Back Marketの「リファービッシュ製品」が中古と違うワケ 売れ筋はiPhone 13、バッテリー“100%保証”の計画も(2/3 ページ)
スマートフォンを中心としたリファービッシュ製品を取り扱うBack Marketが4月16日、メディア向け説明会を実施。同社が掲げるビジョンや日本における戦略を説明した。日本では成長率が世界で最も高く、一般的な中古市場とは異なる属性のユーザーが利用しているという。
バッテリー容量は80%以上を担保 夏には“100%保証”サービスも予定
品質面での1つの基準が、バッテリー容量が80%未満のものは販売しないこと。「80%を切ると、デバイスの機能が劣化していると考えられる。また、バッテリーを節約するためにパフォーマンスを落とす可能性がある」(イノベーション・ラボを率いるケウィン・シャロン氏)というのが理由だ。
ただしBack Marketでの購入時にバッテリー容量が何%かの数値は提示していない。Back Marketで販売している製品には、A〜Cの3グレードで分けられているが、バッテリー容量とは関係なく、あくまで外装の状態を示すもの。Aグレードで購入した場合でも、バッテリー容量が80%の可能性もあれば100%の可能性もある。
あえてバッテリー容量を明記しないのは、Back MarketのWebサイトの作りにも関係している。他の中古サイトだと、例えば同じiPhoneでも、状態の異なる複数の製品を掲載しているが、Back Marketでは1つの機種で1製品しか掲載していない。1機種ごとの詳細を見たいというニーズもあるだろうが、煩雑な面もある。「それをやりたくない人もいる。それこそ、デバイスに関してそこまで関心が高くない人はやらないのでは」(山口氏)と考え、個別には掲載していない。
【更新:2024年4月18日18時20分 山口氏のコメントについて、一部、趣旨にそぐわない点があったため、修正しました。】
ただ、Aグレードの製品を購入したのに80%のバッテリーが当たるのは納得がいかないだろう。そこで、Back Marketでは、30日以内なら他の製品と交換する保証サービスを無料で提供している(他に1年以内の製品保証もある)。「この保証があるので、安心して買っていただきたい」と同氏。
さらに、欧州ではバッテリー容量100%を保証するグレードを提供しており、日本でも2024年夏に提供する予定だという。これは、既存の価格に数千円をプラスすることで利用できるそうで、例えば外装はCグレードでもバッテリーは100%の製品を購入することも可能になる。
日本の成長率は世界一 売れ筋は「iPhone 12」や「iPhone 13」
日本でのリファービッシュ市場は2.9兆円といわれており、そのうち携帯電話やスマートフォンの市場規模は700億円。全体の中では2〜3%にすぎないが、2022年から2023年の成長率は17.1%と、他のカテゴリーよりも高い数値を示している。
一方で、日本ではまだ中古やリファービッシュの製品を所有する率が低く、Back Marketの調査では、中古・リファービッシュのスマートフォンを使用している割合は8.7%にすぎなかった。ただ、品質が高ければ中古スマホの購入を検討すると答えたユーザーが49.2%おり、中古でも品質が高いことが伝われば、成長の余地がまだある。
実際、Back Marketの日本での取り扱いは右肩上がりに伸びており、山口氏によると、成長率だけを見れば世界一だという。ただ、日本での売り上げ比率は「1桁パーセントほど」といい、市場拡大はこれから。Back Marketは日本での事業を強化すべく、社員数を2023年から倍増して15人にした。カスタマーサポートだけでなく、エンジニアやデザイナーも日本人を採用している。「日本の需要に合わせた開発が成長の一因だと考えている」と山口氏は手応えを話す。
そんな日本市場で特徴的なのは、Back Marketでスマートフォンを購入するユーザーの中で、若年層と女性が多いことだ。年齢で見ると18歳〜30代前後が7割、性別だと女性が3分の1ほどを占めている。これは、Back Marketのサイトに、若者が好むポップなデザインを採用していることが1つ、功を奏しているようだ。検索による流入も強化しており、例えばGoogleで「iPhone 中古」と検索すると、Back Marketのページが上位に表示される。オンラインやオフラインの広告も積極投下し、認知拡大に努めている。
売れ筋の製品も一般的な中古スマホ市場と異なり、発売から2〜3年程度の、比較的新しい製品が売れる傾向にあるという。2023年10月〜2024年3月のベストセラーを見ると、iPhoneでは「iPhone 13」「iPhone 12」「iPhone 13 Pro」がトップ3に並ぶ。他の中古市場だと「iPhone 8」「iPhone SE(第2世代)」が売れ筋の中心だが、より新しく、スペックの高い製品がBack Marketでは売れている。
iPhone 12は5万円台、iPhone 13は7万円台、iPhone 13 Proは9万円台なので、中古端末としては安くはない。それでも売れているのは、1台目のスマートフォンとして購入しているからだと山口氏はみる。新品よりも安く、中古よりも高品質というリファービッシュ製品のメリットが受け入れられていることがうかがえる。
関連記事
- iPhoneを安価に購入できる「リファービッシュ製品」という選択肢 中古とは何が違うのか? Back Marketに聞く
リファービッシュ製品とは、中古として回収されたデバイスを、専門の業者が検査、クリーニングなどの整備をした上で再販売されるもの。フランスで事業を開始したBack Marketはリファービッシュ製品を世界17カ国で取り扱っており、2021年に日本進出した。日本でもリファービッシュ市場が着々と成長しているという。 - 中古スマホを購入する理由は「価格の安さ」、購入しない理由は? Back Marketが調査
Back Market Japanが「中古スマホの購入」に関する調査結果を発表。中古スマホの購入経験は51.9%で、購入した理由は「価格が安いから」、購入しない理由は「バッテリーの持ちが気になるか」が多い。 - 「スマホのバッテリー交換」を容易にする動きが進む それでもデメリットが消えない理由
EUにてスマートフォンのバッテリー交換規制が強化され、2027年にはバッテリーを容易に交換できる機種でないと、同地域では販売できなくなる見込みだ。これについてメーカー各社も既に手を打ち始めている。既にEUでは「修理のしやすさ」が市場でスマートフォンを選択する上での差別化要素になっている。 - 「スマホのバッテリー交換義務化」がユーザーにデメリットをもたらす理由
EU(欧州連合)は、スマートフォンなどに対する新たな規制として、「バッテリーを簡単に交換できる設計とすること」を可決した。バッテリーを交換できるのはメリットだけではない。スマートフォンのイノベーションを阻害する側面もある。 - Appleの「セルフサービス修理プログラム」、日本での提供が難しい理由
2022年4月27日(現地時間)、Appleの「セルフサービス修理」プログラムの提供が、米国で始まりました。純正部品を購入すれば壊れたiPhoneの修理をユーザー自身で行えるという内容です。日本での展開も期待したいところですが、残念ながら日本ではやや事情が異なります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.