「au Starlink Direct」はどこまで実用的? 24時間の船旅で分かった、衛星通信のリアルな使い勝手(2/3 ページ)
小笠原諸島への移動中、24時間の船旅に「au Starlink Direct」を利用して通信してみた。音声通信、データ通信など普段は使える機能が大きく制限されている。船内にStarlinkアンテナを搭載し、Wi-Fiとして利用できるサービスもある。
圏外になるシーンも 接続が不安定なのが課題
肝心の接続安定性ですが、サイクルとしては5分間ほど接続が確立できたのち1〜2分ほど圏外の時間が続く、という感覚でした。
Starlink衛星は現在6000基近くが稼働していますが、そのうちスマートフォンと直接通信ができるDirect to Cellに対応した衛星は約600基と10パーセント程度です。将来的に2000近くの衛星を打ち上げる予定とのことですが、まだまだ少ないのが現況です。
つながったとしても、安定して接続できるのかも課題です。KDDIは7月末の発表で8月中にデータ通信に対応すると発表していますが、衛星との通信確立に時間がかかるうえ、1回の衛星との通信可能時間は数分程度であることを考えると、都度接続が必要なダイヤルアップ接続のような使い方となり、5Gモバイルネットワークのようなスムーズな通信はできないと思われます。
空が見える場所という制限に注意
au公式が発表しているStarlinkが利用できるエリアは陸地から数km圏内のみで、小笠原航路での外洋が含まれていないのですが、今回の実験ではエリア外でもStarlinkとの接続が可能でした。小笠原航路で利用できるのなら、恐らく敦賀−小樽の「新日本海フェリーや」大洗−苫小牧の「さんふらわあ」など、ほとんどの船で利用できるのではないかと思います。
一方で、船上での利用エリアには制限があります。au Starlink Directは衛星通信の仕組み上、空が見える場所での通信が原則必要になります。山岳エリアでの利用なら問題ないですが、海上で利用する場合は船内での通信はできず、甲板に出る必要があります。
今回、甲板での接続は問題なかったのですが、空が半分見える通路では接続が不安定になり、船内になると全くつながらなくなりました。7階建ての巨大な船であるおがさわら丸では、船内での通信手段がないと同行者とはぐれてしまうことがよくあるのですが、船上だとお互いに甲板に出ないと通信ができないという点は盲点でした。
ほとんどの船では、夜間の甲板への立ち入りが安全上の理由で禁止されています。山間部での利用なら同行者同士で通信できるかもしれませんが、船上では難しいと感じました。
加えて、できることと場所が限られているため、暇をつぶすために使うものではないです。主な用途は非常用の通信であるとなると、iPhoneの場合は衛星経由の緊急SOS機能が標準搭載されているし、わざわざそのために契約して利用するものではないでしょう。
とはいえ、GeminiなどのAI機能が圏外でも利用できる点は面白いと感じます。よく山に登る人なら、平時は1GBの通信と無料のSMSのおまけがついてきますし、さらなる保険として登山中のバディとして契約するのはありかもしれないと思います。
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