ドコモは「irumo」が解約抑止に貢献、端末値引き上限4万円は「納得感がある」と井伊社長(1/2 ページ)
ドコモの2023年度上半期の売り上げは2兆9464億円(前年同期比+465億円)、営業利益は5808億円(前年同期比+43億円)で増収増益となった。新料金プランの「irumo」と「eximo」は「狙い通りの成果が得られている」と井伊氏は手応えを話す。ドコモショップへの来客数も増えているという。
NTTドコモが11月7日、2023年度第2四半期の決算を発表した。上半期の売り上げは2兆9464億円(前年同期比+465億円)、営業利益は5808億円(前年同期比+43億円)で増収増益となった。
コンシューマー通信事業の売り上げは、ユーザー還元(料金値下げ)の影響で前年同期比−140億円だったが、「サービス訴求を通じてアップセルの促進、コスト効率化に」(井伊基之社長)によって、営業利益は+82億円の増益となった。
法人事業の売り上げは+344億円だったが、「中小企業営業を強化するための人員増加、コンサルティング能力の強化や新しいサービスを提供するための投資」(井伊氏)などの影響で、営業利益は−40億円の減益となった。
金融やマーケティングサービスなどを含むスマートライフ事業は、売り上げが+235億円、営業利益は+2億円で、3つのセグメント別では唯一増収増益となった。
irumoが解約抑止に貢献、eximoの選択率が増えている
コンシューマー事業では、料金プランを「eximo」「ahamo」「irumo」の3ブランド体制にしたことが大きなトピックで、井伊氏は「狙い通りの成果が得られている」と手応えを話す。「新プランの認知はまだ途上だが、eximoを選択するお客さまの比率が増加して、アップセルができている」と同氏。さらに、eximoとirumoは「dカード」「home 5G」やコンテンツなどのクロスセルが好調で、旧プランの「ギガホ」や「ギガライト」よりも契約率が向上しているという。
irumoは、「低容量しか使わない人のポートアウトの改善も図れている」(井伊氏)という。これまで、ドコモでは10GB未満の低容量プランが手薄だったことから、他キャリアのサブブランドに移行するユーザーが多かったが、irumoはそうしたユーザーの解約率を抑止する効果があったようだ。さらに、irumoはドコモショップでも取り扱っていることから、来店者数も増加しており、端末販売の増加にも貢献しているという。
端末の価格帯に応じて値引きの上限を決めるのは納得感がある
とはいえ、端末価格は高騰しており、「楽な市場ではない」と井伊氏は言う。「特に海外メーカーの端末は値段が高くなっているので、お客さまの買い控えが続いている。分割によって、毎月安い支払いで購入できるような対応をしながら、新しい端末への取り換えを勧奨している。7月に新プランを発表したと同時に来客数が増え、そのときに『端末の取り換え、いかがですか?』と勧奨するきっかけが増えている」
ショップへの来客数は、新型コロナの影響で2〜3割減っていた中、「1年前から2割くらい戻ったかなという感触」(井伊氏)とのこと。
端末について、総務省が7日に「日々の生活をより豊かにするためのモバイル市場競争促進プラン」を発表し、2023年内に端末値引きの上限を原則4万円にすることや、「1円端末」販売等につながる過度な割引を規制することが示された。これらの方針について井伊氏は賛同の意向を示す。「1円端末は不適当だと考えていた。安売りすることで転売ヤーという存在が出てきた反省を踏まえると、今回のご提案はリーズナブルかなと。端末の価格帯に応じて値引きの上限を決めるのも納得感がある」と評価する。
1円端末が減ることは、利益の面でもプラスに働く。「われわれがコンシューマー事業で増益したのも、通信機器販売の利益率が改善したから。安売りでたくさん売るよりも、数が多少減っても利益が出る水準で売ることを上半期は徹底した。機器純増にはつながっていないが、利益を出すのがわれわれの使命」
auが「マネ活プラン」、ソフトバンクが「ペイトク」といった、金融サービスと連動した料金プランを提供しているが、ドコモはどう考えているのか。井伊氏は「料金プランで強くバンドルするのがいいのか、プランに合わせて勧めて買っていただくのがいいのか、両方の営業手法がある。他社がそういうプランを出して、ばかうけするなら、キャッチアップしないといけないと思っているが、今のところは考えていない」とコメントした。
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