赤字改善の楽天モバイル、24年は800万から1000万契約を視野に 単月黒字化に向けた秘策も?(2/2 ページ)
楽天グループの2023年度通期の連結業績は、3394億円の赤字だったが、モバイル事業の赤字は回復傾向にある。2024年は契約者数800万から1000万、月次EBITDA黒字化を目指す。ARPU向上のための施策も考えているという。
紹介キャンペーンや家族割で契約獲得を強化
契約数獲得には、楽天会員や楽天の取引企業に対する取り組みを強化する。以前から示されてきたが、楽天モバイルに加入することで、楽天市場の年間流通総額は60%、楽天トラベルは約2倍に上昇するというデータが出ている。楽天グループの他のサービスも、より多く使ってもらえるようになる。楽天グループでの売り上げ貢献は2023年第4四半期で約100億円、EBITDA貢献は60億円になるという。
リファラルマーケティングも強化しており、2月に紹介キャンペーンの内容をアップデート。楽天モバイルユーザーが新しいユーザーを紹介すると7000ポイント、MNPで乗り換えたユーザーには1万3000ポイント、新規ユーザーには6000ポイント付与される。
2月13日にはユーザーあたり110円割引される「最強家族プログラム」を発表しており、2月21日にスタートする。「紹介キャンペーンが適用されるので、最大に活用すると6人家族の場合、合計10万ポイント獲得できる」と三木谷氏はお得さをアピールした。ARPUの低下が懸念されるのではという質問に対しては、「必ずしもARPUがダウンするとは限らない」と回答していた。
法人の獲得については大企業の獲得を加速させる他、楽天市場の出展者や楽天トラベルのホテルなどに協力を仰ぐ。もちろん、他キャリア同様、販売代理店やリセラーを通じた契約獲得も確保する。
ARPUは、小容量プランもある法人契約が増加したことや季節性要因により、2023年第4四半期は前四半期比で低下し、1986円だった。今後はさらにサービスを充実させることによって、2500円から3000円を目指していくという。
三木谷氏はARPU上昇のために「あまり手の内は言えないが、いくつかの施策は必要」と述べている。楽天モバイルのCMO 河野奈保氏も「楽天らしい新たなオプションを出していきたい」と語った。
KDDIとの新ローミング契約によってKDDIのネットワークを利用することから、2024年の設備投資額は大きく下がる予定だ。プラチナバンドに関する10年間の設備投資合計は544億円。「われわれは仮想化を行っているので、本当に劇的に安い値段でプラチナバンドを展開できていくと思っている」と語った。
NTT法廃止は「極めて危険」「携帯料金が上がってしまう」
三木谷氏は最後に「大変重要なポイント」としてNTT法にまつわる議論についても言及した。
「NTTドコモがNTTグループの100%子会社になって、強靱(きょうじん)な垂直統合が行われている。今後も広く安く、自由にワイヤレス、モバイルが使えるようになっていくためには、NTTが継承した国の財産、局舎や電柱、あるいは地下の管路などがベースになっている。光ファイバーを今まで通りの価格、条件で公平に使えることが必須であり、それを有形無形な形で定義しているのがNTT法だと考えている」
三木谷氏はこのNTT法を「通信業界の憲法」とも表現し、NTT法の廃止は「極めて危険な話」と警鐘を鳴らした。
「せっかく下がった携帯電話料金もまた上がってしまう。国民が何兆円もの大きな負担をしなくてはいけないことになりかねない。極めて慎重な議論が必要。自民党、総務省が何となくやっているのではなく、しっかりと国民レベルで議論した上で対応すべき」
なお、質疑応答ではKDDIとローソンの資本業務提携についての受け止めも問われたが、三木谷氏はコメントを控えた。
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