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「Galaxy Z Fold7/Z Flip7」の進化をハードとソフトの両面から考える Googleとの連携強化で他社をリード石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

「Galaxy Z Fold7/Flip7」は、過去最大級とも言っても過言ではないフルモデルチェンジを果たした。特に、Galaxy Z Fold7は、その根本ともいえるコンセプトの方向をやや変え、“普通に使える大画面スマホ”に脱皮した印象を強く与える。ソフトウェアという観点ではGoogleとの協業もさらに深めている。

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 世代を経て地道な改善を積み重ねてきた「Galaxy Z Fold/Flip」シリーズだが、7月9日(現地時間)に米ニューヨークで発表された「Galaxy Z Fold7/Flip7」は、過去最大級とも言っても過言ではないフルモデルチェンジを果たした。特に、Galaxy Z Fold7は、その根本ともいえるコンセプトの方向をやや変え、“普通に使える大画面スマホ”に脱皮した印象を強く与える。

 対するGalaxy Z Flip7は、閉じた状態でコンパクトなまま使えるという特徴をさらに強化している。その意味で、両機種は進化の方向性が対照的といえる。それを支えているのが、2024年から搭載を始めたGalaxy AIだ。今回はフォルダブルのホームファクターを生かす形で進化しており、使い勝手を高めている。

Galaxy Z Fold7/Z Flip7
米ニューヨークで発表されたGalaxy Zシリーズ3機種。中央がGalaxy Z Fold7で右がGalaxy Z Flip7。左は、廉価版として発表された「Galaxy Z Flip7 FE」で日本での発売は未定

 ソフトウェアという観点ではGoogleとの協業もさらに深めており、5月に登場したばかりのAndroid 16をいち早く採用した他、Geminiの新機能にも真っ先に対している。プラットフォーマーであるGoogleとの連携を強化することで、他のAndroidスマホメーカーとの差別化を図る。ここでは、新機種発表イベントから見えてきたサムスンのフォルダブル戦略を解説していきたい。

方向性が大きく変わったGalaxy Z Fold7、正統進化のGalaxy Z Flip7も登場

 「Galaxy Z Fold7/Flip 7は、われわれのイノベーションの頂点である」――こう語るのは、サムスン電子の社長兼DX部門長代理・MX事業部長の盧泰文(ノ・テムン=TMロー)氏だ。その言葉通り、Galaxy Z Fold7は、これまでとは一線を画す薄さや軽さを打ち出し、Unpacked来場者に衝撃を与えた。折りたたみでありながら、普通のスマホと変わらない持ち運びやすさだったからだ。

Galaxy Z Fold7/Z Flip7
2機種をイノベーションの頂点だと評したサムスン電子の盧社長

 Galaxy Z Fold7の厚さは、閉じたときで8.9mm。重さは215gしかない。別記事でも言及したように、そのサイズ感は同社の最上位モデルである「Galaxy S25 Ultra」とほぼ変わらない。サムスン電子が「Ultra体験」をうたっている理由もここにある。実際に触ってみると、その使い勝手は先代の「Galaxy Z Fold6」までとはまさに別物だ。

Galaxy Z Fold7/Z Flip7
左がGalaxy Z Fold7。閉じたときの厚さが、Galaxy S25 Ultraとほぼ変わらなくなった
Galaxy Z Fold7/Z Flip7
重量に至っては、Galaxy S25 Ultraよりも軽い

 「折りたためるから、多少の厚みには目をつぶる」「閉じたときの画面が狭くてもしょうがない」といったフォルダブルスマホにありがちなトレードオフが一切なく、ポケットに入れやすいのはもちろん、閉じたままでも画面が見やすい。Galaxy S25 Ultraと同じ2億画素センサーを採用したカメラも同様で、「フォルダブルであることが売りだから、カメラが多少劣っても仕方がない」という言い訳を許さない仕上がりになっている。

Galaxy Z Fold7/Z Flip7
Galaxy Z Fold7/Z Flip7
メインカメラに2億画素のセンサーを採用したのも、Ultra体験の1つだ

 盧氏が「妥協が一切ないブレークスルー」と語っていた通り、Galaxy Z Fold7はフォルダブルスマホとして見逃されてきた欠点が大きく改善したといえる。

 ただし、既報の通り、その代償としてSペンやUDC(アンダーディスプレイカメラ)に非対応になってしまった。これは単なる機能の有無ではなく、ペンで広い画面を使って文字や絵を書ける(描ける)これまでのGalaxy Z Foldシリーズとは、開発コンセプトが異なっているような印象も与える。タブレットに近い生産性を高める道具ではなく、スマホとしての使い勝手を突き詰めて薄型化や大画面を図ったのがGalaxy Z Fold7というわけだ。

Galaxy Z Fold7/Z Flip7
薄さの代償として、Sペンへの対応は見送られた。また、UDCも画質と引き替えに非対応になっている

 薄型化、軽量化のインパクトが絶大だったGalaxy Z Fold7と比べると、やや印象が薄かった感もあるGalaxy Z Flip7だが、こちらも同社が「FlexWindow」と呼ぶカバーディスプレイが大型化しており、閉じたままでもより多くの情報を得られるようになった。全面に映像が広がる見た目はもちろん、使い勝手も向上しているという点では正統進化といえる。

Galaxy Z Fold7/Z Flip7
Galaxy Z Flip7は、カバーディスプレイがギリギリまで拡大している

 背景には、フォルダブルスマホで競合が台頭してきたことも影響している。OPPOやHuawei、HONORといった中国メーカーは、横折りのフォルダブルスマホで薄型化を推し進めており、一定の評価を得ている。日本でGalaxy Z Foldシリーズの競合として導入されたGoogleの「Pixel 9 Pro Fold」も、発売時には薄さをアピールしていた。それだけ、横折りのフォルダブルスマホに薄さを求めるニーズは高い。

 一方で、サムスン電子はSペンでの生産性にこだわっていたこともあり、薄型化や軽量化では他社に後れを取っていた。フリップ型も同様で、最大の競合となるモトローラは、外側ディスプレイの大画面化を進めている。これまでのサムスンはどちらかといえばSペンのような別の軸を立て、差別化を図っていたが、Galaxy Z Fold7/Flip7では、競合と真っ向勝負に打って出た格好だ。その意味で、「妥協がない」という盧氏の言葉は、サムスン電子自身にも向けた発言と捉えることができる。

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