激化した2023年のスマホ料金競争を振り返る ドコモのサブブランド対抗/金融連携が新トレンド:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
2023年は、キャリア各社の料金プランが相次いで改定された1年だった。6月には、楽天モバイルが「Rakuten最強プラン」を導入。ほぼ同時期に、KDDIのUQ mobileも従来の料金体系を刷新した。ドコモがついにサブブランド対抗を打ち出して「irumo」を開始したのも大きなトピックだった。
2023年は、キャリア各社の料金プランが相次いで改定された1年だった。6月には、楽天モバイルが「Rakuten最強プラン」を導入。ほぼ同時期に、KDDIのUQ mobileも従来の料金体系を刷新する形で、「ミニミニプラン」「トクトクプラン」「コミコミプラン」の3つをスタートさせた。サブブランドでは、ソフトバンクのY!mobileも10月に「シンプル2」を開始し、データ容量を増量するともに、料金もわずかに値上げしている。
また、ドコモは7月に「ギガホ」「ギガライト」の2本立てだった料金プランを「eximo」に一本化するとともに、低容量向けの「irumo」を導入。勢いをつけているUQ mobileやワイモバイルへの対抗軸を打ち出している。一方で、KDDIは「auマネ活プラン」を、ソフトバンクは「ペイトク」を開始し、料金プランと金融・決済サービスの連携を強化した。官製値下げで料金プランを改定してから約2年がたち、各社とも料金を再び見直す動きが活発化している。
楽天モバイルがRakuten最強プランを導入、サブブランドも中容量にシフト
料金プラン改定の先陣を切ったのが、楽天モバイルだ。同社は2022年に1GB以下が無料を廃した「UN-LIMIT VII」を導入していたが、2023年6月にはこれをさらに改定。6月に「Rakuten最強プラン」をスタートさせ、既存のユーザーも自動的に移行させた。料金そのものはUN-LIMIT VIIとほぼ同じだが、au回線にローミングしている際のデータ容量制限を撤廃したのが大きな特徴だ。KDDIとのローミング契約を見直したことで、これが可能になった。
0円廃止直後はユーザーの離脱が相次ぎ、一時は純減に見舞われていた楽天モバイルだが、Rakuten最強プラン導入後は順調にユーザーが増え、解約率も低下している。容量制限がなくなり、楽天モバイルとKDDIのエリアを合算して示せるようになったことで、ユーザーの支持を集めた格好だ。料金水準自体はこれまでの料金プランと同じだが、地方も含めたエリアの不安がなくなり、もとの安さが際立ったといえる。法人契約が順調なこともあり、楽天モバイルの純増数は月間で20万ペースを維持している。
一方のKDDIも、UQ mobileの料金体系を抜本的に見直し、楽天モバイルやユーザー数を伸ばしているドコモのahamoへの対抗軸を打ち出した。中でも特徴的なのが、1回10分までの音声通話定額と20GBのデータ容量がセットになったコミコミプラン。料金は3278円で、2970円のahamoよりやや高いが、その分、音声定額の時間が倍の10分に設定されている。楽天モバイルも、20GBを超えたときの金額が3278円。データ容量は無制限にはならないが、エリアの広さでこれをカバーする。割引なしでこの料金になるのも、シンプルさを意識したahamoやRakuten最強プランと同じだ。
実際、UQ mobileはこの料金プラン改定で、ARPU(1ユーザーあたりの平均収入)の拡大に成功している。11月に開催された決算説明会では、KDDIの代表取締役社長、高橋誠氏が「UQ mobileは、多くの方に中大容量プランをお選びいただいている」とコメント。中でもコミコミプランや、データ容量15GBのトクトクプランが好調で、「足元では約7割が選択している」(同)という。Y!mobileが確立したサブブランド的な料金体系から、ahamo、楽天モバイル対抗型に移行したことが、功を奏したといえる。
そのY!mobileも、10月には新料金プランのシンプル2を導入し、旧プランのシンプルは新規受付を終了した。シンプル2は、シンプルの料金体系を受け継ぎつつ、データ容量を増量した料金プラン。各種割引適用後の料金は20GBのMプランが2178円で、こちらも水準を楽天モバイルに合わせてきた。一方で、その分“素の料金”は上がっており、MプランやLプランでは「おうち割 光セット」の比重が増している。ソフトバンクの専務執行役員 寺尾洋幸氏は「ギガ単価は下がっている」と語っていたが、事実上の値上げとも捉えられる。UQ mobileと同様、官製値下げによるARPUに下落に歯止めをかける施策の一環と見ていいだろう。
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