日本通信が「ネオキャリア」に向けて一歩前進 迷惑電話撃退や音声翻訳など、電話機能の拡張も具現化:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
ドコモとの音声相互接続に伴い、2026年5月24日にフルMVNOとしてサービス開始を目指す日本通信。その一環として、同社はドイツに拠点を構えるng-voice社との提携を発表し、同社のIMS(音声通話やメッセージサービスを制御する装置)を導入する。このIMSにはどのような特徴があり、日本通信はなぜこれを利用することを決めたのか。
迷惑電話撃退、音声翻訳、認証サービス――目指す電話機能の拡張
クラウド上にソフトウェアベースでIMSを構築することで、より実現しやすくなるのが付加価値サービスだ。単純な音声通話やメッセージサービスだけでなく、認証基盤やAIなどを掛け合わせることもできる。バックマン氏が一例として挙げたのが、迷惑電話防止機能。LLM(大規模言語モデル)を活用し、AIで会話の中身を瞬時に分析することで迷惑電話をシャットアウトするのが、これに当たる。
日本では憲法で保障された通信の秘密との兼ね合いをクリアする必要があるため、そのまま導入するのは難しいかもしれないが、電話番号だけ迷惑電話かどうかを判断できないケースでも、利用者を守ることが可能になる。バックマン氏は、「グレーゾーンで、本当人間がかけているのか、自動で機械がかけている電話なのかを判断することに挑戦したい」と語る。
同様に、IMSにAIを組み合わせることで、お互いのスマホにアプリが入っていなくても、翻訳機能が利用できるようになる。バックマン氏は「移民や観光客が母国語を話せないということは多くの国で起っているが、この問題を解決したい」と話す。福田氏は、大手キャリアで導入されている電話リレーサービスを挙げ、「以前は1対1の電話に第三者が介入するといったことはできなかったが、今はこの種の技術を活用する余地がある」と話す。
これらに加えて、日本通信が導入を検討しているが、音声通話時にデータチャネルを使ってデジタルな認証情報を送受信するというサービスだ。このサービスは、「通話中に追加サービスを提供する、GSMA(携帯電話業界の世界的な業界団体)の取り組み」(バックマン氏)に基づいたもの。日本通信は、FPoSライブラリと呼ばれる電子証明書サービスを提供しており、通話中にこれをデータとして送受信することを想定しているようだ。福田氏は、次のように説明する。
「電話をしている同士でデータセッションを張れるので、デジタルサインドキュメントを送受信できる。FPoSで電子署名して、必要なものをやりとりすることが可能になるため、例えばショッピングで電話しているときに、支払いのためのデータセッションを裏側で張るといったこともできる」
これまでと同じ単純な音声通話を導入するのではなく、自社の得意分野を組み合わせた新しいサービスを開発したい――これが、日本通信の狙いだ。福田氏が「AIで音声認識が可能になったことで、IoTにも音声通話が戻ってきている」と話すように、人間が使う回線以外にもそれを拡大していく可能性も示唆した。2026年のサービスイン直後は難しいかもしれないが、長期的には「付加価値サービスのところで、他のキャリアより新しいサービスを入れていきたい」(同)という。
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