上期決算「KDDI・ソフトバンク」と「ドコモ」で明暗が分かれたワケ 鍵を握る“メインブランドへの移行”:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
ドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社が、上期決算を発表した。3社とも、2021年からの官製値下げで通信事業の収益確保に苦しんでいたが、KDDIとソフトバンクはその状況を完全に脱したように見える。背景には、メインブランドへの移行が進んでいることがあるが、ドコモは通信サービス収入が減少した。
ドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社が、上期決算を発表した。3社とも、2021年からの官製値下げで通信事業の収益確保に苦しんでいたが、KDDIとソフトバンクはその状況を完全に脱したように見える。スマホの契約数が順調に伸びている他、1ユーザーあたりの平均収入を示すARPUも上昇の幅が大きくなっている。
背景には、メインブランドへの移行が進んでいることがある。一方で、ドコモは通信サービス収入が減少。基盤を強化するにあたってユーザー獲得に重きを置いた結果、販促費用もかさんで営業利益も落ち込んでいる。ARPUは第1四半期から横ばいで反転には至っていない。3社決算を比較しながら、通信事業の現状を分析する。
メインブランドへの移行が加速、原動力になった金融・決済連動料金
通信料収入の増加傾向がはっきり出たのが、KDDIだ。上期の通信料収入は7427億円。前年同期との比較で、46億円の増収になった。同社の通信料収入は前年度に反転しているが、その増収幅は8億円だった。通信量値下げの影響を脱し、その勢いが徐々に加速している。ブランド別に見ると、メインブランドのauが約3%、サブブランドのUQ mobileが約7%の増収になっており、特にUQ mobileが成長をけん引していることが分かる。
一方で、ARPUを底上げする原動力になっているが、UQ mobileからauへのブランド変更だ。こちらも、前年同期で約2倍に拡大。サブブランドで獲得を増やしつつ、メインブランドへの移行で稼ぐというマルチブランド戦略がうまく機能し始めていることがうかがえる。
KDDIの代表取締役社長CEOの高橋誠氏も、「ブランドミックスも改善傾向にある」と自信をのぞかせた。UQ mobileからauへ移行すると、基本的にはデータ容量が無制限の料金プランになり、ARPUは上がる。UQ mobileで獲得したユーザーを、auにどう移行させていくかが今後の鍵になる。
コンシューマー向けの通信事業は、ソフトバンクも近い状況といえる。同社のモバイル通信は、上期に122億円の増収。前期の下期に売上高が反転して以降、そのトレンドが拡大している。コンシューマー事業全体での営業利益も、4%の増益を果たした。また、スマホの累計契約者数は3110万に達しており、内訳の詳細な数は非開示ながら、メインブランドのソフトバンクも純増しているように見える。
決算説明会では、同社の代表取締役社長執行役員兼CEO、宮川潤一氏が「『ソフトバンク』への移行収支」と題したデータを公開した。これによると、2023年度の上期は、ソフトバンクからY!mobile(ワイモバイル)への移行が超過しており、収支はマイナスだった。これに対し、2024年度上期はY!mobileからソフトバンクへの移行がプラスになった。これは、通信料値下げ以降、初めてのことだ。
宮川氏は、「通信料値下げの結果、Y!mobileがメインになり、価格重視のお客さまの移動が活発になった。ソフトバンクとY!mobileブランドのすみ分けに注力し、昨年度ペイトクを出したが、その評価も高まり、徐々にソフトバンクへの移行が増えてきた」と語る。PayPayでの還元率上昇と大容量、無制限のデータ容量を組み合わせたペイトクが浸透することで、風向きが変わってきたというわけだ。
宮川氏は、「数を追いかけて無駄な獲得コストをかけるよりも、中身を改善した方がいい。どちらかといえば、ソフトバンクブランドとY!mobileブランドの入れ替え(促進)にお金を使っていく」と語る。KDDIもメインブランドへの移行数は重視しており、2社とも、金融・決済連携の料金プランによって、メインブランドへの移行を促進する方針にかじを切ったといえる。
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