Pixelの大躍進、折りたたみスマホの民主化、安ハイエンドの台頭――2023年のスマホ動向を振り返る:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
2023年のスマートフォンは出荷台数が大きく低下。その反面、フォルダブルスマホのラインアップが広がったことに加え、より手に取りやすい価格帯のハイエンドモデルのラインアップが徐々に増えた。機能面では、IT業界のトレンドともいえる生成AIをデバイス上の処理で実現する動きも健在化している。
2023年も残すところあとわずか。前回の連載で取り上げたように、今年は新料金プランが“豊作”な1年だった。一方で、スマートフォンに関しては出荷台数が大きく低下。調査にもよるが、上期は過去最低水準を記録している。グローバルでの落ち込みも大きいが、日本も例外ではない。円安や物価高が重なり、端末そのものが値上がりしていることに加え、スマホの普及率が頭打ちになりつつあるのもその原因といえる。
その反面、フォルダブルスマホのラインアップが広がったことに加え、より手に取りやすい価格帯のハイエンドモデルのラインアップが徐々に増えた1年でもあった。Xiaomiの「Xiaomi 13T Pro」のように、アップグレードプログラムとの組み合わせで発売直後から“実質24円”を実現する端末も登場した。機能面では、IT業界のトレンドともいえる生成AIをデバイス上の処理で実現する動きも健在化している。ここでは、2023年最後の連載としてここ1年のスマホの動向を振り返っていきたい。価格は全て税込み。
Pixelが大躍進した1年、ドコモの取り扱いも再開へ
Google純正スマホとして、2018年に日本に上陸したPixelだが、その存在感は年々大きくなっていた。2023年は、その成果が数字として表れた1年だったといえる。調査会社MM総研が11月に発表した2023年度上期(4月から9月)の国内携帯電話端末の出荷台数調査では、Pixelが大躍進。前年上期には「その他」に分類されていたGoogleが、シェア2位に急上昇した。全体でのシェア1位はAppleのため、Androidスマホとしてトップに君臨した格好だ。増加率は323.8%と大きい。
ごぼう抜きでAndroidのトップシェアにつけたGoogleだが、その要因の1つは、ドコモがPixelの取り扱いを再開したこと。同社は廉価モデルとなる「Pixel 7a」の販売を皮切りに、フォルダブルスマホの「Pixel Fold」は、フラグシップモデルの「Pixel 8」「Pixel 8 Pro」などを次々と取り扱っている。トップシェアを誇り、スマホ・タブレットの年間販売台数も1000万台超(22年度実績)と規模が大きいドコモへの展開が、Pixelの勢いを加速させた格好だ。
Pixelが日本に上陸した際には、真っ先に手を上げていたドコモだったが、販売が振るわず、当時は在庫処分に苦戦していた。2019年のPixel 4シリーズからは取り扱いを見送っていった。一方でその間、ソフトバンクが“Pixel推し”の姿勢を鮮明に打ち出し、auもその競争に追随。コストパフォーマンスに優れたPixel aシリーズの評価も年々高まり、売れ行きも伸ばしていた。
こうした人気の高まりを受け、ドコモでの販売再開を望む声も増えていたという。代表取締役社長、井伊基之氏は、5月に開催された決算説明会で「お客さまからの要望があった」としながら、「これまでは私どもの周波数が特殊だったので、コミットメント(販売台数の確約)をしないと作っていただけない状況だった」とその内幕を語る。
特殊な周波数とは、5Gの「n79(4.5GHz帯)」のこと。ドコモが「瞬速5G」を広げる基盤としている周波数だが、グローバルでは採用している国や地域が少なく、開発コストの関係で対応を見送る端末も多い。Pixelも、2022年に発売された「Pixel 7」「Pixel 7 Pro」までは、n79をサポートしていなかった。こうした状況に対し、ドコモはGoogleと交渉。一定の数量を確保する代わりに、ドコモでの販売にあたって必須となるn79への対応を求めた格好だ。結果として、2023年に発売されたPixelは、全てn79をサポートしている。
大手3キャリアが同じ端末を取り扱うようになった結果、販売競争も激化。廉価モデルとなるPixel 7aは、発売直後から実質24円で提供されるなど、その価格も大きな話題を集めた。その一方で、7月にはシリーズ初となるフォルダブルスマホのPixel Foldも日本市場に投入。本体を開くと横長の大画面が現れる形状で、フォルダブルの新たな使い勝手を提案した。高価格帯となるPixel Foldは、展開国も米国、英国、ドイツ、日本の4カ国に限定されており、アジアは日本のみ。Googleが日本市場を重要視している様子がうかがえた。
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