上期決算「KDDI・ソフトバンク」と「ドコモ」で明暗が分かれたワケ 鍵を握る“メインブランドへの移行”:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
ドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社が、上期決算を発表した。3社とも、2021年からの官製値下げで通信事業の収益確保に苦しんでいたが、KDDIとソフトバンクはその状況を完全に脱したように見える。背景には、メインブランドへの移行が進んでいることがあるが、ドコモは通信サービス収入が減少した。
減収が続くドコモ、ARPU向上やネットワーク品質改善が課題か
一方で、サブブランド対抗のirumoを2023年7月に導入したドコモは、少々事情が異なる。KDDIやソフトバンクが早くからサブブランドでユーザーを獲得し、メインブランドへの移行を促進してARPUを向上させるフェーズに入ってきたのに対し、ドコモはirumoによる減収が現在進行形で直撃している状況に置かれている。
上期のモバイル通信サービスの収入は、前年同期比で354億円の減少。端末などの機器収入もこれを補いきれず、コンシューマー通信全体でも208億円の減収となった。また、営業利益はモバイル通信サービスの収入減に加え、機器販売収支や販売促進強化でのコスト増が響き、減益幅は472億円に拡大している。原因について、ドコモの代表取締役社長、前田義晃氏は「irumo導入当初、多くの方にご加入いただいた影響」と語る。
ARPUは3910円で第1四半期から横ばいで下げ止まっているが、これは旧料金プランからeximoやahamoへの移行率が上がっている効果が大きい。また、irumoやeximoといった段階制の料金プランについても、「データ利用量が年々増加しており、容量の大きい方(段階)に移行する傾向がある」(前田氏)という。
これは、ドコモが「将来の収益の礎となる顧客基盤の獲得、シェアの拡大に注力すべきである」(同)という方針を打ち出した影響も大きい。若年層に照準を合わせた施策を家電量販店などで展開することで、純増数は増加。「足元では、10月のMNPが想定を大きく上回るプラスになっている」(同)としており、流入も増えている。スマホなどのハンドセット解約率も低下した。
とはいえ、コンシューマー向けの通信事業での増収幅が拡大し、ARPUも上昇基調に入ったKDDI、ソフトバンクと比べると、回復が遅れている印象も受ける。サブブランド的な料金プランの導入が遅かったこともあり、2社とは時間差で料金値下げの影響を受けている格好だ。irumoやahamoからeximoへの移行を進めていくには、まだ時間がかかる可能性もある。
また、こうした大容量プランは、高品質なネットワークがあってこそ生きてくるものだ。ドコモは体感品質の改善に取り組んでいる最中。年度末までにSub6と転用周波数帯を使った5Gのどちらも拡大し、エリアとネットワーク容量を両立させていく方針だが、結果が出るにはまだ時間もかかる。一方で、前田氏は「全体の設備投資も通常のコストも、品質対策に振り向けている」(同)といい、チューニングが中心だった従来以上にコストをかけ、本格的に対策を進めていることを示唆した。通信品質は増加するデータトラフィックを支える要ともいえるだけに、その成果にも注目しておきたい。
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