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インタビュー

新しいarrowsやらくらくスマートフォンは出る? Lenovoグループに入って何が変わった? キーマンに聞く「新生FCNT」(1/4 ページ)

富士通の携帯電話端末事業に源流を持つメーカー「FCNT」が、Lenovo出資のもと再出発した。「arrows」や「らくらくスマートフォン」は一体どうなるのか。Motorola(モトローラ)とどうすみ分けるのか。そしてハイエンド端末は出るのか――新生FCNTのキーマンに話を聞いた。

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 富士通のモバイル(携帯電話)端末事業を分社して発足したFCNT(旧富士通コネクテッドテクノロジーズ)。「arrows」「らくらくスマートフォン」ブランドのスマートフォンを世に送り出していた同社は2023年5月30日、親会社のREINOWAホールディングス、兄弟会社のジャパン・イーエム・ソリューションズ(JEMS)と共に東京地方裁判所に民事再生手続きの開始を申請して経営破綻した。

 arrowsとらくらくスマートフォンはどうなってしまうのか――そんな心配が頭をよぎった。

 最終的に、FCNT(旧社)のプロダクト(モバイル端末)事業とサービス事業は中国Lenovoが全額出資するFCNT合同会社(新社)に継承され、同年10月1日から事業を開始した。旧社が製造したモバイル端末については、新社が引き続きサポートを行うことになった(※1)。

(※1)通信事業者(楽天モバイルおよびMVNOを除く)が発売した端末については、通信事業者を通してサポートを提供。なお、既存のSIMフリー端末(楽天モバイル/MVNO向け端末を含む)は、法人向けの一部モデルを除きサポートを終了している(参考リンク

 Lenovoグループの一員となった“新生”FCNTは今後、どのように事業を展開していくのだろうか。桑山泰明副社長と、外谷一磨氏(プロダクトビジネス本部 チーフプロフェッショナル)から話を聞いた。

おふたり
インタビューに応じてくださった桑山泰明副社長(左)と外谷一磨チーフプロフェッショナル(右)

まず「企業運営体制の構築」「端末サポート再開」を優先

―― FCNTがLenovoグループ入りすることに驚いた次第です。いろいろ伺いたいことはあるのですが、2023年10月1日に新社が事業開始してから、どのような状況だったのでしょうか。

桑山氏 (旧社が)民事再生ということになってしまったので、企業として再スタートするに当たって、まず“日常の営み”を送れるようにする準備を進めてきました。

 (新社は)Lenovoグループの業務システムに順次統合することになります。それに当たってのロードマップの策定を進めました。「オフィスでしっかりと仕事ができる」という基本の構築作業ですね。

 それと並行して、新生FCNTとしてキャリア(モバイル通信事業者)やパートナー企業に対する営業活動も再開しています。

―― 営業活動を再開したということは、新しい端末をリリースする見込みが立っているということでしょうか。

桑山氏 それをしなければ、会社として成り立ちませんからね。

外谷氏 事業の再開に向けて、(キャリアやパートナー企業に対して)まず既存端末のサポートを再開することを説明しました。そうでなければ、いくら新しい端末を提案しても意味がありませんし、安心いただくこともできません。

 (新社の)発足当日から、サポートの再開に向けてアクセルを全開で回しました。

―― サポートに関連して、端末の修理は兄弟会社のJEMS(※2)に委託していたかと思うのですが、新社では自社で行うのでしょうか。

桑山氏 自社内で新たにサポート部門を立ち上げました。短時間での立ち上げだったので苦労しましたが、外谷の言う通りサポートの再開は、新生FCNTとして行う“初めての”大事な仕事なので、最優先で取り組みました。

(※2)旧JEMSにはスポンサーとしてエンデバー・ユナイテッド(東京都千代田区)が付き、受け皿会社「エンデバー・ユナイテッド・パートナーズ29(EUP29)」を通して旧JEMSから事業を引き継いだ。事業継承後、EUP29は社名を「ジャパン・イーエム・ソリューションズ」と改めている(新JEMS)

F-51B
新社として事業を再開して約1カ月半後、NTTドコモ向けの「arrows We F-51B」のOSバージョンアップからサポートを本格的に再開した(参考リンク

Lenovoグループになって変化はある?

―― まだ新社の発足からそれほど時間は経過していませんが、Lenovoグループに入ったことで変化はあったのでしょうか。

桑山氏 従業員にはグローバル企業の一員となったことに対する「期待」と「戸惑い」が入り交じっている状況だと思います。ポジティブな面は、会社としてきちんと実現できるようにサポートしていきます。

 一方で、ネガティブ面は理解不足や情報伝達の問題でもたらされている面が多いようです。従業員とコミュニケーションを丁寧に取り、「これからのFCNTにとって、新体制はプラスに働くという」ということを伝えることで、不安の払拭に努めていきます。

外谷氏 (新社の)従業員数は旧社の半分程度にまで減っています。1人当たりの仕事量という観点では負担は増えているかもしれませんが、1人1人が今まで以上に前向きに仕事に取り組めていると考えています。

 旧社では新規事業の開拓に注力していたこともあり、スマートフォンのことばかり考えているわけには行かない面もありました(参考記事)。新社に出資しているLenovoは傘下にMotorola Mobilty(モトローラ・モビリティ)という端末メーカーを持っていることもあって、モバイル端末事業について深く理解をしているので、(企業や会社の方向性について)話がしやすい面もあります。なので、やりがいを持って仕事を進めていけると思います。

―― スマートフォン作りに集中できる体制になったと。

外谷氏 そうですね。新社は旧社からプロダクト事業とサービス事業を承継して発足しました。ユーザーの皆さんにどのような価値を提供できるのか、両事業の側面から考えることに集中できる体制になったといえます。

 今後、お客さまに示すメッセージや価値、そして従業員の考え方も変わっていくのかなと考えています。

3ドメイン
旧社は「プロダクト」「サービス」「ソリューション」の3事業を展開/拡大するビジョンを掲げていた。これらのうち、ソリューション事業は新社への継承対象外とされた。新社は、プロダクト事業と、それに付随するサービス事業に注力する

Lenovoは「arrows」と「らくらくスマートフォン」に興味あり

桑山氏 LenovoにはNECPC(NECパーソナルコンピュータ)FCCL(富士通クライアントコンピューティング)Motorola Mobilityなど、同業企業の買収や合弁化について多くのノウハウを有しています。また、その企業が元々持っている“強み”を生かしつつ、それを一層強化していく戦略を取っています。

 今回、LenovoがFCNT(旧社)の事業を承継することになったのは、arrowsやらくらく(らくらくスマートフォン)という製品自体の魅力と、その技術力を認めたからです。Lenovoからは「今後もFCNTの製品をもっと磨き上げなさい」という指示を受けています。

FCCL
FCNT(旧社)と同時に富士通から分社されたFCCLは、FCNTに先んじて2018年7月にLenovoグループ入りした。そこから現在に至るまで、FCCLは親会社のLenovoから“独立した”研究/開発/販売体制を維持している
副社長
桑山副社長はレノボ・ジャパン出身で、FCNTとLenovoの“橋渡し”を担っている
外谷氏
外谷氏は旧FCNT出身で、長年プロダクトビジネスに携わってきた
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