能を向上させている。Qualcommによると、CPUの「Kryo」は30%、GPUの「Adreno」は25%、前モデルから性能が向上しているという。
一方で、CPU、GPU以上に大幅な進化を遂げているのが、NPU(Neural Processing Unit)に名称を変えたHexagonだ。もともとHexagonは、DSP(Digital Signal Processor)と呼ばれていたが、Snapdragon 8 Gen 3でその名称を変更。機械学習などのAIを処理するプロセッサとしての役割を明確化した。そのHexagonは、Snapdragon 8 Gen 2比で98%高速化しており、2倍ほど性能を伸ばした。
3割程度のCPU、GPUと比べて大きな進化といえ、Qualcommの注力領域であることがうかがえる。1秒間の演算回数は45TOPS(45兆回)に増強されている。こうしたNPUの性能向上に加え、QualcommはMetaと提携。同社が開発した大規模言語モデルの「Llama 2」に、スマホ向けプラットフォームとして初めて対応している。
QualcommはAIの処理にCPU、GPU、NPUを最適な形で組み合わせるヘテロジニアスコンピューティングというアプローチを取っており、Snapdragon 8 Gen 3でも、この仕組みは変わっていない。これを担うのが「Qualcomm AI Engine」だ。トータルでの性能が向上した結果、最大で100億のパラメーターを端末上で処理できるようになった。これにより、生成AIへの対応が強化された格好だ。
Qualcommのシニアバイスプレジデント、アレックス・カトウジアン氏は、会期初日の24日に開催された基調講演で、「AI搭載デバイスの新時代を迎えるにあたり、Snapdragonが生成AIのためのプラットフォームとして選ばれるよう、新しく、画期的な体験や機能を提供していく」と宣言した。では、生成AIを生かしたスマホの機能とはどのようなものか。同社がSnapdragon Summitで示したデモから、その一端が垣間見える。
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