ドコモが「銀行を持つ」ことでユーザーは何がお得になる? 住信SBIネット銀行が「最高のパートナー」なワケ:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
銀行を持たないことが弱点だったドコモが5月29日、住信SBIネット銀行の株式公開買付け(TOB)を実施することを発表。ドコモやNTTが手に入れたかったのは、「トランザクション(送金や入金などの取引処理)」だった。ドコモの前田社長は「複数のサービスを組み合わせてご利用いただくことで、お得な特典をお届けする」と語る。
銀行連携のサービスが生まれるか、他社には先行事例も
ドコモによる連結子会社化は、住信SBIネット銀行にとってのメリットも大きいという。同社の代表取締役社長を務める円山法昭氏は、「ドコモの膨大な顧客基盤や販売網、われわれが持っていないクレジットカード事業、ポイント事業」を挙げつつ、「そういった(銀行を)補完する機能を、今回の提携で手に入れることができる」と語った。
では、ドコモグループに住信SBIネット銀行が加わることで、何を実現するのか。前田氏は、「複数のサービスを組み合わせてご利用いただくことで、お得な特典をお届けする」と語る。サービスの具体例は挙がっていなかったが、ありえそうなのが、銀行口座と回線や特定の料金プランとのセットで、預金金利を上げたり、逆にローンなどを組む際の金利優遇を受けられたりといった特典は考えられる。
こうしたサービスは既にKDDIがauじぶん銀行に用意しており、「au PAY」「au PAYカード」や三菱UFJeスマート証券(旧auカブコム証券)との連携で優遇金利を受けられる、「auまとめて金利優遇」を提供中だ。また、au回線で「auマネ活プラン+」に加入すると、さらに0.1%の金利が上乗せされる。また、住宅ローンには「auモバイル優遇割」があり、適用金利が引き下げられる。
ソフトバンク傘下のPayPay銀行も、5月30日に「住宅ローン金利優遇プラン」を発表。ソフトバンクのスマホを使うユーザーの住宅ローンの金利を、0.07%引き下げる。さらに、SoftBank光やソフトバンクでんきといったサービスまでまとめて使うと、金利を0.13%抑えることが可能になる。いずれも、住宅ローンの利用を促進できるのはもちろん、回線獲得や解約抑止につながる可能性が高い。まさにシナジー効果があるというわけだ。
現状では、同様のサービスを提供するのが難しかったドコモだが、住信SBIネット銀行がグループ入りすれば、これに近いサービスを実現できそうだ。また、決済サービスでは、d払い残高を出金する際の手数料を抑えたり、デビットカードのように銀行口座から直接支払えるようにしたりといった特典や機能も、実現が容易になる。回線や決済を持つドコモに銀行をかけ合わせれば、お互いのサービスに広がりが出ることは間違いない。
また、ドコモは「ドコモの販売チャネルを通じて、銀行口座や預金獲得を積極的に行っていく」(同)。ドコモショップの数は、1月末時点で2050店舗。前社長時代に掲げた「3割削減」の方針で数は減らしているものの、前田氏就任以降は再び店舗での販売を強化している。リアルなユーザー接点がなかったネット銀行にとって、ドコモショップなどの販売網を持つドコモは魅力的だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ドコモが住信SBIネット銀行を子会社化 銀行口座を含む金融サービスを一体提供
NTTドコモが5月29日、銀行事業に参入することを正式に発表した。銀行事業の参入にあたりドコモは、住信SBIネット銀行の普通株式を対象とする公開買付を行い、連結子会社化する。ドコモの販売チャネルを通じて銀行口座や預金獲得を進めることで、銀行事業の収益拡大や金融事業の成長を目指す。
ドコモの銀行業はどんなサービスに? なぜSBIはソフトバンクではなくドコモと手を組んだのか 北尾氏が回答
NTTドコモは5月29日、住信SBIネット銀行をドコモグループに迎え入れると発表した。ドコモにとって悲願だった銀行業への参入。今回新たに分かった銀行業の将来像は?
ドコモがマネックス証券を子会社化 出遅れた金融サービスで他社を追撃へ
NTTドコモがマネックスグループのマネックス証券の株式49%を取得して連結子会社化し、ドコモの金融サービスを拡充する。新たな資産形成サービスを提供し、将来や老後に対する漠然とした不安などの社会課題を解決したいという思いが一致した。まずは40代以上をターゲットとして狙いつつ、これから資産形成の拡大が見込まれる20代などの若年層にもサービスを拡大していく。
auとソフトバンクは“金融連携”プランが好調、ドコモはどう出る? 料金競争は新たな局面へ
ドコモ、KDDI、ソフトバンクの上期決算が出そろった。2021年に始まった官製値下げの影響を受け、売り上げと収益ともに落ち込んでいたが、コロナ明けでトラフィックが増加したことに伴い、比較的料金が高い無制限/大容量プランに加入するユーザーが増加。一方で、ユーザー数やARPUが急増する可能性は低く、各社とも非通信領域の開拓を行っている。
ドコモがオリックス・クレジットを子会社化、個人向け金融事業を強化へ ドコモ版「マネ活、ペイトク」は?
NTTドコモは2024年3月6日、オリックス子会社のオリックス・クレジットを買収すると発表した。出資額は792億円。NTTドコモがオリックス・クレジットの株式66%を取得し、連結子会社化した。
ドコモ前田社長インタビュー 「顧客基盤」と「コンテンツ」が強み、銀行業は「絞り切れていない」
スペイン・バルセロナで開催されている世界最大級のモバイル展示会「MWC 2025」にはNTTドコモも出展している。同イベントが開幕された3月3日に、NTTドコモの代表取締役社長・前田義晃氏に単独でインタビューした。ドコモの強みやコンテンツ、銀行業について聞いた。


