“スマホなし”でも存在感示すファーウェイ 武器はスマートウォッチと日本特化のアイウェア:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
米国の制裁を受け、スマートフォンの開発に急ブレーキがかかってしまったファーウェイが製品ラインアップを大幅に転換。制裁の影響が少ないスマートウォッチやワイヤレスイヤホンといったウェアラブル製品やモニター、タブレットといったジャンルに特化している。製品ラインアップの数は、むしろスマホを定期的に発売していたころよりも多彩といえる。
米国の制裁を受け、スマートフォンの開発に急ブレーキがかかってしまったファーウェイ(Huawei)。プロセッサやOSを変え、中国市場では継続的に端末を販売し、勢いを取り戻しつつある一方で、日本を含む同社にとっての海外市場では苦戦を強いられてきた。発売すること自体は不可能ではないが、Googleのサービスが利用できないAndroidベースのスマホだと十分な販売量が見込みづらいからだ。実際、同社は2020年の「P40 Pro 5G」や「P40 lite 5G」を最後に、スマホの投入できない状態が続いている。
このような状況の中、ファーウェイは製品ラインアップを大幅に転換。制裁の影響が少ないスマートウォッチやワイヤレスイヤホンといったウェアラブル製品やモニター、タブレットといったジャンルに特化し、日本市場での生き残りを模索している。展開する製品ラインアップの数は、むしろスマホを定期的に発売していたころよりも多彩といえる。そんな同社が2023年後半に送り出す製品が、10月17日に発表された。そのラインアップを俯瞰(ふかん)しつつ、“スマホなし”で戦うファーウェイの戦略を読み解いていきたい。
ハイエンドモデルやラグジュアリーモデルまでバリエーション多彩なスマートウォッチ
ファーウェイが新たに発売する製品は、大きく2つのジャンルに分けられる。1つがスマートウォッチ、もう1つがワイヤレスイヤホンだ。前者は「HUAWEI WATCH GT4」「HUAWEI WATCH ULTIMATE DESIGN」、後者は「HUAWEI FreeBuds Pro 3」と「HUAWEI Eyewear 2」が含まれる。スマートウォッチは、約10年前から開発を続けてきた実績があり、スマホ投入を見送って以降もラインアップを拡充している。新製品のHUAWEI WATCH GT 4は、同社の中でハイエンドのスマートウォッチに位置づけられるシリーズ。それだけに、サイズやケース、カラーのバリエーションも豊富だ。
WATCH GT 4のサイズは、41mmと46mm。それぞれに3色ずつのバリエーションがあり、計6モデルが展開される。41mmは存在感を主張しすぎないシンプルなデザインの一方、46mmはクロノグラフ風のベゼルを取り入れ、八角形のケースでデザインに個性を出している。カラーリングに合わせてバンドの素材を変えていることもあり、1つ1つが異なる製品に見える。高級感がある一方で、価格は41mmが3万2780円(税込み、以下同)から、46mmが3万3880円からと比較的リーズナブル。初めてのスマートウォッチとしても、手に取りやすい製品といえそうだ。
同社のスマートウォッチを使うユーザーには常識かもしれないが、持ち前のバッテリー駆動時間の長さは健在。より大きなバッテリーを搭載できる46mmモデルは通常使用で約14日間、ヘビーユースで約8日間と、1〜2週間充電せずに利用を続けられる。小型の41mmですら、通常使用で7日、ヘビーユースで4日も持つ。Apple Watchはもちろん、Pixel WatchやGalaxy Watchなど、メジャーなスマートウォッチでここまでバッテリーが持つ端末は存在しない。駆動時間の長さでは頭1つ抜けた存在だ。また、41mmと46mmのどちらも、急速充電に対応している。
一方で、機能性も十分高い。文字盤のカスタマイズができるのはもちろん、「ムーブ」「エクササイズ」「スタンド」の3つを計測する「活動リング2.0」にも対応。新機能としてカロリー管理に対応し、消費カロリーを計測できるだけなく、摂取カロリーをスマホ上で記録することも可能になった。睡眠管理やストレスモニタリングなど、スマートウォッチに求められる健康管理機能も網羅。スマホと連動した通知の受信や音楽再生、電話への応答といった基本機能もきちんと備えている。
このWATCH GT 4に加え、ファーウェイは本物のゴールドを素材に使った高級モデルのWATCH ULTIMATE DESIGNも発売する。こちらの価格は45万9800円。こちらは、水深100mまでのダイビングにも利用可能な「HUAWEI WATCH Ultimate」の高級版といった位置づけで、ダイヤモンドカッターで彫り込んだ竜頭や、ゴールドとチタンを使ったストラップなどでラグジュアリーな質感を演出している。廉価モデルやスタンダードモデルだけでなく、最上位モデルまでフルラインアップで製品を展開している。
ここまでラインアップを広げている背景には、同社のスマートウォッチが急速にシェアを伸ばしていることがある。調査会社MM総研が5月に発表した22年度のスマートウォッチ販売台数調査では、ファーウェイが12.4%のシェアを取り、Appleに次ぐ2位につけている。Google傘下で3位のFitbitを上回っており、販売台数も48.4万台まで伸ばした。制裁前の2018年に同社はスマホ市場で5位だったことを踏まえると、スマートウォッチ市場での存在感はそれ以上に大きくなりつつある。ラインアップ拡充により、スマホ不在の穴を埋めつつあると言えそうだ。
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