法令改正で“実質値上げ”のスマホ、4キャリアはどう動いた? 24年の売れ筋に影響も:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
2023年12月27日に、電気通信事業法の施行規則が改正され、端末割引の制限が4万4000円に拡大した。その一方で、回線契約を伴う際の端末単体割引もこの範囲に含まれたことで、大手キャリア各社は価格の見直しを余儀なくされた。ソフトバンクは1年下取りを導入する一方で、ドコモは実質負担額を値上げしている。
2023年12月27日に、電気通信事業法の施行規則が改正され、端末割引の制限が4万4000円(税込み、以下同)に拡大した。その一方で、回線契約を伴う際の端末単体割引もこの範囲に含まれたことで、大手キャリア各社は価格の見直しを余儀なくされた。割賦と下取りによる残債免除を組み合わせるアップグレードプログラムも、その額によっては割引と見なされるからだ。そのとき、キャリア各社はどう動いたのか。それによって、2024年の端末市場はどう変化していくのかも合わせて占っていきたい。
法令改正で大きく変わった端末価格、ソフトバンクは1年下取りを導入
電気通信事業法の施行規則が改正され、端末単体への値引きも制限の対象になった。もともと“転売ヤー”対策として一括での大幅な値引きを規制するための策だったが、アップグレードプログラムもその余波を受けている。下取りで免除される額が大きい場合、一般的な中古市場での買い取り価格との差額が割引に類する利益供与と見なされるからだ。各社とも、一部端末の残価を大きく設定することで約2年後の実質価格を抑えていたが、この手法が取れなくなった。
例えば、ソフトバンクは48分割で端末を購入する「新トクするサポート」で、前半24回と後半24回の支払額を変えていた。代表的なのが、Googleの「Pixel 8」やXiaomiの「Xiaomi 13T Pro」など。本連載でも取り上げたように、2023年後半に投入されたハイエンドモデルの一部は、発売直後からMNPで実質24円などの格安価格をつけていた。こうした施策に対し、残価設定型プログラムを導入していたドコモやKDDIも、残価を増額することで対抗してきた経緯がある。
特に、3キャリアが取り扱い、競争が激化しているPixel 8は、その対象になりやすかったといえる。発売直後から徐々に実質価格が下がり、最終的には2年後の下取りを条件に24円で販売されていた。アップグレードプログラムは端末の下取りを前提にした仕組み。本体価格そのままで実質価格だけが下がるのは、免除される残債が大きくなることを意味する。一般的な中古端末の下取り価格を上回ってしまうケースも増えていた。
こうした中、12月27日の法令改正を受け、各社とも端末価格を改定した。1年で端末を買い替えることで、実質価格を抑える仕組みを導入したのがソフトバンクだ。同社は、12月27日に「新トクするサポート(バリュー)」を導入。対象となる端末は、MNPで適用される「オンラインショップ割」を含めると、いずれも実質12円か実質9912円になる。端末の下取りが可能になるまでの期間を2年から1年に短縮することで、実質価格を維持する手に打って出たといえる。
新トクするサポート(バリュー)の対象になる端末は、計4機種。Pixel 8のみ、128GBと256GBの両方が対応しており、SKUにすると5モデルになる。Pixel 8の256GB版とモトローラの「motorola razr 40s」は、オンラインショップ割を適用した場合、前半12回の支払額が月826円になる。Xiaomi 13T Proや128GB版のPixel 8、iPhone 14は、前半の支払額が最安で月1円まで下がる。本体価格はほぼそのままのため、免除する額自体は変わっていないものの、下取りを早くできるため、中古店の下取り価格との差分は小さくなる。
新トクするサポート(バリュー)が実現できたのは、そのためだ。ソフトバンクが公表している買い取り予想価格を見ると、理屈が分かる。例えば、128GB版のPixel 8は、1年後の買い取り価格を6万9300円と想定。同モデルで免除されるのは8万9604円で、差し引きすると2万304円の利益提供をしていることになる。オンラインショップ割が2万1984円のため、割引の合計額は4万2288円。予想買い取り価格はかなりアグレッシブな設定だが、ギリギリセーフになる計算だ。他の端末も、同様の仕組みで計算されている。
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