ファーウェイがイヤフォン/スマートウォッチで存在感 異例の世界初公開、ローカライズの背景を読み解く:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
ファーウェイがワイヤレスイヤフォンやスマートウォッチで着実な成長を遂げている。中でも注目は、世界に先駆けて発表したワイヤレスイヤフォン「HUAWEI FreeArc」だ。スマートウォッチでは、「HUAWEI WATCH D2」を法人にも展開することでシェア拡大を目指す。
米国の制裁を受け、Googleのサービスや最先端のチップセットを利用できなくなった結果、日本市場でスマホの投入を中断しているファーウェイ(Huawei)だが、それらを必要としないワイヤレスイヤフォンやスマートウォッチで着実な成長を遂げている。7日には、ワイヤレスイヤフォンの新製品を2機種発表した。
ラインアップに追加されたのは、耳にかけてスポーツ中でも音楽を楽しめる「HUAWEI FreeArc」と、フラグシップモデルの「HUAWEI FreeBuds Pro 4」。異例なのは、FreeArcは日本での発表が世界初だったということだ。正式発売が決定した「HUAWEI WATCH D2 ウェアラブル血圧計」も、これまでにない販路が注目を集めた。2機種の事例からは、日本市場を攻略するファーウェイの戦略が透けて見える。
ファーウェイ・ジャパンは、2月7日に新製品発表イベントを開催。ワイヤレスイヤフォンのFreeArcとFreeBuds Pro 4を披露した。写真左はファーウェイ・ジャパンのデバイス部門で日本・韓国リージョンのプレジデント 賀磊(ハ・レイ)氏。右は、FreeArcのアンバサダーを務めるプロランナーの神野大地氏
異例の日本先行発表となったFreeArc、その背景にFreeClipの成功あり
FreeArcは、ファーウェイ初となる耳掛け型のオープンイヤーイヤフォンだ。同社は、ウェアラブル機器の1つとしてこの分野に注力してきた。2022年には、メガネと一体になった「HUAWEI Eyewear」を発売。その後継機の「HUAWEI Eyewear II」も、日本のメガネメーカーであるOWNDAYSとのコラボモデルが高い注目を集めた。2023年には、耳を挟むような形で装着し、左右の区別がない「HUAWEI FreeClip」を発売した。
中でもFreeClipは、その独自性や着け心地のよさが評価され、グローバルで販売台数200万台を突破したという。FreeArcは、その直接的な後継機というわけではないが、オープンイヤー型イヤフォンの系譜に連なる製品といえる。形状記憶合金と液状シリコンで、耳に掛けたときの負荷を軽減している一方、形状を工夫することでフィット感を高め、落ちにくいデザインを採用した。
実際、筆者も発表会で装着してみたが、耳を挟んでしまうFreeClipよりも違和感が少なかったのが印象的だった。耳に差し込むカナル型とは違い、耳道への負荷も少ない。ファーウェイが手掛ける他のオープンイヤー型イヤフォンと同様、耳の回りに逆位相の音を出すことで、音漏れも防止している。これなら、スポーツ中に音楽を聞くだけでなく、長時間のビデオ会議や、動画配信サービスでドラマを一気見するときにも重宝しそうだ。
冒頭で述べたように、FreeArcはこのイベントで初めてお披露目された製品になる。グローバルメーカーにとって、いちローカル市場にすぎない日本で先行発表するのは異例といっていい。実際、同時に発表されたフラグシップモデルのFreeBuds Pro 4は、1月にアラブ首長国連邦ドバイのグローバル発表会で、フォルダブルスマホの最新モデル「HUAWEI Mate X6」などと一緒に公開されている。
もちろん、FreeArcもFreeBud Proと同様、グローバルで販売していく製品。日本市場限定というわけではない。では、なぜファーウェイはFreeArcを日本で先行公開したのか。同社によると、これはFreeClipの販売動向が密接に関係しているという。先に挙げたように同機は200万台を突破しているが、日本はトップレベルに販売が好調だという。
FreeClipは2万7800円(税込み)で販売されており、イヤフォンの中では比較的単価が高い。にもかかわらず、きちんと実績が出ているのが、ファーウェイが日本市場に注力している理由だ。一方で、日本は特にオーディオメーカーが多く、海外組も多数参入していることもあり、ファーウェイのシェアはまだまだ大きいとはいえない。日本市場にスマホがないため、Appleやサムスン電子のように、スマホのアクセサリーとして販売してくのも難しい。得意とするオープンイヤー型でどこまで存在感を発揮できるかが、今後の課題と言えそうだ。
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