5Gの電波ばく露レベルは4Gと同程度かそれ以下 NICTが公表
情報通信研究機構(NICT)は、商用運用されている5G基地局からの電波ばく露レベルを複数地点で測定。6GHz以下と28GHz帯で調査したところ、従来の4Gと同程度またはそれ以下であることが分かった。
情報通信研究機構(NICT)は、7月5日に商用運用されている5G基地局からの電波ばく露レベルを発表した。ばく露は、化学物質が人体に入ることを示す言葉であり、ばく露レベルは人体への影響を示す指標となる。
NICTでは電波環境の測定技術を有する公的研究機関として、日本で初となる大規模な電波ばく露レベルの長期測定を2019年に開始。定点測定、スポット測定、携帯型測定器による測定、電測車による広域測定などを組み合わせ、データの偏りを抑えた大規模かつ詳細な電波ばく露レベルのデータを取得している。
今回は、6GHz以下(FR1)と28GHz帯(FR2)の5G基地局周辺の電波強度を測定。FR1の測定はFR1は東京都内と近郊51カ所(51地点)で、電界プローブを用いて国内の電波法施行規則で定められた測定手順に準拠した測定を行った。FR2は東京都心の3カ所(15地点)で、電界プローブの代わりに28GHz測定用アンテナを用いて行っている。
また、測定場所付近のスマートフォンでデータをダウンロードしながらの測定も行い、FR1は6GB、FR2は10GBのデータを約1分間ダウンロード。測定で得られたデータを統計処理し、過去の測定結果と比較した。
データのダウンロード有無の比較では、データをダウンロードしたときの方が、レベルはFR1で約70倍、FR2で約1000倍大きくなる。従来の携帯電話システム(4G)の基地局の過去の測定結果と比較すると、データをダウンロードしたときでもレベルは同程度またはそれ以下であることが判明した。
いずれの場合も電波防護指針に対して低いレベル(中央値で約1万分の1以下)であり、今回得られた電波ばく露レベルは海外での5G FR1基地局の測定結果と比べて12%程度となった。NICTは今後も2040年まで長期的に測定を継続し、結果を学会発表などで公表していくという。
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