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ソニーが「Xperia 5」新機種を見送った理由 小型スマホは終焉を迎えるのか(1/2 ページ)

ソニーマーケティングは9月10日、スマートフォン「Xperia」の販売状況や戦略について、オンラインで説明した。例年秋頃に登場する「Xperia 5 V」の新製品のアナウンスはなかった。ソニーは説明会の中で、今期、Xperia 5 Vの販売を継続する理由などを明らかにした。

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 ソニーマーケティングは9月10日、スマートフォン「Xperia」の販売状況や戦略について、オンラインで説明した。例年秋頃に登場する「Xperia 5 V」の新製品のアナウンスはなかった。説明は、モバイルビジネス本部モバイルビジネス部 統括部長 水野雅夫氏と、モバイルマーケティング課 統括課長 湯原真司氏が行った。

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モバイルマーケティング課 統括課長 湯原真司氏(写真=左)、モバイルビジネス本部モバイルビジネス部 統括部長 水野雅夫氏(写真=右)

Xperia 1 VIとXperia 10 VIが好調 その要因は何か

 販売戦略について触れる前に、まずはXperiaのラインアップをおさらいしたい。Xperiaはレンジごとにモデルが分かれている。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが6月7日に発売した「Xperia 1 VI」は、ハイエンドの中でも上位に位置するモデルだ。3社がその約1カ月後の7月5日に発売した「Xperia 10 VI」は、ミッドレンジモデルとなっている。

 Xperia 1 VIは、光学7倍の望遠力を生かした「テレマクロ撮影」で、画質の劣化を気にせずに、遠くの被写体でも大きく拡大して高精細に写し出せるのが、Xperia 1 Vから大きな進化点だ。ディスプレイはアスペクト比が21:9から19.5:9へと変更され、解像度は4KからフルHD+に下がった。価格(税込み、以下同)は、キャリア向けモデルが20〜21万円台、ソニーストア直販モデルが18〜21万円台となっている。

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他社製品で光学2倍や光学5倍を売りにするカメラが多くなっている中、ソニーはさらに遠くのものや風景をより鮮明に撮影できる「Xperia 1 VI」を6月に投入した

 Xperia 10 VIは、アスペクト比21:9のディスプレイや、均等なバランスで配置したステレオスピーカーを搭載する。スペックやパフォーマンスの高さが際立つ1シリーズとは違うコンセプトで、先代「Xperia 10 V」のよさを受け継いでいる。価格は、キャリア向けモデルが7〜8万円台、ソニーストア直販モデルが6万9300円。

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「Xperia 10 VI」は高機能を売りとせず、握りやすさやソニーらしい機能を推すモデルといえる

 このうち、Xperia 1 VIはSIMフリー限定色の「スカーレット」「カーキグリーン」に加え、メモリ容量の異なるモデルが複数ある。湯原氏は、メモリ容量のバリエーションの拡大について、「Xperiaとして初めての取り組みだ」と紹介する。累計販売数は、Xperia 1 VIが前年比で128%増、Xperia 10 VIが前年比で130%増となり、「両モデルともに好調に売れている」と湯原氏は話す。

 特にXperia 1 VIについては、「キャリアモデルの発売に近いタイミングでソニー直販のSIMフリーモデルを発売できた」(湯原氏)ことが、好調の一因だという。Xperia 1 Vではキャリアモデルの発売後、4週目にSIMフリーモデルを発売したが、Xperia 1 VIではキャリアモデルの発売後、2週目にSIMフリーモデルを発売した。

 Xperia 1 VIの商品メッセージである「全方位スキのないスマホ」が消費者に届いたことも、好調である理由の1つだという。Xperiaの強みであるカメラ、オーディオ、ビジュアル機能を訴求している。カメラは、AI姿勢推定で動きのある被写体を追随できる。ディスプレイは、画質調整にテレビ「BRAVIA」の技術を取り入れた。オーディオは、バランスよく聞こえるスピーカーやハイレゾ音源への対応などを挙げられる。

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「全方位スキのないスマホ」として打ち出したXperia 1 VI。その特徴に対する理解が進んでいるようだ
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カメラやディスプレイにAIを活用するXperia 1 VI。オーディオについてもソニーならではのこだわりが詰まっている

 ユーザーから得られた評価については、Xperia 1 VIが先代の「Xperia 1 V」を上回っているそうだ。「Xperia 1 VIご愛用者アンケート」では、総合満足度だけでなく、「メインカメラの画質や使いやすさ」「音楽再生時の音質」「ディスプレイのきれいさ」「バッテリー持ちのよさ」「端末が熱くなりにくいこと」が評価された。

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Xperia 1 VIに対する満足度は、あらゆる面でXperia 1 Vを上回った

 同じアンケートでは、「カメラアプリが新しくなって不安だったが、使いやすくて気に入った」「Xperia 1 Vは21:9の完成形だと思い満足していたが、1 VIはそれを上回る出来」「従前の4K対比画質劣化がさほどなかった。期待値以上だった」という好意的な意見も寄せられた。

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性能やボディーカラーだけでなく、Xperia 1 Vからの大きな変更点となるディスプレイについてもユーザーに理解されたようだ

 こうした内容は、スペック表や商品ページだけで、十分に伝わらない感があるのだが、ソニーがXperia 1 VIのプロモーションにおいて「諦めていた、未体験の星空まで映し出す、星空センサー」というキャッチコピーを付けたり、店頭での体験機会を増やしたりした結果、「体験を通して実感できるXperiaならではの価値」が浸透したそうだ。

 筆者としても、Xperiaの実機を体験できる機会は増えた、と実感している。実際、ソニーは5月17日に実機体験会を報道関係者向けに実施。同日夜には、一部の一般客を招き、「Xperia SPECIAL EVENT 2024」を開催した。その後、全国のソニーストアでイベントを開催した際には、「過去最多となる来場者数を記録した」(湯原氏)という。

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体験を軸としたソニーのマーケティング活動が功を奏した。スペックやカタログだけでは伝わりづらいXperia 1 VIの体験価値がユーザーに通じたそうだ
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被写体に寄らずに鮮明な写真を撮影できる「テレマクロ」も体験しなければすごさを実感しづらいが、実機体験会やソニーストアで実機で体験できるようになった

体験や比較を重視したキャンペーン実施 過去モデルから新モデルへの買い換えを促す

 ソニーマーケティングは、こうした体験を重視し、体験や旧モデルとの比較を通して、Xperia 1 VIへの移行を促す「Go to 1キャンペーン」を始めた。Xperiaの旧モデルを利用する人に対して、Xperia 1 VIへの買い換えをサポートする。期間は9月10日〜10月31日。キャンペーンの内容は3つある。

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「Go to 1キャンペーン」の概要。旧モデルから新モデルへの買い換えを促す

 1つ目は買い換えに伴うキャッシュバックだ。既存の製品からXperia 1 VIに買い換えると、1万円をキャッシュバックする。対象モデルは乗り換え元がXperia XZシリーズ以降のモデル、乗り換え先がXperia 1 VI(キャリア向けモデル、ソニー直販モデル)。応募はXperia Loungeアプリから行う。

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買い換えに伴うキャッシュバックで、機種変更時の負担額の軽減につなげる

 2つ目は店頭での比較体験。Xperia 5シリーズとXperia 1 VIを実際に比較体験できるイベントを、札幌、銀座、名古屋、大阪、福岡のソニーストアで実施する。体験を終えた人がクイズに答えると、ノベルティーをプレゼントする。

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体験は今後も重視する方向性。単なる新モデルの展示にとどまらず、Xperia 5シリーズとXperia 1 VIの比較体験が売りとなっている

 3つ目は製品を比較できるサイトとなる。過去モデルとXperia 1 VIを比較した場合、バッテリーがどれくらい持つのか、プロセッサの性能がどれくらい向上したのか、カメラやディスプレイの性能がどれくらい進化したのかが分かるようになっている。サイトで選択できるモデルは、過去モデルがXperia 1、5のシリーズの歴代モデル、新モデルがXperia 1 VIとなっている。

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過去モデルとXperia 1 VIを比較できるサイトも開設。実機体験はできないが、こちらも購入前に活用できそうだ

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