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他社のは「なんちゃってOpen RAN」 楽天三木谷氏が語る「リアルOpen RANライセンシングプログラム」の狙い(1/2 ページ)

楽天シンフォニーが、Open RAN対応の集約ユニット(CU)と分散ユニット(DU)ソフトウェアを、サブスクリプション型で他社に提供する「リアルOpen RANライセンシングプログラム」を発表した。MWC Barcelona 2024にて、楽天グループ 代表取締役社長兼会長の三木谷浩史氏がリアルOpen RANライセンシングプログラムの狙いを語った。同氏は「楽天シンフォニーのソフトウェアが間違いなく成熟している」と自信を見せる。

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 楽天シンフォニーは2月26日、楽天モバイルやドイツの携帯電話事業者1&1が採用しているOpen RAN(※)対応の集約ユニット(CU)と分散ユニット(DU)ソフトウェアを、サブスクリプション型で他社に提供する「リアルOpen RANライセンシングプログラム」を発表した。

※無線の送受信装置などのオープンな仕様に基づき、さまざまなベンダーの機器やシステムと接続できる無線アクセスネットワークのこと。

 また、楽天グループはスペイン・バルセロナで開催されているMWC Barcelona 2024に出展。会期2日目の2月27日(現地時間)にはブース内でイベントを開催し、楽天グループ 代表取締役社長兼会長の三木谷浩史氏がリアルOpen RANライセンシングプログラムの狙いを語った。

三木谷浩史
楽天グループ 代表取締役社長兼会長の三木谷浩史氏
楽天モバイル
楽天のブース。MWC期間中、複数のイベントが開催されていた

 三木谷氏は初めに、「当時、誰もが仮想化された無線アクセスに懐疑的だった」と楽天モバイルがMNOとして参入した当時を振り返った。楽天グループは今や70以上のサービスを展開する大手IT企業だが、「正直、一番やりたくなかったのはモバイルビジネスだった」という。ネットワークを構築するには莫大な資金が必要で、十分なリターンを得るのは難しいからだ。しかし、多くの国では数社の通信キャリアによる寡占状態が続いており、料金も高額。リーズナブルなコストで高品質なネットワークを提供する必要があるとの考えに至る。

 そのときに「従来のやり方ではいけない」と三木谷氏は考えた。そこで、現在の楽天シンフォニーが構築した仮想化技術を採用。サポートシステムも仮想化した。

 なぜそれができたかというと、楽天が最も成熟したソフトウェアを提供している「モバイルネットワーク・ソフトウェア会社」だからだと三木谷氏。「携帯電話業界は何かおかしいと思っていた」が、「世界中の誰もが非常に高品質で、非常にリーズナブルな価格で(ソフトウェアを)利用できるようになることで、大きな変革をもたらせると確信している」と、リアルOpen RANライセンシングプログラム導入の狙いを説明した。

楽天シンフォニーのソフトウェアが間違いなく成熟している

 イベント修了後には、日本の報道陣向けのグループインタビューを実施。リアルOpen RANライセンシングプログラム関連の話題を中心に質問に応えた。主なやりとりは以下の通り。

三木谷浩史
グループインタビューで報道陣の質問に応える三木谷氏

―― リアルOpen RANライセンシングプログラムを発表されましたね。

三木谷氏 われわれは、誰もがバーチャライゼーションやOpen RANが難しいと言っていた5年前から始めました。今はみんなOpen RAN、Open RANって言っているけれど、だいたいのOpen RANは「なんちゃってOpen RAN」なんですよ(笑)。

 そもそもOpen RANというからには、たくさんのソフトウェアがあってはいけないと僕は思っている。Open RANが安くて、みんなが使えるようになれば、いろいろなハードウェア機器がつながります。ハードウェアメーカーさんはハードウェアを作るのに集中してくださいね、という世界が正しい姿だと思っています。

 でも、今は、エリクソンOpen RAN、サムスンOpen RAN、ノキアOpen RANのようになってきている。これは変えないといけない。

 今のところ、楽天シンフォニーのソフトウェアが間違いなく成熟していると思います。それをリーズナブルな価格で提供するので、「皆さん、使ってくださいよ」という形です。競合が利用するかもしれないけれど、それはそれでいいということで、戦略を進化させたという感じです。

 つまり、Linuxみたいにしようということですね。LinuxもピュアLinuxでは使えないから、Red HatとかRockyのようなディストリビューションがある。Open RANのリーダーとして、そんな世界に近づけていきたいなと思っています。

 もっと古い話では、サン・マイクロシステムズが開発したSolarisに比べると、Linuxはずいぶんと安いわけです。Solarisは自社のハードウェアとソフトウェアをバンドルしていたわけですから。

 われわれはクラウドやオペレーティングサポートシステム(OSS:運用サポートシステム)のソフトウェアも持っているので、「ついでにOSSもいかがですか?」というセールスができるわけです。コミュニティーを作って、ハードウェアとソフトウェアの接合の問題は、「NECも富士通も他の会社も、自分で接続テストをやってよ」という方が楽なんですよ。ライセンスしたら自分たちで接合してくれと。必要があればわれわれがソフトウェアをバージョンアップしますので、という形。Androidもそうですよね。機種によって時々不具合があるけれど、Androidがアップデートして直していく。それと同じような感じですね。

―― このプログラムを採用する事業者の規模感はどれくらいですか?

三木谷氏 分からないですね。今、話をしている相手がいきなり全部行くとは思いませんが、少なくとも、皆さん関心は持っています。まだアナウンスしたばかりなので、正直言ってこれからです。

―― Androidに近いですよね? 

三木谷氏 そうです、Androidに近い。

―― AndroidはフリーだけどGoogleはもうかっている、みたいな感じで考えていいですか?(笑)

三木谷氏 われわれとしては、ここで強烈な利益を上げようとは思っていません。それよりも、いろいろなベンダーとのリレーションシップを作って、クラウドやOSSである程度の利益を出したい。そもそも、大体1つのソフトウェアで全部賄えるというのが目的だったはずなのに、今は個別に自分の牙城を作って開発している。この牙城を崩しちゃおうかな、と思っています。

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