Androidスマホが“短命”なのは過去の話? OSアップデートが長期化されたワケ(2/3 ページ)
AndroidスマートフォンはOSアップデートが早期に打ち切られ、短命という認識は過去のものになりつつある。サムスンやGoogleは最大7年のOSアップデートを公表している。他社との差別化を図る以上に、各国の法規制に対応するための措置という側面があるようだ。
長期化するソフトウェアアップデート アップデート期間を公表する理由は?
ここにきて「ソフトウェアアップデート期間を公にする」方向に各社かじを切り始めた。この理由について、他社との差別化を図る以上に、各国の法規制に対応するための措置という側面があるようだ。
大きなところでは、2024年7月に施行された米カリフォルニア州の「修理する権利を認める法律(SB-244)」の存在がある。ここでは、同州で販売される100ドルを超える電子機器は発売から7年間の修理パーツ供給、ソフトウェアアップデートの提供を義務付けている。長期アップデートを行うiPhoneに加え、PixelやGalaxyが7年のOSアップデートを公表してきた背景には、この州法の存在がかなり大きいと考える。
この流れはEU域内でも加速している。EU域内では2025年6月より施行予定の「スマートフォン、スマートフォン以外の携帯電話、コードレス電話およびスレート タブレットのエコデザイン要件」によって、スマートフォンの保守パーツは7年間、ソフトウェアアップデートは製品の販売終了から最低5年間提供するよう定められている。EU域では製品の販売終了から5年間の提供となるため、旧機種を併売するメーカーは対象機種に対してより長期のアップデートを提供する必要がある。
また、どちらの法律も「ソフトウェアアップデートの提供」としており、OSのバージョンアップではない。コストを抑えた廉価機種では、セキュリティを改善するアップデートを中心に配信されると考えた方がよさそうだ。
これらの法律のため、米国やEU域で販売するスマートフォンは、今後ソフトウェアアップデートの年数が長期化するとみられる。また、米国やEU域にならって「ソフトウェアアップデートの期間」を定める法律や規制を整備してくる国や地域が増えることも想像できる。特にグローバル展開するメーカーでは、ソフトウェアアップデートを行う期間の長期化、期間を公表する流れが恒常化すると考える。
日本ではどうだろうか。日本でもシャープやソニー、FCNTがアップデート期間を公表する方針をとり始めた。これはサムスンやGoogleの長期アップデートの動向に加え、国内の消費者動向調査の結果のもと、4〜5年のソフトウェアアップデート期間に設定していると考える。
それでもなお、日本ではソフトウェアアップデート期間をiPhoneや各社の直販モデルといったメーカーが設定するものもあれば、従来通り通信キャリアが設定するものもある。そのため、同じ機種でもアップデート提供期間は一律ではないのだ。
また、グローバルでは4回のOSアップデート、5年のセキュリティアップデートを公言したXiaomiや OPPOも日本では非公表としている。実際にXiaomi 12T Proのソフトバンク版はアップデートの提供が遅いという声があり、今後もしっかりアップデートを行うのか、不安が残る。
これは日本向けにFeliCaや各種通信キャリア向けのカスタマイズが行われており、海外向けとは異なる仕様のソフトウェアが入っていることが理由と考えられる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
Androidスマートフォンの“寿命”がiPhoneよりも短い理由
今回はスマートフォンをとりまくOSアップデートの実情、新たな取り組みについて考察する。AndroidスマートフォンのOSアップデートがiPhoneよりも少ない背景には、検証コストやプロセッサのサポート期間がある。そのAndroidスマートフォンでも、OSのアップデート長期化の流れも見え始めている。
Pixelスマホの“7年アップデート保証”が与える影響 iPhone並みの長寿に?
Pixel 8と8 Proでは、7年間のアップデート保証を打ち出したことも大きな話題となっています。スマホを頻繁に買い替えない人にとって、1台を長く使えることは大きなメリットとなります。海外での各種法令への対応も背景にありそうです。
スマホの「アップデート」はなぜ必要? アップデートしたくない理由は?
スマートフォンを使っていると必ず経験するであろう“アップデート”。中でもOSのアップデートは動作が遅くなったり、一部アプリが使えなくなったりするなど、ユーザーにはデメリットとなることもあるが、それでもなぜアップデートをする必要があるのだろうか。
ついに「iPhone 8」のOSバージョンアップ打ち切り これから“安いiPhone”を選ぶならどれ?
Appleが2023年秋にリリースする「iOS 17」では、「iPhone 8」「iPhone 8 Plus」「iPhone X」が対象外となった。iPhone 8といえば、中古市場ではいまだ売れ筋のモデル。中古市場にどんな影響があり、今後安いiPhoneを買うとしたら、どれを選べばいいのか。
スマホやPCで「OSをアップデートしない人たち」が考えていること
