arrows Alphaは「ハイエンドスマホ高すぎ問題」へのアンサーになるのか? じっくりチェック(1/3 ページ)
6月17日、FCNTが新型スマートフォン「arrows Alpha」を発表した。シリーズの最上位モデルで、「手が届くハイエンド」を目指したという。果たして、ハイエンドモデルが高すぎる問題を解消することにつながるのだろうか……?
既報の通り、FCNTは6月17日に新型スマートフォン「arrows Alpha」を発表した。8月下旬以降に自社でSIMフリーモデルとして「arrows Alpha M08」を発売する他、NTTドコモからもキャリアモデル「arrows Alpha F-51F」を発売する。
arrows Alphaは「手に届くハイエンド(スマホ)」として企画/開発されたといい、M08の販売価格は8万円台を目指している。ハイエンドスマホの販売価格の上昇が止まらず、ハイエンドモデルから“離脱”するユーザーが増えていることを踏まえて、ハイエンドモデルの“価値”を10万円未満の価格で実現することに重きを置いたようだ。
果たして、arrows Alphaは「ハイエンドスマホ高すぎ問題」へのアンサーになっているのだろうか。
arrows Alphaは、キャリアモデル(arrows Alpha F-51F:左)とSIMフリーモデル(arrows Alpha M08:右)を展開するが、いずれもボディーカラーはホワイトとブラックの2色展開で外観上の差はない
6月17日に行われた発表会の登壇者。左からFCNTの外谷一磨氏(統合マーケティング戦略本部 本部長)、同社の桑山泰明社長、同社の正能由紀氏(統合マーケティング戦略本部 マーケティング統括部 副統括部長)
価格高騰で「ハイエンド=最先端の体験」が遠のくスマホに対するアンサー
かつて、日本の携帯電話端末市場はハイエンドモデルが中心だった。“ハイエンド”とは言うものの、キャリアや販売店による代金の値引き施策もあったため、ハイエンドモデルでも手に取りやすかったからだ。
しかしここ数年、経済情勢や部材の価格上昇を受けてハイエンドモデルの販売価格は高騰し、10万円台後半は当たり前で20万円を超えるケースもある。「それでも値引きがあれば……」とは思うものの、総務省が端末代金の値引きに対して制限を加えたためにハイエンドモデルを価格面から“敬遠”するユーザーが増えた。
ハイエンドモデルは最新かつハイスペックな部材を使って作られるため、新しい使い方やサービスにキャッチアップしやすい。見方を変えると、ハイエンドモデルを手にする人が減ることは最先端の体験をする機会が減ることを意味する。
スペックは厳選してコストを抑えつつも、ハイエンドスマホと同等の体験を提供する――そのような目的のもと、企画/開発されたのがarrows Alphaなのだという。
2017年はハイエンドスマホを10万円強で買えたが、2024年になると20万円弱まで価格が高騰した。高価すぎるがゆえに、妥協して購入するスマホのレンジを下げる動きも見られる……のだが、ハイエンドほどではないもののミドルレンジモデルも値上がりしている
プロセッサは「ミドルハイ」だがチューニングで性能を向上
arrows Alphaのプロセッサ(SoC)は、MediaTek製の「Dimensity 8350 Extreme」を搭載している。その名の通り「Dimensity 8350」をベースに主に動作クロックを向上したスペシャル版で、Lenovoグループに限定供給されている。FCNTがLenovoグループに入ったメリットを生かして採用に至ったという。
ただ、Dimensity 8350はミドルハイスペック端末向けのSoCだ。Extremeが付いているとはいえ、Dimensity 8350 Extremeもその位置付けに変わりはない。SoCをもとに端末のレンジを決めるなら、arrows Alphaはミドルハイレンジモデルとなる。
しかし先述の通り、FCNTはarrows Alphaにおいてハイエンドスマホと同等の“体験”を目指している。Dimensity 8350 Extremeのピーク性能をしっかりと引き出せるようにソフトウェア/ハードウェアの両面でチューニングを行った。結果として、高いスペックを要求されるハイエンドスマホゲームも快適に楽しめるとのことだ。
SoCはLenovoグループ限定となる「Dimensity 8350 Extreme」を搭載している。通常のDimensity 8350と比べると稼働クロックが高められており、FCNTによると「arrowsスマートフォンとしては過去最高性能」だという
SoC的には「ミドルハイレンジ」とはいうものの、5年前にフラグシップ(ハイエンド)モデルとして登場した「arrows 5G F-51A」と比べるとCPUコアは最大1.5倍、GPUコアは最大2.7倍のパフォーマンスを発揮する。さすがに、5年も経過すると最新のミドルハイレンジSoCの方が性能が高くなる
発表会場では「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」を使ったデモンストレーションも行われていた。スマホゲームとしては負荷の重いタイトルでも快適に遊べることをアピールした格好だ (©Bandai Namco Entertainment Inc.)
メモリはLPDDR5X規格で容量は12GBだ。「ハイエンドであれば16GB以上欲しい」と思うところだが、ハイエンドゲームやオンデバイスAI(人工知能)アプリを快適に使えるギリギリを攻めた結果、12GBに落ち着いたと思われる。「これでは足りない」という場合は、内蔵ストレージの一部を「仮想メモリ」として設定することで最大24GBまで拡張可能だ。
……と、仮想メモリを使うとなると内蔵ストレージの性能が快適性を左右する。ストレージはUFS(Universal Flash Strage)4.0規格で、容量は512GBを備える。本製品における具体的な読み書き速度は公開されていないが、UFS 4.0規格はUFS 3.x規格と比べると転送速度が最大2倍に引き上げられている。アプリの起動やデータの読み書きがより高速になったのはもちろんだが、仮想メモリ利用時の快適性も増した。
なお、arrows Alphaは最大2TBのmicroSDXCメモリーカードも搭載できる。ストレージ容量が足りない場合も安心だ。
内蔵ストレージをUFS 4.0規格に変更したこともあってか、仮想メモリを使った際のパフォーマンスも改善している。なお、仮想メモリは4GB/6GB/8GB/12GBの4種類から容量を選択する他、動的に確保する容量を変化する「AI自動」も用意されている
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