新しいarrowsやらくらくスマートフォンは出る? Lenovoグループに入って何が変わった? キーマンに聞く「新生FCNT」(2/4 ページ)
富士通の携帯電話端末事業に源流を持つメーカー「FCNT」が、Lenovo出資のもと再出発した。「arrows」や「らくらくスマートフォン」は一体どうなるのか。Motorola(モトローラ)とどうすみ分けるのか。そしてハイエンド端末は出るのか――新生FCNTのキーマンに話を聞いた。
Motorolaとはどうすみ分ける?
―― LenovoグループにはMotorola Mobiltyというモバイル端末メーカーがあり、日本でも子会社のモトローラ・モビリティ・ジャパンを通して事業を展開しています。ある意味でFCNTの「兄弟」でありつつも「ライバル」という間柄となりそうですが、グループ内でどのようにすみ分けていくのでしょうか。
桑山氏 基本的には商品もブランドも完全に分けて展開する方針です。先ほどあったように、当社はarrowsとらくらくの特徴を生かして伸ばす戦略を取る一方で、モトローラは「motoシリーズ」の中で日本市場に合致する製品を投入していくという考え方です。
―― 簡単にいうと「米国発の端末はモトローラで、日本発の端末はFCNTで」といった感じでしょうか。
桑山氏 その通りです。FCNTは国産メーカーとして活動をします。資本的にLenovo傘下になったというだけです。
Lenovo傘下のMotorola Mobilityは、子会社の「モトローラ・モビリティ・ジャパン」を通して日本でも端末事業を展開している。Lenovoグループとしては、MotorolaとFCNTは“別として”事業を展開していく方針のようだ(写真は「motorola razr 40」の日本向けモデル)
端末を“どこで”製造する?
―― 旧社では、一部の端末製造をJEMSに委託していたかと思います。一方で、Lenovoグループには中国を中心として複数の国/地域に生産拠点があります。旧社では旧JEMSで製造した端末を「Made in Japan(日本国内製造)」だと強力にアピールしていましたが、新社の端末はどこで製造するのでしょうか。
桑山氏 せっかくLenovoの傘下に入ったので、Motorola Mobiltyを含むLenovoグループの生産リソースを生かさない手はありません。作る工場は“どこ”あるいは“どの国”というよりは、arrowsやらくらくの生産に最も適しているかという観点で選びたいと考えています。
どこで作るとしても、今までと変わらない品質を維持するためにFCNTのエンジニアが独自の機構や機能を維持できるようにサポートします。
―― 考え方としては、LenovoのノートPC「ThinkPad」と同じということでしょうか。ThinkPadは日本(※3)で開発を行う一方で、中国にある工場での生産を中心としつつ、モデルや構成によっては日本(※4)を含む他国の工場でも生産しているかと思いますが。
(※3)ThinkPadの研究/開発は、レノボ・ジャパンの「大和研究所」(横浜市西区)で行われている(参考記事)。本研究所は日本アイ・ビー・エム(日本IBM)の「大和事業所」が起源……なのだが、FCNTの本社は日本IBM大和事業所の跡地に所在している。これは旧社の頃からで、たまたまである
(※4)ThinkPadの一部モデル/構成はNECPCの米沢事業所(山形県米沢市)で生産されている
桑山氏 その通りです。
LenovoのノートPC「ThinkPad」は日本の大和研究所が開発作業を行い、中国にあるLenovoグループの工場が生産を担っている。ただし、日本でもNECPCの米沢事業所において一部モデル/構成の生産が行われている
―― Motorola Mobiltyとは独立した開発体制を取るということですが、部材の共通化、あるいは共同調達は行う予定でしょうか。
桑山氏 Lenovoグループになった最大のメリットがそこだと思っています。サプライチェーンの共通化によって抑えられるコストはしっかり抑えていきたいです。
ただ、商品のコンセプトやターゲットユーザーが異なるように、Motorola MobilityとFCNTでは、似た部品や同じ機能を持つ部品でも、作り方や性能要件が異なります。グローバルサプライチェーンの中で、arrowsやらくらく製品の基準に合う部品を作っていくということになるので、結果的には(Motorolaブランドの製品とは)異なるものが登場することになります。
新しい端末も準備中 ハイエンドなどは「次のステップ」に
―― 冒頭で「営業活動を再開した」と言っていましたが、ということは新しい端末も準備中かと思われます。これは旧社が策定したロードマップを踏襲しているのでしょうか。それとも、Lenovoグループとなったことで全く新しいロードマップを作ったのでしょうか。
桑山氏 直近は今まで(旧社)のロードマップを引き継ぐ形で、端末の企画と開発を行います。「しっかりと商品が提供できる」という足場が固まった所で、ハイエンドを始めとする、従来のFCNTになかったり弱かったりした分野(端末)にもチャレンジしていきたいと思います。
―― ということは、当面は「arrows N」や「arrows We」の後継モデルに注力するということでしょうか。
外谷氏 特にarrows Weの後継機は(早期に)出せればと考えています。arrows Nの後継機についても、日本の携帯電話市場のトレンドを考慮しつつ、今までのポートフォリオの範囲内で“ど真ん中”、ユーザーニーズに合った端末にしていきたいと思っています。
最近はハイエンド端末の価格が高騰しています。今までハイエンド端末を使っていた人が次もハイエンド端末を買うのかというと、価格面でためらうことも珍しくありません。翻ってローエンド端末を使っている人も、次に買う時にローエンド端末で満足するかというとそうとも限りません。このような隙間にピタッとはまる端末を出したいなと。
日本市場は(低価格端末であっても)品質に対する要求が高いので、価格面でのバランスを取りつつ、「お、arrowsやるな!」というものを出す準備をしています。ハイエンドを出すフェーズになったら「ハイエンドだけど手に取りやすくて使いやすい」という端末は作りたいですね。
FCNTのハイエンド端末は、2020年夏にリリースした「arrows 5G F-51A」(NTTドコモ向け)以来登場していない。arrows 5G自体が「arrowsとしては約5年ぶりのハイエンドモデル」だったことを考えると、2025年夏には新しいハイエンドモデルが出るのだろうか……?
FCNTといえば、高齢者層を中心に広い支持を集める「らくらくスマートフォン」が存在する。Lenovoもこのシリーズを“買って”事業継承を決めたようだが、今後どのように進化していくのだろうか。
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