FCNTが新「arrows」でSIMフリー市場に再参入 競合ひしめく中で“シェアの奪い合い”にこだわらない理由(1/3 ページ)
レノボ傘下で再スタートを切ったFCNTが、5年ぶりにSIMフリー市場に参入する。「arrows We2 Plus」と「arrows We2」ではワンランク上の価値を提供しながら、日本でニーズの高い機能を充実させた。競合メーカーがひしめく中でどのように戦っていくのか。
FCNTが、MVNO市場に再参入を図る。2023年に経営破綻したFCNTは、レノボ傘下で「FCNT合同会社」として再スタートを切り、2024年5月に新型スマートフォン「arrows We2」と「arrows We2 Plus」を発表した。この時点で決定していた販路はNTTドコモ、au、UQ mobileのみだったが、販路の追加を示唆していた。
8月8日、FCNTは販売戦略発表会を開催し、追加の販路を発表した。
MNOでは楽天モバイルがarrows We2 Plusを取り扱う。価格は4万9900円(税込み、以下同)で、MNPを利用すれば最大で1万4500ポイントを還元する。楽天モバイル ビジネス推進本部 デバイス戦略部 副部長の佐々木愛氏は、arrows We2 Plusは子どもからシニアまで、安心して利用できることを魅力に挙げる。最強家族プログラム、最強青春プログラム、最強こどもプログラムなど「楽天モバイルの通信プログラムと親和性が高い」ことにも触れ、「楽天モバイルの各種プログラムと組み合わせることで、多くの価値を提供できる。4万9900円は恐らくキャリア最安値」とアピールした。
MVNOではIIJ(IIJmio)がarrows We2 Plusとarrows We2を扱う。価格はarrows We2 Plusが5万4800円、arrows We2が3万2800円だが、MNP特価でarrows We2 Plusは3万6800円、arrows We2は1万9800円に割り引く。
この他、MVNOではイオンモバイル、HISモバイル、mineo、QTモバイル、LIBMO、NifMoも扱う他、量販店やECサイトでも取り扱う。市場想定価格はarrows We2 Plusが5万9950円、arrows We2が3万6850円。
arrows We2シリーズのオープンマーケット向けモデルは、arrows We2 Plusが「M06」、arrows We2が「M07」の型番を持つ。これは、2019年にSIMフリー(オープンマーケット)向けに発売した「arrows M05」の後継機種であることを意味する。つまり、arrows We2シリーズは5年ぶりのSIMフリー市場に向けたモデルでもある。
では、FCNTはなぜ、キャリア市場だけでなくSIMフリー市場へと販路を拡大するのか。
ワンランク上の価値を提供しながら、日本でニーズの高い機能の全部入りを実現
FCNT プロダクトビジネス本部 副本部長の外谷一磨氏は、arrows We2シリーズの開発が決まった早いタイミングから、「SIMフリー市場への投入もスコープに入れていた」という。ただ、arrows M05を発売した2019年と比べると、OPPOやXiaomiなどの中国メーカーやPixelを擁するGoogleもシェアを伸ばし、国内メーカーではシャープも堅調で、SIMフリー市場はレッドオーシャンとなっている。
こうした状況は当然ながらFCNTも認識しており、「非常に素晴らしい商品の数々がミドルレンジで存在している」と外谷氏。SIMフリー市場へ再参入するにあたり、「多くの商品をお客さんが選んでいただける自由がある一方で、商品が多すぎて、スペックがバラバラで分かりにくいという声がある」ことに着目。「お客さまが迷わず、間違えなく選べる商品を提供していくのがいいと考えた」(外谷氏)
その上で意識したのが3つポイントだ。
1つ目が、競合価格帯と比較してワンランク上の体験を提供すること。arrows We2 Plusは5万円台ながら、プロセッサはSnapdragon 7s Gen 2、メインメモリは8GB、内蔵ストレージは256GBを確保している。5010万画素カメラは光学式手ブレ補正にも対応する。
arrows We2はさらに安い3万円台だが、プロセッサはMediaTekのDimensity 7025、暗所も明るく撮影できるスーパーナイトショット対応の5010万画素カメラ、4500mAhバッテリーなどを備える。セキュリティパッチは最大4年間提供する。「エントリーモデルでここまでの期間は他にないのでは? 長く安心して使える商品に仕上がっている」(外谷氏)
ワンランク上の体験は、arrowsならではの特徴にも直結する。arrows We2シリーズは、米国国防省の調達基準であるMIL規格に準拠するが、FCNT独自のテストとして、1.5mの高さからコンクリートに落としてもディスプレイが割れにくい品質を担保しているという。本体はハンドソープを使った丸洗いやアルコール除菌にも対応する。ジャストシステムと共同開発した日本語入力システム「Super ATOK ULTIAS」も継承している。arrows We2 Plusならではの機能として、健康状態を把握できる自律神経の測定も可能だ。
「他よりもワンランク上の堅牢性や防水性能を備える。こういったことを提供していくことが、arrowsを求めている人のお約束」(外谷氏)
2つ目が、日本のユーザーが求める機能の全部入り。「買ったけど『これがなかった』という声、そういう不幸をなくす」ことを目指し、日本でニーズの高い機能の全部入りを「妥協なく実現した」と外谷氏は胸を張る。防水、耐衝撃性、おサイフケータイへの対応はもちろん、最大3回のOSアップデート、イヤフォンジャック、外部メモリスロットなどを網羅している。
3つ目が、販路ごとに幅広いニーズに対応すること。arrows We2はキャリアが扱うモデルは内蔵ストレージが64GBだが、SIMフリーモデルは128GBに増強している。arrows We2 PlusはIIJが扱うモデルのみ、メインメモリを12GBに拡張している。
arrows We2シリーズについて外谷氏は、「これさえあれば何も要らない。ない方を探す方が難しいほど全方位の商品。『こういうのでいいんだよ』と言っていただける商品に仕上げた」と自信を見せる。
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