次世代通信「6G」に向けた進捗と課題 NTTドコモ中村氏に聞く(1/2 ページ)
次世代通信に向けた準備はどこまで進んでいるのか、どのような課題があるのか。NTTドコモの中村武宏氏(CSO コーポレートエバンジェリスト)に話を聞いた。
MWC Barcelona 2024のNTTドコモのブースでは、同社が掲げる「5G Evolution & 6G」に向けた取り組みの展示や講演も行われていた。次世代通信に向けた準備はどこまで進んでいるのか、どのような課題があるのか。NTTドコモの中村武宏氏(CSO コーポレートエバンジェリスト)に話を聞いた。
―― 次世代通信の「6G」に向けて、今はどのような段階にあるのでしょうか。
中村氏 今まではコンセプト作りが中心でしたが、2024年からは標準化に向けた議論も始まります。より具体的で、実用化に向けたステップに入っています。
しかし、技術的には難しいことはあります。特にサブテラヘルツ帯(おおむね100GHz〜1THzにある周波数帯)は難しく、6Gの最初から始められるとは思っていません。2030年代のどこかで始めることになるでしょう。他にも、今回出展したNTN(非陸上ネットワーク)など、さまざまな技術がありますが、それらを実際に使えるようにしなければなりません。
リーズナブルなコストで、しっかり性能を出せるようにするには、まだまだ試行錯誤をしていく必要があります。
―― 5Gが始まる前は、標準化に向けて、世界のキャリアが競争している印象がありましたが、6Gに向けてはどうでしょうか。違う雰囲気がありますか。
中村氏 4Gでも5Gでも標準仕様を作る段階は、競争しているわけではなく一緒にやっていました、協調領域として一緒に取り組まないと、シングルスタンダードは作れないのです。実際の競争はサービスインする少し前くらいからだと思いますが、6Gはまだまだその段階ではありません。
―― NTTグループは、最近、IOWN(最先端の光技術などを用いた高速なネットワーク基盤)にも注力しています。IOWNも5G Evolutionや6Gに欠かせないものになるのでしょうか。
中村氏 IOWNをどう定義するかはさておき、有線の通信品質についても当然考えていかなければなりません。われわれが提供する5Gでも、お客さまに提供するエンドツーエンドの品質が重要なので、無線ネットワークだけを良くしてもダメなのです。
5Gに入って、性能がかなり良くなり、有線の品質とさほど変わらないくらいになってきました。つまり無線ではなく、有線側がボトルネックになることもある訳です。無線と有線のどちらも性能改善を図り、よりよい通信環境を作っていく必要性があります。
関連記事
- グラス型XRデバイス出展の狙いは? NTTコノキュー丸山社長に聞く、XRの現在と未来
MWC Barcelona 2024のNTTドコモのブースには、XR事業を手掛ける子会社のNTTコノキューが開発したARデバイスのプロトタイプが展示されている。発売は2024年半ばになるという。デバイス開発の意図やコノキューの今後の展開について、コノキューの丸山誠治社長に話を聞いた。 - KDDI高橋社長が語る「povoのオープン化」「ローソンとの提携」 他社との決定的な違いは?
KDDIはMWC Barcelona 2024で、GMSAが発足した共通APIを活用した5G SAのユースケースや、povo2.0のホワイトレーベル化、さらにはStarlinkとの取り組みを紹介していた。海外事業者とのパートナーシップ構築や、海外展開のアピールの場としてMWCを積極的に活用していたことがうかがえる。そんなMWCを、KDDIの代表取締役社長CEO、高橋誠氏はどう見ているのか。 - 他社のは「なんちゃってOpen RAN」 楽天三木谷氏が語る「リアルOpen RANライセンシングプログラム」の狙い
楽天シンフォニーが、Open RAN対応の集約ユニット(CU)と分散ユニット(DU)ソフトウェアを、サブスクリプション型で他社に提供する「リアルOpen RANライセンシングプログラム」を発表した。MWC Barcelona 2024にて、楽天グループ 代表取締役社長兼会長の三木谷浩史氏がリアルOpen RANライセンシングプログラムの狙いを語った。同氏は「楽天シンフォニーのソフトウェアが間違いなく成熟している」と自信を見せる。 - Starlinkは「スマホと衛星の直接通信を最も早く実現できる」 KDDIとT-Mobileが語る展望
MWC Barcelona 2024に出展したKDDIが、StarlinkとT-Mobileとともにトークセッションを実施。KDDIは、衛星通信サービス「Starlink」の活用で3つの「初」があるという。T-MobileがSpaceXをパートナーとして選んだのは「直接通信を最も早く実現できると考えたから」だという。 - ソフトバンク、企業や大学と連携したAI-RANアライアンス設立 MWC Barcelona 2024でデモ公開
ソフトバンクは、企業や大学と連携してAI(人工知能)を活用した新たな通信プラットフォームの創出を目指す「AI-RANアライアンス」を設立。「MWC Barcelona 2024」では一部のデモを公開する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.