「手紙」や「黒電話」よりも便利な今のコミュニケーションに足りないものとは 大阪万博のNTTパビリオンを体験して見えたこと
大阪・関西万博のNTTパビリオンは、Perfumeを起用した3D映像体験など、「IOWN」技術で通信の過去から未来へと時空を超える体験を提供している。
今やスマホからテキストを送るだけで簡単に連絡を取れる便利な時代になったが、それだけでは足りない「何か」がある。その答えの一端を、大阪・関西万博でNTTが運営する「NTT Pavilion」で垣間見ることができる。
NTTパビリオンは、万博会場東ゲート入り口のすぐ近くに建物を構えている。3つのゾーンから構成される同パビリオンでは、最先端のIOWN技術を駆使し、時間と空間を超えるコミュニケーション体験を提供する。実際に体験してきたので、見どころをレポートしたい。
コミュニケーションの歴史を3分半で掛け抜ける
NTTパビリオンは「PARALLEL TRAVEL」(時空を旅するパビリオン)をテーマに、3つのゾーンを巡る約22分のツアー形式となっている。
最初のゾーン「Zone1: Prologue」では、コミュニケーションの進化の歴史と普遍の価値を表現している。両脇に設置されたガラスケースには手紙、電信機、黒電話、フィーチャーフォン、スマートフォンなど、時代ごとの通信デバイスが展示されている。来場者はこれらの展示を見ながら、巨大な180度LEDスクリーンに映し出される映像体験へと導かれる。
スクリーンには、時代とともに変化するコミュニケーションの形が映し出される。手紙を書く人々の様子から始まり、固定電話で会話する家族、そして現代のスマホのビデオ通話で世界中の人々がつながる様子まで、3分30秒の映像で通信の歴史が凝縮されている。
この展示は技術の進歩とその動機となる「離れた場所にいる人と人とのコミュニケーションへの渇望」という、時代を超えた普遍的な人間の欲求を表現している。そして映像の最後では、現代のコミュニケーション技術をもってしても埋められない「何か」への気付きを与え、これから体験する未来のコミュニケーションへの期待を高める構成となっている。
Perfumeのバーチャルライブを体感
メイン体験となる「Zone2: Main Experience」では、Perfumeをパフォーマーに起用。来場者は3Dグラスを装着し、NTTの技術によって時空を超える体験を味わう。
会場では「EXPO1970 OSAKA SUITA」の文字が浮かび上がり、1970年の大阪万博の世界へと誘う。そこから現代の吹田市の万博記念公園、そして2025年の夢洲万博会場という3つの時空間を行き来するような映像演出が展開される。
Perfumeの3人は3D点群データとして表現される。メンバーたちは光の粒子で構成された姿となって分散したり集合したりしながら、「ネビュラロマンス」を歌い上げる。それに合わせて床から伝わる振動と音が、まるで目の前でライブが行われているような臨場感を生み出す。
実は、このPerfumeの映像は実際のライブに基づいた演出となっている。NTTは万博開幕に先立ち、4月2日にリアルタイム3D空間伝送実験を実施。吹田市の万博記念公園と夢洲の万博会場を次世代通信技術の「IOWN(アイオン)」でつなぎ、Perfumeのライブパフォーマンスを含む空間全体を20数台のセンサーやカメラで計測し、3D映像として伝送・再現した。会期中は収録データを活用した演出を体験できる。
もう1人の自分が踊り出す
最後の「Zone3: Epilogue」では、来場者一人一人の「Another Me」(もう1人の自分)が登場する。入場時に専用の装置で全身をスキャンすると、その場で来場者のデジタル分身が生成される。
展示空間は、四方を大型スクリーンで囲まれた没入型の環境となっている。体験の流れは明確に構成されており、まず「カメラを見つめてください」という案内に従って写真撮影が行われる。続いて映像が開始し、スクリーンに自分の姿が現れる。
自分の姿がスクリーン上でダンスを踊るような動きをする映像が流れ、その後「AGE UP」(年齢を重ねた姿)や「AGE DOWN」(若返った姿)といった表示とともに、来場者の顔が年齢で変化する様子が表示される。他の来場者の映像と並んで表示されることもあり、全体で1つの集合体としての表現を形作っていく。
自分自身のデジタル分身が自律的に動き出し、表情を変え、時には歌い出すという体験を通じて、この体験を通じて、AIやIOWN技術が進展した未来社会での新しい「自分」の在り方や、言葉や文化の壁を超えたコミュニケーションの可能性を示してのだという。
パビリオンを楽しんだ後は……
パビリオン体験の後には、出口付近に2種類の特別な電話機が設置されている。「せかいがきこえる伝話」は昔の公衆電話を模した筐体で、受話器を上げて3桁の番号を押すと、急な雨で駅からの迎えを頼む会話や、こっそり恋人と話す若者の声など、思わず共感する電話コミュニケーションが聞こえてくる。
また「いのちふれあう伝話」は会場内の「いのち動的平衡館」とIOWNネットワークで接続されており、音声や映像に加えて互いの心拍まで共有できる触覚体験を提供している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
NTTがIOWNの実用化加速 800Gbpsの超高速通信を実現、5G基地局の省電力化も視野に
NTTは技術公開イベント「NTT R&D FORUM 2024」を11月下旬に開催し、次世代通信インフラ「IOWN」の実用化段階への移行を発表。5G基地局の省電力化技術の開発など、IOWNの具体的な応用例を披露した。また、独自開発の生成AI「tsuzumi」の進化や、光量子コンピュータの稼働開始、月面探査向けワイヤレス給電システムなど、通信技術の枠を超えた幅広い研究開発の成果を公開した。
大阪・関西万博の公式電子マネーが登場 その名は「ミャクペ!」
2025年4月から開催される予定の「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」に向けて、公式デジタルウォレットサービスが提供されることになった。サービス自体は11月1日(一部は2025年5月)から提供される予定だが、スマートフォンアプリは既にダウンロードできるようになっている。
IOWNは6G時代のボトルネック解消になるか 「IOWN WEEK」で見えた実力と課題
NTT、ドコモ、東急不動産は、東京・渋谷に完工した「渋谷サクラステージ」で、次世代コミュニケーション基盤の「IOWN」を導入。これをお披露目する「IOWN WEEK」を12月13日から15日の3日間に渡って開催した。IOWNは、次世代モバイル通信規格の6Gを支えるバックボーンとしても期待されている。
大阪・関西万博で「ポケモンGO」のイベント開催 E・X・P・Oのアンノーン登場
2025年4月13日に開催予定の大阪・関西万博にて、ポケモンGOのイベントが実施される。イベントにちなんだポケモンや、珍しいポケモンが登場するという。イベントの参加費は無料。
KDDI、とある場所で5G通信速度を向上 どんな「カラクリ」か、このタイミングの意図は
KDDIが4月11日、5Gの通信速度を向上させたと発表した。ニュースリリースで、技術的な「カラクリ」と、このタイミングの意図を示した。カギは「Dual Band Massive MIMO Unit(DB-MMU)」という無線装置だ。







