なぜ? 楽天Koboに「読み放題サブスク」がない理由 「一部の国で提供も、日本未提供」の事情 CEOが語る
楽天Koboが2024年4月に発表した「Kobo Libra Colour」と「Kobo Clara Colour」。E Inkを使った電子書籍リーダーとしては珍しくカラー表示とスタイラス入力に対応。楽天Koboに「読み放題」がない理由とは……?
2024年4月に発表された楽天Koboの電子書籍リーダー「Kobo Libra Colour」と「Kobo Clara Colour」は、E Inkを使った電子書籍リーダーとしてカラー表示に対応し、カラーコミックの読みやすさをアピールする。従来の電子インク端末では難しかった漫画や図解入りの書籍も、より快適に読めるようになり、端末としての魅力は着実に増しているそうだ。
しかし、楽天Koboは2025年8月1日時点で、日本において「読み放題型」のサブスクリプションサービスを提供していない。Amazonの「Kindle Unlimited」や「dマガジン」などが存在する中で、楽天Koboが日本でサブスクリプションサービスに踏み込んでいないのはなぜだろうか──?
読み放題サービス導入への慎重な姿勢──その裏事情は?
この点について、Rakuten Koboのマイケル・タンブリンCEOは、「著者にとって有益であり、かつ読者にとっても魅力的であるという適切なバランスを見つけることが重要だ」との考えを述べた。読み放題というモデルは、読者にとってはコストパフォーマンスが高く、興味の幅を広げるきっかけにもなるが、パブリッシャー(※)側が十分な収益を得られなければ、コンテンツの継続的な提供は難しくなる。無料や定額でコンテンツをばらまくだけでは、持続可能なビジネスにならないという認識があるのだ。
ただし、楽天Koboがサブスクリプションモデルそのものを否定しているわけではないし、存在していないわけではない。実際、楽天グループは自社サイトで「Rakuten Kobo Inc.のサブスクリプションサービス『Kobo Plus』が、グローバル展開を拡大しています。今回は、最新のローンチとなったシンガポールおよびマレーシアでの発表イベントの様子をレポートします』と、わざわざレポート記事を公開している。
楽天Koboの電子書籍読み放題サービス「Kobo Plus」が、シンガポールとマレーシアで新たに開始された。数百万冊の電子書籍やオーディオブックが読み放題となり、価格を気にせず、さまざまな作家やジャンルを開拓できるようになるという。電子書籍リーダーだけでなく、アプリやタブレットでも利用できる
同氏は、日本展開の可能性について「われわれとしては日本でもKobo Plusを展開していきたいと考えている。実際、毎年どこかの国でサービスを展開しており、日本もその候補に含まれている」と述べている。
日本展開に至っていない背景には「パブリッシャー(※)との調整に時間がかかっている」事情があるという。加えて、「サブスクリプションサービスがパブリッシャー(※)にとってどんな利益をもたらすのかを理解してもらうには、丁寧な説明と教育が必要」なのだそうだ。
Kobo Plusの強みとは何か──マイケル・タンブリンCEOが語る
では、楽天Koboはパブリッシャー(※)に何を説明しているのだろうか? 同氏は、新しい作品や作家を読者が発見する「ディスカバリー」が強みの1つだという。無名の著者や新人作家の作品が、多くの読者の目に触れるきっかけになる点は、あらゆるジャンルにとって意味のあるメリットになるそうだ。
また、同氏は「動画や音楽のサブスクと違い、Kobo Plusは紙の本や電子書籍の単品販売と共存できるモデルだ」とも説明する。海外では、読み放題サービスの導入によって書籍の売り上げが下がるのではなく、むしろ新しい需要を掘り起こす形で両立しているケースが多いとのことだ。
楽天Koboには、期間限定の無料試し読みキャンペーンや、購入金額に応じたポイント還元といった施策はあるが、読み放題サービスに慣れた読者から見れば、それだけでは物足りなく感じることもあるだろう。読みたい本を一冊ずつ購入する「都度課金型」のスタイルは、頻繁に購入を行う人にとっては面倒だ。
楽天Koboの慎重な姿勢は、コンテンツ供給側への敬意と持続性への配慮に基づいているが、サブスクリプション全盛期の今、そのスタンスがどこまで支持され続けるかは不透明だ。端末の進化と並行して、ユーザー体験をどう拡張していくのか。読み放題導入の行方は、今後の楽天Koboの競争力を左右する一因となりそうだ。
(※)コンテンツの提供元となる者、発行・配信に携わる事業者を指す。出版業界では出版社を指すことがある。
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