「Xperia 1 VI」は“普通のスマホ”に見えるが「戦略は全く変わっていない」 ソニーに聞く変化の理由(1/3 ページ)
ソニーの最新フラグシップスマートフォン「Xperia 1 VI」は、アスペクト比が21:9から19.5:9に変化し、4Kディスプレイもやめた。「Xperia 1 II」以降搭載してきた「Photography Pro」も廃し、カメラアプリを刷新した。一見すると“普通のスマホ”のようになったが、戦略自体は全く変わっていないという。
ソニーは、同社のフラグシップモデルとなる「Xperia 1 VI」を投入する。ドコモ、au、ソフトバンクが取り扱うキャリア版が6月7日に発売され、ソニー自身が販売を行うオープンマーケット版も用意。ミッドレンジモデルの「Xperia 10 VI」も発売する。いずれもXperia 1シリーズ、10シリーズの最新モデルという位置付けだが、特にXperia 1 VIは、その特徴が大きく変わったことが話題を集めた。
アスペクト比が19.5:9になったディスプレイは、その変化の1つだ。Xperia 1は、初代モデルからシネマスコープサイズに近い21:9のディスプレイで映画を全画面表示できることを売りにしてきたからだ。解像度も4KからフルHD+に変更されている。また、「Xperia 1 II」以降搭載してきた「Photography Pro」も廃し、カメラアプリを刷新。「Cinema Pro」や「Video Pro」も統合し、カメラのユーザーインタフェースを大きくリニューアルした。
2019年に登場した「Xperia 1」は、「好きを極める人」をターゲットに明確化し、カメラや音楽、映像表示といったソニーの持つ技術をふんだんに盛り込むのがそのコンセプトだった。21:9のディスプレイやPhotography Proも、こうした考えに基づいて採用されたものだ。これらを大きくリニューアルしたXperia 1 VIは、ターゲットやコンセプトを変えてしまったのか。その疑問を、Xperiaの開発を率いるモバイルコミュニケーションズ事業部 事業部長の大島正昭氏と、プロダクトプランナーの八木隆典氏にぶつけた。
21:9のアスペクト比に課題 カメラUIの改善を求める声も
―― Xperia 1以降の特徴だった21:9のディスプレイが19.5:9になったのには驚きました。戦略やコンセプトが変わったのでしょうか。
大島氏 比率変更のことはよく聞かれますが、全然そんなことはありません。Xperia 1シリーズはクリエイターの声を聞きながら作っている中で、今の視聴環境やクリエーション環境として、こちらの比率の方が創作活動に適しているという判断です。戦略自体は全く変わっていません。
―― より広い層を狙うために、とがった部分を少し丸めたということではないんですね。
大島氏 より広い層をという意味だと、どちらかといえばXperia 10 VIにがんばってもらいたいですね。「好きを極めたい人々に想像を超えたエクスペリエンスを」というコンセプトは、そのままです。
―― クリエーションの環境が変わったということでしょうか。その変化をもう少し具体的に教えてください。
八木氏 ディスプレイのアスペクト比に関しては、これまでの21:9に課題も見えてきていました。静止画や動画、視聴のところでいうと、SNSが普及していく中で、そこに向けた動画制作やSNSでの視聴がより重要になっています。その多くは16:9を前提にしていますが、サービスによっては1:1のものもあります。そういった比率のコンテンツを、まずはしっかり描写したいという声が大きくありました。21:9だと、小さく表示されるだけでなく、SNSによっては全画面表示をベースにしているため、左右が見切れてしまうこともあったからです。
(SNS上での)クリエイターの創作活動は、プロの方も含めてどんどん増えていますが、やはりコンテンツは大事にしていきたい。また、スマホは撮影するときもライブビューを大きく表示できるのがメリットというコメントもいただいていました。こちらも、21:9より19.5:9の方が、より大きくなります。クリエイターの方に、より撮影していただきやすいディスプレイになっていると思います。
―― なるほど。そういう意味だと、Photography Proも右側に設定項目が並ぶため、ライブビューが小さくなっていました。一方で、もとのコンセプトは「α」の操作感を再現するということだったと思います。この点は、大丈夫なのでしょうか。
大島氏 αもずっと今のUI(ユーザーインタフェース)だったわけではなく、2020年に変えています。XperiaのカメラUIには、もっと分かりやすくしてほしいという声がありました。それこそ、トップクリエイターの方からもそういった声をいただいています。αと同じようにという考え方があったのはその通りですが、トップクリエイターの方々がもっと簡単に、直感的に使えることを優先すると、今のような形がフィットするのではないでしょうか。
結果として使いやすくなったので、いろいろな人に使ってもらえると思われたとしたら、すごくうれしいことです。ただ、好みが分かれるのは理解しています。カメラは趣味性が高いものなので。
八木氏 ただし、できることはそこまで変えていません。設定項目の並び方は違えど、同じような項目は踏襲しています。逆に、Photography Proは動画にそのまま適用するのが難しいUIでしたが、最新のカメラアプリは動画になっても近いUIで撮影することができます。αの撮影UIや撮影体験を、できるだけスマホに合わせて最適化したのが今回のUIです。
―― なるほど。αそのままではなく、スマホに最適化したということですね。実際に発表してみて、反響はいかがでしたか。
大島氏 まだ発売前なので実数としての反響はありませんが、体験会をやった中でも、最初はディスプレイ比率やUIが変わったことで、Xperiaらしさがなくなったのではと思って来られる方がいました。一方で、体験した方には、“正統進化”だと感じていただけています。その意味では、変化をポジティブに受け止めていただけました。
八木氏 こういった意図で変更したと伝えると、理解してもらえます。SNSのコメントなども拝見していましたが、最初は賛否両論ありつつも、ポジティブに捉えていただけることは増えていると思います。
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