FCNTがハイエンド「arrows Alpha」で描く成長戦略 桑山社長が語る“日本メーカー”のモノ作り(2/3 ページ)
レノボの傘下に入り、新生FCNTとして再始動してから間もなく丸2年になった2025年、FCNTはハイエンドをうたうスマートフォン「arrows Alpha」を発売する。arrows Alphaの投入を決め、軌道に乗り始めている中、次の一手をどう打っていくのか。4月に社長に就任した桑山泰明氏に聞いた。
arrows Alphaの8万円台という価格は狙ったわけではない
―― そのような状況の中、arrows We2、We2 Plusは事業を再開してから、1年たたずに投入できました。かなり早かった印象があります。シェアも盛り返しています。
桑山氏 あのときは本当に大変でしたが、開発の現場が相当頑張った結果です。できるだけ早く新機種を出し、世の中の皆さまにまず見ていただかないことには始まりません。本当に急ピッチで開発してきました。そこはFCNTもグローバルメンバーも、手を合わせて頑張っています。
できすぎという面はあるかと思いますが、その要因を振り返ると、arrows We2もWe2 Plusも、arrowsらしさをちゃんと追求して守ったことがあります。消すことをしなかったのが一番でした。arrowsに対して期待している方を裏切らなかった。日本のメーカーらしいいい商品を出すことができ、それを認めていただけた。そこが一番の成功要因だったと思います。
―― ポートフォリオを広げていくというお話でしたが、arrows Alphaの8万円台という価格帯に商機があるとお考えでしょうか。複数のメーカーが、この価格帯のスマホを投入しています。
桑山氏 少なくとも、FCNTはそれを狙ったわけではありません。純粋に、よりハイスペックな商品をできるだけお手頃な価格で提供したいという思いが詰まったのがarrows Alphaです。あの価格帯がこれから来る、トレンドになりそうという観点ではなく、たまたまそこに当たってしまった。高いスペックの商品を、頑張って切り詰め、切り詰めしながら出したらそこになったということです。
―― とはいえ、結果として多くの人が魅力を感じる価格帯ではないでしょうか。今の最上位モデルは、さすがに高すぎるという人も多いと思います。
桑山氏 超ハイスペックな商品は、それなりのお値段になりますからね。それはそれとして妥当なのですが、arrows Alphaぐらいのスペックの商品を10万円切りの価格でご提供できれば、喜んでいただけると感じています。
―― この価格帯になってくると、より個性のようなものを発揮しやすいというようなことはありますか。
桑山氏 今回のarrows AlphaはFCNTの代名詞と考えている堅牢性をもう一段ブラッシュアップさせた商品です。電池持ちも堅牢性の1つと捉え、強さをキーワードに商品企画をしています。従来取り組んでいる、落としても壊れにくいという特徴に加えて、もう少し長く使っていただける商品という意味での強さです。それが1つの個性として認めていただけるのであれば、うれしいですね。
らくらくスマートフォンやらくらくホンの復活は大変だった
―― ポートフォリオという観点では、らくらくスマートフォンやらくらくホンも無事復活できました。
桑山氏 大変だったんですよ(苦笑)。最初は「何でやるんだ」「何で出さなきゃいけないんだ」というプレッシャーがありました。ここはシナジーがなかなか出しにくいところで、効果がarrowsと比べると見えにくい。リソース配分を考えたら、arrowsの方が効率的に回せるんじゃないかという、当然の指摘もありました。
ただ、最後はグローバルの幹部もいいものはいいと認めてくれました。FCNTにはどういうお客さまがいて、そういう方はこの商品じゃなきゃダメ、これをやらないのは間違っていると説明し、最終的には納得してもらって商品化にこぎつけています。
―― 日本市場だけで言えばそれなりの台数にはなりそうですが、グローバルから見るとわずかな数になってしまいますからね……。
桑山氏 ビジネスなので、数字の話になってきます。モトローラのようなブランドを抱えているとグローバルレベルで規模感を見ているので、そのメンバーがらくらくシリーズの数字を見るとなかなか……。台数もさることながら、らくらくシリーズはフルカスタマイズの商品なので、投資対効果というところでもなかなか難しいのは事実です。
―― 最終的に首を縦に振った決め手はなんだったのでしょうか。
桑山氏 丁寧な説明をすることでした。やはり使っていただいているお客さまがいることが一番大事です。そこにとにかくフォーカスしていきました。
―― ゴーサインが出たとはいえ、しばらく出していなかった製品で、特殊な部品も使われています。そこはどうやって見つけたのでしょうか。
桑山氏 大事なポイントで、パーツはそうそうありません。グループのサプライチェーン担当が頑張って見つけてき、商品化できました。類似部品を見つけてくればいいのではなく、FCNTの品質基準を満たしてなければいけないので、そこには妥協していません。その意味では、グローバルチームとFCNTの両方が力を合わせて頑張ることができました。
―― 説得の成果というのはあるにしても、そこまで協力的だったのは、最終的にグローバルでも出したいという狙いがあるのでしょうか。
桑山氏 レノボの幹部はらくらくスマートフォンに期待していました。日本で解決できているシニアのお客さまの困りごとは、日本特有の問題ではないはずだからです。海外にも困っているシニアの方はいるはずなので、早く出そうというのは初期の段階から言われていました。ただ、リソースの優先順位があり、ポートフォリオを少しずつ広げている中でどうやるのか。ぜひやりたいという思いはありますが、どういう順番で取り組んでいくかの計画も策定しようと思っています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
arrows Alphaは「ハイエンドスマホ高すぎ問題」へのアンサーになるのか? じっくりチェック
6月17日、FCNTが新型スマートフォン「arrows Alpha」を発表した。シリーズの最上位モデルで、「手が届くハイエンド」を目指したという。果たして、ハイエンドモデルが高すぎる問題を解消することにつながるのだろうか……?
8万円台の最上位スマホ「arrows Alpha」今夏発売 頑丈ボディーに“2日間持つ”バッテリー搭載、「arrows AI」も
FCNTが6月17日、スマートフォンarrowsシリーズの最新モデル「arrows Alpha」を発表。プロセッサ、ディスプレイ、カメラ、バッテリーなどのスペックを底上げした最上位モデル。新AI機能も搭載し、arrowsらしい頑丈なボディーも特徴とする。
なぜ今“ガラケー”新機種? FCNTが「らくらくホン」を継続する理由
FCNTが、ガラケー型の「らくらくホン」新機種を発表した。先代モデルのマイナーチェンジに思えるが、実は中身は大きく変更している。ある意味で、スマートフォンよりも開発は大変だったという。
SIMフリー市場にも“復活”のFCNT arrows We2/We2 Plusの反響、ハイエンド機やらくらくスマートフォンの今後を聞く
FCNTがレノボ傘下の新体制の元で送り出す第1弾のスマホが、「arrows We2」「arrows We2 Plus」の2機種だ。同時に、オープンマーケット(SIMフリーマーケット)にも再参入を果たした。復活したばかりの同社が、なぜこの市場の開拓に取り組んでいくのかを聞いた。
新生「らくらくスマートフォン」で戦略転換、ドコモだけでなくY!mobileやSIMフリーで出す狙いは? FCNTに聞く
FCNTの看板商品といえる「らくらくスマートフォン」に新たなモデルが登場した。ドコモ向けだけではなく、Y!mobileやオープン市場向けにも新モデルを投入する。同シリーズはキャリアとタッグを組んだ手厚いサポートがあってこそ成り立ってきたが、なぜ戦略を変更したのか。


