売れないスマホやゲーム機がdポイントに ドコモが店頭買い取りに挑戦するワケ(2/2 ページ)
不要になったスマートフォン、PC、ゲーム機を引き取る代わりに、dポイントを進呈する。そんな取り組みをNTTドコモは都内の一部店舗で試験的に始めた。実体験では手続きが手軽な反面、「処分に困る人」への訴求に課題があることも見えた。
「処分に困る人」への訴求に課題も 「FOMA」「iモード」終了へ向け本格展開に期待
このトライアルをドコモは「小型機器の買取り」と称するが、現金での買い取りを想起する人もいるだろう。なで現金ではなく、dポイントなのか、そもそもトライアルに踏み切った理由は何かなど、コンシューマサービスカンパニー アフターマーケットビジネス部 戦略・企画担当 山田勇樹氏に聞いた。
今回、小型機器の買い取りに挑戦するドコモは1998年から、全国のドコモショップで携帯電話のリサイクルに取り組み、近年では下取りプログラムを通じて、回収した携帯電話の一部をドコモ認定リユース品である「docomo Certified」として再販するなど、廃棄物の削減や循環型経済を推進している。
環境省によると、携帯電話をはじめとする不要品の多くが家庭に退蔵されている。山田氏は「ドコモが資源循環の推進をどう進めるか、社会課題にどのように貢献するのかを考えた結果、既存の取り組みとは別の形で実施するに至った」という。
ただ、買い取りと聞くと「現金買取」を想起する人は多いはずだが、「お客さまに還元するときの利便性や、われわれドコモのサービスを知っていただくきっかけとしての機会としても活用すべく、現金ではなくdポイントでの進呈に決めた」(山田氏)という。進呈ポイント数が最低100ポイント、最大で1000ポイントとなっているのは、「(持ち込まれる機器が)最低限、このぐらいの価値はあるのではないか?」と考えた結果だという。
それでも、ドコモは集客や利用を見込めるのだろうか? 山田氏は「どのぐらいお客さまがいらっしゃるのか、まさにそれも検証の対象の1つにはなっている」と話すが、「処分の方法が分からないという理由で、自宅に眠ったままになっていそうな機器を、今回は対象機器として選定した」ことに加え、「処分に困っているお客さまが明瞭な買取価格設定で、さっと処分したいというニーズ」を満たせるという。
今回の取り組みの主な狙いに、「回収量と回収した小型機器のリユース率を検証する」ことがニュースリリースでも挙げられているが、山田氏は「お客さまにとって、今回の価格設定がお店に持ち込むに値するのか、申し込むモチベーションになるのかも、今回の検証項目で、結果を踏まえて分析していきたい」と話す。
似たような取り組みは、伊藤忠商事の子会社であるファミリーマートも2022年2月9日から都内の25店舗で実施していた。不要になった携帯電話と引き換えに、ファミリーマートで利用可能な1000円分のクーポンを進呈する内容だったが、想定を超える台数が持ち込まれ開始3日後に中止する事態となった。
山田氏は「特定の施策を踏まえたわけではない」としつつも、「何でもいくらでもとしてしまうと、混乱を招く恐れがある」こと、「通常の他のサービスを提供してるドコモショップのサービスに支障をきたさない範囲で実施したい」こと、「ご自宅で眠っている機器を持ち込んでほしいという趣旨がある」ことから、期間中に持ち込める機器の台数の上限が、1人につき各機器3台、合計でも15台となっている。
買い取りに出した機器の行方について、山田氏は「お預かりした機器は、ドコモの管理者で責任を持って処理し、資源の有効活用につなげていく」としている。「実際、集まってきたものをどのような形で、どのように処理するかは、中身を見て検証する形になる。決まっていることはないが、すでに実施している認定中古品のように、中身を処理してきれいにした後、お客さまに再販する、そんな可能性としては入れて見ていきたい」(山田氏)
なお、「買い取れないスマートフォン、タブレット、携帯電話(フィーチャーフォン)」については、引き続き「ケータイリサイクル」として無料で引き取るとしている。
今回の実体験を通して最も気になったのは「買取り」という表現だ。ニュースリリースにもキャンペーン・特典として掲示されたWebページにも「小型機器の買取り」とあり、現金での買い取りを想起されてしまいそうだ。大まかな内容は、端末と引き換えにポイントを進呈する、キャリアの下取りと何ら変わらないため、それとの差別化要素や表現ももう少し必要だろう。
加えて、何十万円もする端末をわざわざドコモショップへ持ち込み、100〜1000ポイントにする人はいないだろうから、ドコモがもし本格展開を見込むならば、「眠っている機器をdポイントへ」ではなく、型落ちなどを理由に「買い取ってもらえず、処分に困った人」に向けた「何か」が必要なはずだ。
「FOMA」「iモード」終了の2026年3月31日に向けても、ドコモの小型機器の買い取りは、価値を磨いて意義を示せるとも感じる。「ドコモショップなら、あなたのケータイを、簡単かつ安全に処分でき、dポイント化できる」という触れ込みこそ、フィーチャーフォンからスマートフォンの乗り換え時に有効ではなかろうか。
山田氏は今後の展開について、「回収した機器の台数や中身を検証した上で、対象機器はどうするのか、価格設定はどうするのかなどを検討し、サービスを広げていけると判断した場合には、対象店舗の拡大やサービス内容拡充の可能性がある」とした。ドコモが今後、どう動くのか注目だ。
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