「iPhone Air」誕生で「Pro」は道具へ Apple幹部が語る、2025年iPhoneのラインアップ戦略:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
2025年に日本で発売するiPhoneは、全てがeSIMのみに対応した。超薄型のAirを投入し、Proモデルはこれまでと路線を変え、アルミのユニボディーを採用した。なぜAppleはここまで大きくiPhoneをリニューアルしたのか。
Airがあったからこそ突き詰められたPro、その土台となるiPhone 17
一方で、これまでのプロモデルのユーザーが、機能性だけで選んでいたとは限らない。そこまでカメラなどにこだわりがなくても、ラグジュアリーな雰囲気の外観や素材使いなど、スペック以外の要素もプロモデルの売りになっていたからだ。実際、発表直後にネットの反響を見ると、プロモデルの新しい外観に賛否両論巻き起こっていた。これまで成功を収めてきたシリーズを大胆に変えることは、ユーザーが離れてしまうリスクも伴う。
ボーチャーズ氏は、この決断ができた背景を「プロレベルのパフォーマンスと新しく、素晴らしいデザインのiPhone Airをラインアップに加えることで、iPhone 17 Pro/Pro Maxをよりプロフェッショナルな方向に導くことができた」と語る。iPhoneに突き詰めたスタイリッシュさを求める人の受け皿になるiPhone Airがあったからこそ、iPhone 17 Pro/Pro Maxはよりパフォーマンスを高める方向に踏み切れたというわけだ。
目指したのは、Appleのお家芸ともいえる「魔法のような体験」だ。薄くすることで、「これだけのパワーや性能、機能を手に収めることができ、未来を感じさせる」。実際、筆者は最初にiPhone Airを持ったとき、その薄さからSF映画に出てくる未来の情報端末のようだと感じた。スマホの真価は画面の中にある。それを突き詰めると、本体はなるべくミニマルに、存在感を消していく方向に向かっていく。あたかも空気(Air)のようにだ。
iPhone Airをここまで薄くできたのは、SIMカードスロットを廃してバッテリースペースを確保できたことや、省電力性能を高めた自社開発のモデムチップ「C1X」があったからこそ。技術の進展や、それを受け入れる素地が整ったことが大きい。ボーチャーズ氏が「iPhone AirはeSIMなしでは実現できなかった」と語っていたことも、それを裏づける。
もっとも、iPhone Airは薄さゆえのトレードオフもある。代表的なのは、広角のみのカメラだろう。2つ、3つとカメラを増やし、画角の選択肢を広げてきたこれまでとは真逆の路線だ。ディスプレイ出力に非対応のUSB Type-Cポートやモノラルスピーカーなども、iPhone Airが削ぎ落した部分。外観の美しさを保ちながら処理能力は歴代のプロモデルを上回っているが、スペックの取捨選択からもとがった設計思想が伝わってくる。
ただ、iPhoneは1年で2億台以上の販売台数を誇る端末。プロフェッショナルユースを極めたiPhone 17 Pro/Pro Maxや、とがった設計のiPhone Airだけでは、多様化するユーザーのニーズを満たすことは難しい。選択肢が広がったようで、実際に選べる端末が少なくなってしまうからだ。iPhone AirとiPhone 17 Pro/Pro Maxをそれぞれの方向に振り切るには、スタンダードモデルであるiPhone 17が欠かせない。ボーチャーズ氏は、次のように語る。
「今年のラインアップも、われわれが常に行ってきたことの継続といえます。それは、iPhoneでできることの限界を押し広げてお客さまに可能な限り多くの選択肢を提供し、それぞれのポイントでの価値を提供することです。iPhone 17は素晴らしい例で、性能、耐久性、バッテリー寿命、そして新しいディスプレイに大幅な改善を加え、ストレージも2倍(最小構成を128GBから256GBに増量)にしました。それは、iPhone Airのような新しいプロモデルを開発することも可能にしました」
ボーチャーズ氏が語るように、2025年のiPhone 17は例年以上に性能がプロ級だ。こうした土台があったからこそ、iPhone AirやiPhone 17 Pro/Pro Maxのようなチャレンジができたといえる
製品ごとの特徴がより明確になったことで、2025年のiPhoneは、以前にも増して選択しやすくなったはずだ。ボーチャーズ氏も、「われわれは、これまででもっともエキサイティングなiPhoneのラインアップを手に入れたと考えている」と自信をのぞかせた。
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