総務省のガイドライン改正で激安Androidスマホは軒並み値上げに それでも“実質24円”が残るワケ:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
「電気通信事業法第27条の3等の運用に関するガイドライン」が改正されたことで、スマートフォンの価格が大幅に変わった。最大の変更点は、端末の下取りを前提にした購入プログラムの残価設定の基準が厳格化されたところにある。特に激安Android端末が大きく影響を受けた。
それでも残る実質24円販売、ハイエンドにはミリ波割引が効く?
ただし、リセールバリューの高いiPhoneは、どちらかといえばその影響が軽微だ。型落ちの端末では、実質24円などの格安価格も残っている。iPhoneは国内外でニーズが高いこともあり、中古市場での買い取り価格が高止まりする傾向にある。そのため、旧機種の残価を大きく設定できる。残価さえ盛れれば実質価格は抑えられるため、実質24円販売を維持できるというわけだ。
例えば、ソフトバンクの「iPhone 14(128GB)」は2年の実質価格が24円で販売されている端末の1つ。同社の「iPhone SE(第3世代、64GB)」も、実質価格は2年で24円と買いやすい。iPhone 14は、KDDIもMNPで実質47円の価格をつけている。ここまで極端ではないものの、ドコモもiPhone 14は実質価格が2万933円、新規契約で「eximoポイ活」などの料金プランを選択すれば9000ポイントの還元を受けられる。
ソフトバンクが販売している「iPhone 15(128GB)」のように、実質価格が2年で24円(MNPの場合)から4920円(新規/MNPの場合)まで上がってしまったケースもあるため一概にはいえないが、一部のAndroidより影響は軽い。型落ちにはなってしまうが、ハイエンドモデルであるiPhoneをほぼ無料同然の実質価格で扱えるため、キャリアにとっては販売しやすい端末といえる。
端末単体への割引を規制し、総額で4万4000円までと定めた2023年のガイドライン改正と比べるとインパクトは小さいが、2024年のそれも、機種によっては影響が直撃していることが分かる。ハイエンドモデルを買い替えやすくしていたソフトバンクも、戦略を変える必要がありそうだ。特に、同社が売りにしていた10万円台前半のAndroidスマホはやや厳しい戦いを強いられる恐れがある。
一方で、改正されたガイドラインにはミリ波対応端末の特例も加わった。ミリ波の普及促進のために、対応コストを割引で軽減するというのがその目的だ。このガイドラインに従うと、通常の割引上限である4万4000円を、1万6500円超えることができる。別途端末価格の50%までという上限はあるものの、トータルで6万500円まで値引きできるというわけだ。12万1000円以上の端末であれば、この上限が適用される。
仮に12万1000円の端末に6万500円分の割引が加われば、6万500円まで価格が下がる。さらにこの端末を1年後もしくは2年後に下取りすれば、実質価格を抑えることは可能だ。先に挙げた10万円台前半のハイエンド端末には、“ちょうどいい”割引額といえる。現状では、20万円前後の最上位モデルに搭載されることが多いミリ波だが、割引効果を考慮し、より低い価格レンジのハイエンド端末に広がっていくかもしれない。
実際、過去には本体価格が13万円台の「Galaxy S23」がミリ波に対応しており、実装ができないというわけではない。米国では、iPhone SE(第3世代)を除く5G対応iPhoneがミリ波に対応しており、iPhone 16は799ドル(約12万6000円、税別)で販売されている。制度化されたばかりのため、すぐに対応端末を増やすのは難しいかもしれないが、今後、そのバリエーションが徐々に増えていく可能性はありそうだ。
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